“職遊融合”時代のリアルライフ Vol.5
2020.08.08
LIFE STYLE

週末の予定は葉山の家に行く、それだけで良い[セカンドハウスのある生活 CASE.1]

従来の型にはまらない、新たなライフスタイルが求められる今。「セカンドハウスを持つ」ことで職遊融合の暮らしを実践している人たちにインタビューを行った。

まず訪ねたのは神奈川県葉山の家で休日を過ごす大附さん。「週末は葉山の家へ行く。そうして日中を海で過ごすと平日まで充実するんです」。

その真意に迫ろう。

金曜の夜、海の近くのセカンドハウスへ

会社員・大附克年さんと知子さんの神奈川県葉山の家。
会社員・大附克年さんと知子さんの神奈川県葉山の家。

大附さん夫妻はどちらも都心のIT系企業に勤める。平日は都内のマンション暮らし。そして1年ほど前から、金曜の夜に車で1時間半ほどの葉山の家へ向かい、週末を過ごすようになった。

海までは歩いて1〜2分。国道を渡るのではなく、公園を通ってビーチに着く立地が気に入っている、と妻の知子さんは言う。

「もともと海が好きで、毎年のように沖縄本島や宮古島、屋久島などに旅行へ行っていました。忙しい日々から離れ、波の音や潮風に癒やされる時間が必要だったんですね。そのうち、もっと海を日常的に感じたい、海の近くに拠点があるといいね、と話すようになって」。

リビングから直接出入りできるテラスには知子さんの憧れでもあった外付けのシャワーが。
リビングから直接出入りできるテラスには知子さんの憧れでもあった外付けのシャワーが。海から帰ったらここで体を流し、シーカヤックをサッと洗ってリビングへ運び入れる。

知子さんの実家は鎌倉。克年さんはかつての職場が横須賀で、もともとこのあたりには馴染みがある。土地探しを始めてしばらくして、海沿いの公園を目の前にした今の土地が売りに出されているのを見つけ、即決した。

建てた家には、玄関とトイレ以外、部屋を仕切る扉がなくバスルームさえオープンな空間になっている。内と外の境界がほとんどない、海の家のイメージだ。

ダイニングの吹き抜けの上にあたる2階部分には「アルフレックス」のベッドが置かれている。
ダイニングの吹き抜けの上にあたる2階部分には「アルフレックス」のベッドが置かれている。広々とした仕切りのないベッドスペースでは、寝る前にヨガマットを敷いてヨガをしたり、知子さんは絵を描くことも。この家の生活で仕舞い込んでいた画材を再び出した。

「金曜の夜8時か9時くらいに着き、翌朝は7時くらいに起きて犬と一緒に海岸を散歩します。帰りに近くのパン店でパンを買い、朝食を食べたらカヤックを持ってまた海へ。

15時くらいに帰ってきて、ビールとワカモレなどでひと休み。天気が良ければ屋上で夕日を見ながら飲んでいます。その後、また犬と散歩を1時間くらい。7時くらいに夕食の準備を始め、食後はワインを飲みながら本を読んだり、ヨガをしたり。

テレビを置いていないし、ここでの生活はよく動く。東京とは時間の使い方が全然違うんです。そのせいか、体重もちょっと減ったみたい」と知子さん。

ここでは、何をするのも愛犬と一緒。海岸沿いの散歩やシーカヤック、芝生の庭を素足で一緒に走り回るのも愛犬とともに。
ここでは、何をするのも愛犬と一緒。海岸沿いの散歩やシーカヤック、芝生の庭を素足で一緒に走り回るのも愛犬とともに。東京の家では得られない開放感に満ちている。

見ると足元は2人とも素足で、そのまま芝生の庭を犬と走る様子が、なんとも気持ち良さそうだ。

日曜は昼過ぎに東京へ戻る。翌日からの日常に備え、なるべく早い時間にオフからオンへ頭と体を切り替えるという。そんな生活を1年近く送ってきたものの、ここ数カ月で事情が少し変わった。

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遊ぶための家でリモートワークにトライ

「完全に在宅勤務になったこともあり、1週間ここで過ごし、リモートワークをしてみたんです。本来休む、遊ぶための家だし、仕事モードになれるのかという疑問はありましたが、やってみたら意外にできた。

