20代から好かれる上司・嫌われる上司 Vol.7
2019.12.12
LIFE STYLE

「これからはPDCAよりOODAでしょ」とか言う上司は20代に嫌われる

20代

「20代から好かれる上司・嫌われる上司」とは・・・

PDCAやKPIはもう古い?

もう何十年使われているのかわかりませんが、仕事の改善の進め方であるPDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルや、仕事がうまくいっているのかどうかをモニタリングするためのプロセス指標であるKPI(Key Performance Indicator)はビジネスパーソンの共通語となったと言えるでしょう。

しかし、表題のようなことを書くと、「それらはもう古いってことですか」と思うかもしれません。「変化の早い現在は、PDCAじゃなくてOODA(Observe-Orient-Decide-Act)でしょう」とか、「KPIじゃなくてOKR(Objective and Key Result)でしょう」とか言いたいわけではありません。そういうことじゃありません。

その言葉って本当に必要?

ここでPDCAとOODA、KPIとOKRの比較をするつもりはありません。無限に解説がネットでも本でもありますので、是非そちらをご覧ください。ここで言いたいのは、若者の先生である上司が、なぜよくわからない言葉を使うのかということです(一部の「よくわかっている人」にはごめんなさい、と先に謝っておきます。許してください)。

PDCAとかOKRとか、ビジネス界ではどんどん新語が出てきますが、そのほとんどは新語を作るほどの新奇性や創造性はないのではないでしょうか。その言葉を使わずに、「目標」とか「指標」とか「改善」とか「試行錯誤」とか、わかりやすい言葉で説明はできないのでしょうか。

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使うことで余計にわかりにくくなっている

そもそも、OKRとかの解説はすべてみんなが既に知っている言葉や概念の組み合わせによってなされています。つまり、別にOKRとか言わなくてもいいのです。

もちろん専門用語というのは、その言葉を使うことによって、一義的な定義を行い、議論を精緻なものにしたり、長い論理を短縮したりする機能があります。そういう機能があるなら、新語を作ることでコミュニケーションを円滑にすることになります。ところが残念なことに、私が見ている限りにおいては、PDCA、OODA、KPI、OKR……と新語ができるたびに、慣れるのに時間がかかり、わかりにくくなっています。だったら意味はないと思います。

見え隠れするマウンティング願望

別にそれらの言葉の概念は古くも新しくもなく、単に言葉自体が新しいだけなのではないかと思うのです。新語が出るといつも、知らない言葉が出たから勉強しなければと学ぶわけですが、結局「ん?これって以前のあれと何が違うんだっけ」「えー、こんな微差を、全く違う概念とか言ってるの??」と何度思ったことでしょうか。

誤差ですよ、誤差。本質的には全然違わない。そして、その怒りが「言葉を弄んで、人の大切な時間を奪うな」と新語を使う人に向かいます。結局、新語をドヤ顔で使っている人は、「俺は知ってるけど、お前は知らないの?」と相手をマウンティングしたいだけなのかとさえ思えます。

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純真な若者ほど怒りは増大する

もう私のような世を拗ねて生きているアラフィフのおじさんは、こんなことには慣れてしまいました。しかし、世に出たばかりの若者は純真です。上司がマウンティングするために出てきた言葉に対して「あ、ああ、O、OODAですよね……あれですよね」とか、定義の間違いを指摘されやしないかとビクビクしながら上司との会話をやり過ごします。

そして一生懸命調べても、新語でメシを食っている人たちは明快な答えをくれない(明快にすると新しくないのがバレるので)。そのうち、本質がわかっている人に出会って「ああ、あれ、ほぼ一緒」と言われたとしたら……その怒りは想像すると恐ろしいです。

ふつうの言葉しか使わない人のほうがリスペクトされる

若者だから流行に聡いというわけではありません。特にビジネス界での流行など、そこでのマウンティングに興味のない若者にとってはどうでもいいことです。むしろ、彼らの多くは、日々消費されて入れ替わっていくビジネス新語を憎んでいます。

そんなことよりも、もっと本質的な原理原則を知りたい、そして実のある議論をしたいのです。だから、新語を弄ぶ上司よりも、逆にそういう空虚な新語をほとんど使わずに、「ああ、それは要はこういうことだよ」と、ふつうに生きていれば理解できる、ふつうの言葉で説明してくれる上司のほうに知性を感じ、リスペクトを感じるのです。

できる人とは、定理や公式を自分で作れる人

以前、私は数学の先生でしたが、できる生徒とは、数少ない公理から、定理や公式を導くことができる人でした。2次方程式の解の公式などは、最初見るとギョッとする異様な式ですが、それを無理やり暗記するのではなく導き出す。それができれば公式は忘れてしまっても大丈夫です。他にも、素材や調味料のことを本質的にわかっている人は、レシピなどなくてもおいしい料理を作れます。料理の公理から定理や公式を導き出せるからです。

ビジネスでも結局これらと同じで、できる人は日々移り変わっていく表面的な概念のセットに詳しいのではなく、原理原則で物事を説明できる人ではないかと思います。上司たるもの、部下に対して、どんなときにも変わらない、普遍的なビジネスの原理原則をふつうの言葉で是非教えてあげてください。新語で弄ぶのではなく。

曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

 
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「20代から好かれる上司・嫌われる上司」
組織と人事の専門家である曽和利光さんが、アラフォー世代の仕事の悩みについて、同世代だからこその“寄り添った指南”をしていく連載シリーズ。好評だった「職場の20代がわからない」の続編となる今回は、20代の等身大の意識を重視しつつ、職場で求められる成果を出させるために何が大切か、「好かれる上司=成果がでる上司」のマネジメントの極意をお伝えいたします。上に戻る

石井あかね=イラスト

# 20代から好かれる上司・嫌われる上司# OODA# PDCA# 新語
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