細かいところまで部下を見守ろうとする上司は20代からうざがられる
見えないと、知りたくなる
テレワーク化がどんどん進んだことによって、上司から部下の行動が見えにくくなってしまいました。これまではリアルな職場で机を並べて、いつも部下の姿を見ながら仕事していたのが、突然PCの画面越しにしかコミュニケーションが取れなくなったわけです。
相手が見えなくなれば、人は不安になります。上司は部下の行動や成果、育成に責任を持っているため、部下のことを知らないわけにはいかないと、テレワークでも部下の状況を細かく知ろうとします。そこで、最近はどの会社でも、いかにして部下の様子を知ることができるかを工夫しようとしている上司が増えています。
リアルなオフィスを再現しようとするのは評判が悪い
初期の頃、リアルなオフィスの状態を再現すればいいのではないかということで、zoomなどのオンライン会議システムを常時接続するなどした会社がありました。
しかし、それはSNSなどでは評判は良くありませんでした。プライベートな空間である自宅に、オフィスというパブリックなものが侵入してくるようなものということです。上司が家に上がり込んで来ると思えば、若者が嫌がるのは理解できます。
似たような例に、着席・離席をリアルタイムで申告させたり、LINEなどで頻繁に「今何してる?」と連絡したりして、なんとかオフィスと同様の情報量を取ろうとする動きも、基本的には若者は嫌がっていました。
テレワークはとても忙しい
頻繁に行動を把握しようとされるのが嫌なのは、プライベートへの侵入だけではありません。それは、やってみる前に想定していたよりも、テレワークは忙しいということです。
テレワークにすると「サボるのではないか」という疑惑が上司側にあったのも、若手の行動を把握しようとする意図としてあったと思うのですが、テレワークは、オンラインコミュニケーションはリアルよりも効率が悪く、そのためにコミュニケーションコストがかかってしまい、リアルなオフィスで仕事をするよりも忙しくなる場合もあったのです。
そこへ、行動報告を強要されては嫌がるのも無理はありません。
監視を頑張るのではなく、具体的な指示をすべし
リアルオフィスで仕事をしていた頃、上司の多くは「事後型」でマネジメントをしていた人が多かったのではないかと思います。
最初の指示は曖昧にしておき、部下の様子を観察しながら、うまく行かなさそうな場合、事後に助け舟を出すというやり方です。それがテレワークでも同じようにしようとするから、まるで監視するかのようなことをしてしまうのです。
オンラインで仕事をするには、常時観察するのはもう限界があると観念すべきではないでしょうか。そして、マネジメントを「事前型」にする。つまり、最初から起こりそうな問題を事前に想定して、最初の指示を明確で具体的なものにしておくということです。
部下に任せる仕事の本質を理解していたかが問われる
それができるかどうかが、テレワークでも部下をマネジメントできるかの肝です。これまで部下に任せていた仕事の本質をきちんと理解していたかどうかを問われていると言ってもよいかもしれません。明確な指示が事前に出せるのであれば、いちいち細かく部下の状況を把握する必要はなく、節目で報告を受ければよいだけです。
自分でもあまりよくわかっていない仕事を部下に丸投げして、トラブルが起きてから対症療法的に動くというようなことをしてきた人が、事前に丁寧な指示を部下に出すことができないのでしょう。そうではなく、テレワーク時代のマネジメントは「明確に指示して、あとは信じて任せる」なのです。
「やってみせる」ができないなら言葉にするしかない
管理職に昇進されているような方ですから、上司の皆さんはスタープレーヤーだったのでしょう。しかし、「できる」ことと「やっていることを認識している」とは違います。
自転車に乗れるからと言って、乗り方を言葉だけできちんと説明できる人は多くありません。むしろ、スタープレーヤーほど、無意識ですらすらやってしまえることが多く、自分でやっていることの説明が下手な人も多い。数学ができる人ができない人に教えるのが難しいのと同じです。
それでもリアルなオフィスなら「やってみせる」ことで部下に教えることができました。それがテレワークで難しくなった今、上司の皆さんに新しく必要になる力は、部下を細かく観察することではなく(大事ですが)、仕事を言語化して明確な指示を出す能力ではないでしょうか。
「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
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曽和利光=文 株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長 1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。 |
石井あかね=イラスト