2人同時に電話やオンライン会議をしていると声がかぶってしまうこともありますが、それ以外は問題なく、むしろ仕事の合間に散歩をして気分転換ができ、効率もいい」。

そう言う克年さんは技術系の仕事で、もともと週1回、在宅ワークをしていたこともあり、オンライン中心の働き方にもスムーズに移行できたという。一方、営業職の知子さんは少し勝手が違うようだ。

海から帰ったらシーカヤックはリビングのソファの後ろへ。そのため窓は幅250cmという大きなサイズに。すべて開けると東屋のようになるところもいいという。
海から帰ったらシーカヤックはリビングのソファの後ろへ。そのため窓は幅250cmという大きなサイズに。すべて開けると東屋のようになるところもいいという。

「みんなでアイデアを出し合うブレスト会議は、オンラインだとちょっと温度感が伝わりづらいですね。やはり対面のほうが意見交換は活発になるし、私は夫のように完全にリモートというわけにはいかないみたい。

でも私も、この家で仕事ができることがちょっと新鮮でした。今はダイニングテーブルでやっていますが、いずれデスクが必要かな、と思っています」。

料理を担当する克年さんがこだわって選んだキッチンはイタリアの「ポラリス」。シンクに蓋をすることができ、家具のように見えるつくりが気に入っている。
料理を担当する克年さんがこだわって選んだキッチンはイタリアの「ポラリス」。シンクに蓋をすることができ、家具のように見えるつくりが気に入っている。
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週末はここに来るだけ。イベントはいらない

この家ができる前は、「今週末は何をするか」を常に考えていたという2人。

「休日はイベントが必要だったし、何かしなくちゃいけない、と思い込んでいたんだと思います。金曜の夜は飲み会、土日はウインドーショッピング。そして流されて週末が終わるような感覚。

今は、『週末は葉山の家に行く』。それだけ。特別なことは何もしなくていいんです。散歩をするだけでも、途中、近所の人とおしゃべりしたり、スーパーで地ものの魚介を買い、ビールを飲みながらつまんだりするだけで楽しい。

ここで過ごす時間のすべてが心地いい。そして、それが旅行ではなく生活の一部、というのがまたいいんです」と知子さん。

犬が描かれているグッズには、つい目がいってしまうという犬好きの2人。犬が描かれたお揃いのマグカップも旅先で買ったもの。
犬が描かれているグッズには、つい目がいってしまうという犬好きの2人。犬が描かれたお揃いのマグカップも旅先で買ったもの。

それまで月に1回は行っていた小旅行も自然と減っていった。東京からすぐに来られる大好きな海の近くの家を手に入れたことで、「旅行に行きたい」という非日常への欲求がなくなったのかもしれない。

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1カ所につぎ込むより2つに分けてよかった

これほどまで充実したセカンドハウスがあり、遊びだけでなく仕事もできるとなれば、拠点をここ1カ所にしぼることもできるのではないか。

「そうですね。将来のことはわからないけれど、でもやっぱり東京も、東京の家も好きなんです」と知子さん。

ダイニングのテーブルと椅子はボーコンセプトのもの。1階は青をテーマカラーにシックな色でまとめている。
ダイニングのテーブルと椅子はボーコンセプトのもの。1階は青をテーマカラーにシックな色でまとめている。

「以前は、東京でもっと広いマンションを探そうとか、家を建てる選択肢も考えました。今になってみると1カ所につぎ込むのではなく、その分を2拠点目に充ててよかったと思います。

出て行くものは倍になるけれど、それを補って余りある価値があったなと。平日と週末、まったく違う環境で、まったく違う時間を過ごせるのは貴重なことだと思います」と克年さん。

セカンドハウスを持つことで、これまでとは違う時間の流れを知り、価値観にも変化が生まれた。ここから新たに、夫婦の新しい人生がスタートする。

HOUSE DATA
竣工:2019年 構造・規模:木造・地上2階
敷地面積:212.88㎡(64.31坪)
建築面積:102.92㎡(31.09坪)
設計:エンジョイワークス https://enjoystyles.jp
間取り:海の家のような開放感をテーマにした。1階にリビング、ダイニング、キッチンをまとめ、2階にはベッドスペースと洗面、バスルームがあり、仕切りのないオープンな空間が広がる。さらに海を見晴らす屋上もある。

柏田テツヲ(KiKi inc.)、PAK OK SUN(CUBE)=写真 前中葉子、宮原友紀=文 小山内 隆=編集・文

# 職遊融合# 葉山
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