2020.05.13
LIFE STYLE

五輪延期、コロナショック……マイホーム購入の次なるタイミングはいつだ?

3月末に決定した、東京オリンピック・パラリンピックの1年延期。このニュースが流れたとき、「そろそろ家を買いたい」と考えていた人は、悩ましい状況に陥ったのではないだろうか。

というのも、オリンピックは「不動産価格に与える影響が大きい」と言われることが多く、今回も、2020年の大会までは不動産価格が上昇し、その後下落する……なんて予測が多数見られた。

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それが“延期”になったのだ。オリンピック後の購入を狙っていた人にとっては悩ましい状況だろう。それに加えて、誰もが予測しなかったであろう、コロナ禍の混乱だ。マイホーム購入など先行きがまったく見えなくなってくる。

そこで、不動産コンサルティングを行う「さくら事務所」の創業者・長嶋 修さんに取材。今の状況下で、これからの不動産購入をどう考えるべきなのか、買うタイミングをどう見極めるべきか、疑問をぶつけてみた。

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延期は気にする必要なし? そもそも不動産価格と東京大会は関係ない

東京大会までは不動産価格が上がる……。

この定説をもとに、大会後の価格下落を待っていた人は多いはず。しかし、長嶋さんは「今回のオリンピックと不動産価格はあまり関連しない」と、そもそもの定説を否定する。

「確かに過去の大会を見ると、開催年までにその都市の不動産価格が上昇したケースはあります。しかしそれは、まだインフラや経済が未成熟だった都市が、オリンピックによって急速に発展した場合。1964年の東京大会はそうでした。ただ、今の東京のような、すでに成熟した都市では不動産価格に大きな影響を与えません」。

実際、2010年のバンクーバー大会(冬季)や、2012年のロンドン大会など、先進都市での開催を調べると、不動産価格は変化していないというのだ。

「大会が1年延期になって、不動産購入も延期しようか迷っている人はある程度いるでしょう。また、新型コロナが長引けば大会中止の可能性もゼロとは言い切れない。先行きを占うのは難しい状況です。ただ、不動産については、そもそも東京大会との関連は薄い。オリンピックの行方を考慮する必要はないでしょう」。

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不動産価格の行方を知るには「日経平均」を見るべき

不動産価格と東京大会は無関係。実際、ここ数年の不動産価格を見ると、オリンピックとはあまり関係のない動きになっているらしい。

「東京都を中心とした不動産価格は、オリンピック決定前の2012年頃から上昇し続けていました。その上昇は2018年頃にピークを迎えて横ばい気味に。最近は頭打ち感が出ていました。不動産価格は、都心から全国へ波のように波及するので、これからほかの地域も頭打ちになっていくと見ています」。

この不動産価格と同じような動きを見せてきたのが、日経平均株価だ。2012年に安倍政権になると、アベノミクスと呼ばれる経済政策が始まった。これは、市場に出回る通貨の量を増やす「金融緩和」のひとつ。結果、日経平均は2018年頃まで上がり続け、その後は、コロナショックが起こるまで2万2000円〜2万4000円をウロウロと停滞した。

不動産価格も、おおむねこれと同じ動きをしてきたという。だからこそ、長嶋さんは「オリンピックの延期よりも、日経平均に注視するべき」とアドバイスする。不動産価格は、日経平均の動きを後追いすることが多いので、こちらの値動きを参考にしたほうが良いようだ。

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東日本不動産流通機構、東京証券取引所の公表データより長嶋さん作成

なお、日経平均は今回のコロナショックで一気に下落。2月には2万4000円ほどだったのが、3月下旬には1万6000円台まで下がった。その後、約1カ月かけて2万円ほどに戻ってきた。

「不動産価格については、まだ大きな下落は起きていません。ただ、株価から少し遅れて反応するので、これから動きがある可能性も。今の日経平均が約2万円という水準を考えると、不動産価格は今後10〜15%ほど下がる可能性もあります」。

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コロナ後の不動産購入は「早め早め」の動き出しが肝心?

不動産購入で考慮すべきは、オリンピックより日経平均。それが分かったところでさらに知りたいことがある。ずばり、コロナ禍での「不動産購入のタイミング」だ。

もちろん、緊急事態宣言が出されている今の状況では、不動産購入は控えるべきなのは言うまでもない。長嶋さんも「モデルルームは閉まっていますし、中古物件の取引もほとんどありません。今は、不動産市場も完全に様子見ムードです」と言う。

問題は、仮に新型コロナウイルスによる混乱が収束し、日常生活を取り戻し始めたあと。その状況まで戻ったとして、不動産購入のタイミングをどう考えれば良いのだろうか。

もしかすると、購入は“早め”が良いかもしれない。なぜなら、収束後に不動産価格は上昇していく可能性があるからだ。

「数年前から、日本を含め世界中で金融緩和が行われており、コロナの影響でさらにそれが強まりました。結果、コロナが収まると大量のお金が金融市場に残ります。そのお金が株や不動産市場に向かう可能性は高いですね。そうなれば、不動産価格は上昇するでしょう」。

ちなみに、今の状況は「バブル」が起きた1980年代後半にそっくりだという。

「金融緩和や、政府による“財政出動”が行われ、一方で低金利や原油安も起きている。この状況は’80年代後半と非常に近いです」。

となると、不動産価格も80年代バブルのように高騰する可能性は否めない。

「ただ、どんな不動産も軒並み上がるということにはならないと思います。一般的には、都心部や駅近の物件が当てはまるでしょう。ショッピングセンターや学校などの施設が集積している便利なエリアは、コロナ収束後に価格が上昇していく可能性があります」。

長嶋さんによると、最近の不動産は「価値が上がる物件」と「ゆっくり下落する物件」、「ゼロかマイナス価値になる物件」の“3極化”が起きているとのこと。コロナが収まったあとは、ひとつめの「価値が上がる物件」のみバブル状態になるかもしれないという見立てだ。

ということは、都心部や駅近の物件を狙っている人は、コロナの動向を見ながら早め早めに動いていくことが大切かも。もちろん、先ほど取り上げた日経平均の上がり下がりも、不動産市場の動向を考えるうえで参考になる。

不動産の購入は、人生の一大イベント。こんな状況ではあるが、なるべく冷静に状況を見守りながら、ここに挙げたポイントをもとに判断していこう。

<PROFILE> 長嶋 修
業界初の個人向け不動産コンサルティング会社『さくら事務所』を設立。以降、さまざまな活動を通して“第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント”の第一人者としての地位を築く。国土交通省・経済産業省などの委員も歴任。主な著書に、『マイホームはこうして選びなさい』(ダイヤモンド社)、『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ社)など。さくら事務所との共著『災害に強い住宅選び』(日本経済新聞出版)が発売中。

 

有井太郎=取材・文

# コロナ# 不動産# 東京2020
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