20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.24
2020.08.07
LIFE STYLE

「修羅場をくぐらないと、成長できないぞ」と諭す上司は20代から疎まれる

「修羅場をくぐらないと、成長できないぞ」と諭す上司は20代から疎まれる

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……

「仕事で人は育つ」は確かだが

「人は仕事経験によって育つ」というのは確かにひとつの真実でしょう。巷でも「70:20:10」の法則など、7割は仕事、2割は上司、1割が研修で人が育つなどと、よく言われます。

割合が本当かどうかは別として、まったく仕事経験をしていない勉強だけしている人がいきなり実務について成果を出すということは現実的には考えにくいことからも、「仕事で人が育つ」ことを否定するつもりはありません。

しかし、もう少し突っ込んで「経験のない仕事はできない」「きつくて辛い修羅場のような仕事をしないと成長にはつながらない」と言われてしまうと、疑問を持たざるをえなくなってしまいます。

 

「修羅場」は本当に人を育てるのか

長年仕事をしていると、誰にでも「あれは大変な経験だったなあ」という、いわば「修羅場」とよく言われる仕事経験があると思います。

そして、人は大変なことをしたら、そこに意味があると思いたい生き物ですから、「今のオレがあるのも、あの修羅場があったからこそ」と思ってしまうのではないでしょうか。もし、修羅場に出会うことがなく、順調な仕事人生を送っていたら、本当に自分は成長しなかったのでしょうか。

かく言う私も、いろいろな修羅場らしきものを経験しましたが、正直言うと、それはできればなかったらよかったと思っています。もっとすくすく育ったのではないかと思うぐらいです。

NEXT PAGE /

どんなレベルの仕事が適切かは人によって異なる

そう思うひとつの理由は、能力開発の観点から適した仕事の大変さ、つまり仕事の難易度は、人によって異なるからです。

今の自分の能力に比してあまりに高すぎる難易度の仕事を与えられても単純に「できない」だけで、そこから学べるかどうかはわかりません。頑張れば手が届きそうな適切なストレッチ課題を与えられてこそ、実効性のある試行錯誤ができ、能力開発につながります。

もちろん極度に難しい「修羅場」が適している人もいるのですが、それは少数派に思えます。むしろ、段階的に少しずつストレッチしていくタイプの学習が向いている人の方が私の実感としては多いように思いますが、いかがでしょうか。

 

「挫折経験」は必要なのか

もうひとつの理由は、「修羅場」は難易度が高いがゆえに「挫折経験」「失敗経験」を生みやすいということです。私などは、修羅場はトラウマ(精神的外傷)のようなもので、あまり思い出したくもありません。

よく「挫折が人を強くする」とも言いますが、これまた人それぞれで、挫折をバネにモチベーションを高める人もいれば、挫折がもとで自己効力感(自分は「うまくやれる」という自信のようなもの)を失ってしまい、その後の仕事上でのチャレンジを阻み、学習機会の損失につながる場合もあります。

そう考えると、私は「挫折経験」は必ずしも必要ではなく、そのために修羅場をくぐらせることはないと思います。

NEXT PAGE /

「ふるいにかける」では必要な人数を確保できない

結局、「修羅場が大事」と単純に言ってしまう上司は(私もたまに言ってしまうのですが……)、武勇伝を語りたかったり、自分の部下のことを知らないために、彼・彼女にとって適切な仕事のレベルを設定できなかったり、挫折しないやつはダメだと思い込んだりしているのではないかと思います。

もちろん、そんな修羅場を乗り越えてくる強い人材もいると思いますが、1学年200万人以上いた私たちのような団塊ジュニア世代ならともかく、この少子化、人手不足の時代に、そんな「ふるいにかける」ような人材育成をしていては、自社に必要なだけの良い人材の確保はできません。

 

上司の役割は「自己効力感」の向上サポート

むしろ、今の時代の人材育成の方向性としてお勧めなのは、先にも述べた若手人材たちの自己効力感の向上をサポートしてあげることです。

適切な難易度の仕事をアサインして成功体験を積ませたり、ロールモデル(上司自身でも、適した先輩でも構いません)をつけて疑似体験をさせてあげたり、よいタイミングで適切な賞賛を行うことで自信をつけたり、やる気が出るような職場の雰囲気作りをしたりなどなど、自己効力感を高める方法はたくさんあります。

自己効力感が高まれば、挑戦心や成長意欲が生まれ、失敗にも強くなります。そしてその結果、上司の皆さんが期待する「成長」が見込まれるのではないでしょうか。

 

連載「20代から好かれる上司・嫌われる上司」一覧へ

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは……
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。
上に戻る

組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス
『組織論と行動科学から見た 人と組織のマネジメントバイアス』(ソシム)
曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# 修羅場
更に読み込む