“職遊融合”時代のリアルライフ Vol.8
2020.08.20
LIFE STYLE

サーファーの望みを叶えた海辺の家[セカンドハウスのある生活 CASE.4]

仕事と遊びを一体化させたライフスタイルを実現する人たちを追う企画「セカンドハウスのある生活」。

ラストは千葉県・勝浦に、異国情緒溢れる住まいを持つ佐々岡さんだ。「サーフィンが好きだから、海の近くに複数の住まいを設けて貸別荘としても活用しています」。

第1弾 神奈川県・葉山編第2弾 長野県・八ヶ岳編第3弾 神奈川県・丹沢編も併せてチェック!

都心よりも自然がある場所にいたい

「今日もいい波。仕事の前にさくっと入ろうかな」。会社員・佐々岡浩二さん(仮名)の千葉県勝浦 の家。
「今日もいい波。仕事の前にさくっと入ろうかな」。会社員・佐々岡浩二さん(仮名)の千葉県勝浦の家。

千葉県勝浦市にあるサーフスポット、部原海岸の海を見下ろす高台に立つ一軒家。屋根も壁もワントーンの赤褐色に包まれ、ビザールプランツの植栽が異国感を煽る。屋内に入って待ち受けるのは、息をのむ壮大なオーシャンビュー。勤務先は都心という佐々岡さんは、どうしてこのような場所に家を持ったのか。

「実はここはセカンドハウスで、本宅は少し離れた千葉の海沿いの街にあるんです。大学生のときにサーフィンにハマってから、海なしの生活は考えられなくなったんですよね。電車に乗れば会社まで片道1時間半。リクライニングシートに座って通勤でき不便さは感じません。

セカンドハウスを持ってからは、家族と週末に非日常感を味わいに来たり、使っていないときは貸別荘として活用しています。暮らし・遊び・仕事のバランスが海沿いでより熟成されている感覚ですね」。

築30年の家をフルリノベーション。すすけていた梁は自身で表面を全部剥ぎ、きれいに磨いた。
築30年の家をフルリノベーション。すすけていた梁は自身で表面を全部剥ぎ、きれいに磨いた。屋根も半分以上は自分でドライワックスをかけたという。照明はニューライトポタリーのもの。自然の明るさを活かすため照明はミニマルに。

この場所を2拠点目に選んだ理由は、まさにひと目惚れだった。日頃から部原の海にサーフィンをしに来ていて土地勘は多少あったが、地元不動産業者のサイトでたまたま物件を見つけて即決。既にあった家屋をフルリノベーションする計画が始まった。

千葉の海沿いは土地の値段が都心と比べるとかなり安く、複数の拠点を持つうえでは現実的な環境なのだと、佐々岡さんは話す。

「一般的に家は都心部に行けばそれだけ価値が高まりますよね。毎日会社に行くことが前提になっていることも理由だと思うんですが、半面、普通の会社員だと高すぎて都心に良い家はなかなか買えない矛盾も起きている。

もし買えたとしても家のローンを背負い働き続けなければいけないし、仕事や移動の自由は制限されてしまいます。その点、僕は何より素晴らしい自然の風景がある場所に価値があると思っています。それはサーフィンをしているから気付けたことなんです」。

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「時間=コスト」と考えて得たもの

テラスとリビングの床を同じ赤に統一することで全体の統一感、そして異国感が生まれた。
テラスとリビングの床を同じ赤に統一することで全体の統一感、そして異国感が生まれた。

これまで佐々岡さんは、サーフィンを通して東南アジアや、南米、アフリカをはじめ世界を旅してきた。そこで磨かれた豊かな感性は、家づくりにも確かに息づいている。

外観にも内装にも施された印象的な「赤」は、かつて彼がアフリカのとある島で見た景色がインスピレーションとなっているそうだ。

[左]水回りは部屋と同系色のモルタルでつながりを大切にした。[右]階段の手すりには海岸で見つけた流木を利用し、ここでも海を感じられるように。
[左]水回りは部屋と同系色のモルタルでつながりを大切にした。バスルームから望む景色は圧巻。[右]階段の手すりには海岸で見つけた流木を利用し、ここでも海を感じられるように。

「遠いアフリカの地で見た、あの赤い土と青い海の色彩のコントラストを表現したいという想いが強くありました。それで、雑誌で見て気になっていた建築家さんに連絡をしてリノベ全体の設計プランをお願いし、家の色の仕上げ方についてもアドバイスを頂いたんです。

