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2020.06.04

ライフ

日比谷音楽祭の中止。亀田誠治が「心を死なせない」ために今、していること

「37.5歳の人生スナップ」とは……
日本を代表するベーシストであり、音楽プロデューサーである亀田誠治さん。前回は、彼が日比谷音楽祭の実行委員長を務めることになった経緯と想いについて聞いた。
ベーシストとして演奏も行い、数々のアーティストのプロデュースも行う亀田誠治さん。※写真提供:日比谷音楽祭実行委員会
今回は、実行委員長として2019年の第1回開催に向けた奮闘。そして2020年、コロナ禍での第2回の中止について話してもらった。
 

未来の日本の音楽のために

亀田さんの強い思いから、日比谷音楽祭はフリーイベントとしての開催を目指していく。そして入場無料で気軽に音楽に触れられるとはいえ、アーティストの存在はじめ音楽文化そのものに敬意を抱けるきっかけとなる場を目指した。
それはつまり、ステージ上のパフォーマンスだけでなく、ワークショップ、飲食を含めた、あらゆるコンテンツの質を最高レベルに高めるということである。
「そのため入場は無料ですけど制作費をきちんと捻出する必要がありました。ボランティアイベントではないのでアーティストにもスタッフにもギャランティーを支払うことは当然。なんでもかんでも無料にするのではなく、きちんとお金の循環を生んでいこうとしました。だから間口を広くできる入場無料なんだと。
そのような話をスタッフ、訪問した企業の皆さん、アーティストや事務所の方に話してきたんです。新しい音楽の光景を日本に作る、そのきっかけにしなければと思ったんですね」。
2019年のステージに登場したエレファントカシマシの宮本浩次さんと椎名林檎さん。 ※写真提供:日比谷音楽祭実行委員会
未来の日本の音楽のために、新しい種を蒔く。その思いは10万人を動員することにつながる。ただしチケット代はゼロであり、制作費は協賛企業からの協賛金と行政からの助成金、そしてクラウドファンディングの3つで捻出していった。
「これが10年前ならクラファンという手段はありませんでした。でも今では、自分の意思をお金にして表現しその対価としてリターンを受ける、もしくは自分の思いを支援金として伝えることは恥ずかしいことではないとする時代が来ている気がします。
僕個人としても、映画『この世界の片隅に』が制作資金の一部をクラファンで集めたことを知っていましたし、過去にJ-WAVEさんの音楽専門クラウドファンディング『J-CROWD MUSIC』に携わったことがあったこともあり、クラファンに対して大きな可能性を感じていました」。
去年は、クラウドファンディングサービスを提供するミュージックセキュリティーズ社とタッグを組み、また音楽祭の制作スタッフたち各々が仕組みを学習することで、第1回目開催に向けて800万円超を調達することができた。
そして、第1回目の成功を踏まえ亀田さんは、第2回目はキャンプファイヤーとレディフォーというクラウドファンディング業界の2トップとタッグを組みさらに高みを目指していく。ちなみにひとつのプロジェクトに2つの異なるクラウドファンディング会社が関わることは極めて稀なことであり、これも亀田さん自身が2社のトップに「新しいお金の循環を作って音楽文化を根付かせたい」と話に行くことで実現したという。


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