イメージした絶妙な赤色にたどりつくまで時間はかかりましたね。サンプルを作ったり何度も塗り直したりと手間をかけ、ようやく納得する色になったんです」。

[左]自身で作ったというウッドテラス。このテラスについた階段を使い1階へ下りることもできる。[右]愛車はP38型と呼ばれる2代目レンジローバー。
[左]自身で作ったというウッドテラス。このテラスについた階段を使い1階へ下りることもできる。[右]愛車はP38型と呼ばれる2代目レンジローバー。屋根のラックは旅先のアフリカから持ち帰った。ラゲージルームに見えるのはサーフボードと近年夢中になっているカイトサーフィン用のギア。

驚くことに塗装は自身で行ったという。ベニヤの木目をちょうどいい塩梅で見せられる塗料を探し回り、週末返上で手を動かし続けた。そのため時間はすごくかかったが、費用はかなり抑えられたという。

「時間とのトレードオフ」という彼の言葉どおり、「時間=コスト」という考え方を貫いた結果だった。

ほかにもウッドデッキを作ったり、サッシを塗ったりと、自ら手掛けた箇所は多い。そうして本格的にリノベを開始してから3年ほどの時間を費やし、佐々岡さんは思い描いていたセカンドハウスを完成させた。

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好きなところで好きに暮らす時代へ

ベッドルームは2室。友達同士、ファミリー同士での利用もできる。
ベッドルームは2室。友達同士、ファミリー同士での利用もできる。

サーフィンをしていたから、ごく自然に手にすることができた海辺の暮らし。都心より安価に広い家を手にできるのはカントリーサイドならではであり、加えて自らの手を動かしコストを抑えることで貸別荘を兼ねるセカンドハウスも手にできた。そこに追い風が吹いた。コロナ禍による社会の変化である。

「僕も仕事がリモートワークになり、毎日は東京に行かなくなりました。それでも仕事は成立しているし、成立させられる社会インフラは既に整備され、サービスも登場していることがわかりました。すると今度は、好きなところで好きなように暮らすことが可能な世の中になっていく、と感じるんです。

だからこそ、この貸別荘のように自分が生み出したモノが世の中の役に立ち、人びとに利用してもらうことで我が家の経済が循環していく。そんなライフスタイルが僕の理想の暮らしなのかなと、最近は感じています」。

旅先のアフリカで見つけたテーブルはコンテナで運んできた。古いインドの扉を家具に仕立てる職人に希望の木枠を伝えることでオンリーワンの1卓が完成した。
旅先のアフリカで見つけたテーブルはコンテナで運んできた。古いインドの扉を家具に仕立てる職人に希望の木枠を伝えることでオンリーワンの1卓が完成した。

太平洋を一望できるリビングの床は、家の外と内が連続したつくりになっており、かつ同じ仕上げにしたことで、室内にいながらも外を感じることができる。

海に面する大きな窓を開ければリビングはさながら屋根付きのテラスへ。すると、ふわっと風が吹き抜けていく。この開放感は、都心ではそうは感じられない。しかも眼下にある海はサーフスポット。波があればいつでもパドルアウトすることができる。

壁や床の赤と海の青。リビングの影とテラスの光。家のいたるところで鮮やかなコントラストが楽しめる。
壁や床の赤と海の青。リビングの影とテラスの光。家のいたるところで鮮やかなコントラストが楽しめる。また陰影が特徴的なリビングには、バリ島の海の家で暗い屋内から光る海を眺めたときの印象深い記憶が宿っている。

さらに現在、佐々岡さんは近くのリバーサイドに3つ目の家を建設中。「ベトナムのメコン川沿いにあるリゾートのようにしたい」と言い、釣りやSUPなどを楽しめる場にしたいという。

こうして千葉の外房に構える複数の拠点は佐々岡さんの仕事場でありながら遊びの場に。いつも明日のグッドウェーブを夢見る未来志向のサーファーらしい、楽しさが詰まった家なのである。

HOUSE DATA
竣工:2020年 構造・規模:木造・地上2階
敷地面積:990㎡(300坪)
建築面積:132㎡(40坪)
デザイン監修:SUPPOSE DESIGN OFFICE https://suppose.jp
間取り:1階は玄関からテラスへと続く土間床の大きなリビングを中心に、小上がりと寝室、水回りの構成。2階は寝室と自身がDIYしたバルコニーが広がる。不在時は貸別荘「SECRET BREAK HEBARA」として活用中。

柏田テツヲ(KiKi inc.)、PAK OK SUN(CUBE)=写真 前中葉子、宮原友紀=文 小山内 隆=編集・文

# 勝浦# 職遊融合
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