PUNK日本酒●「俺たちが飲みたい日本酒は違うんだよね」と名乗りを上げた若手醸造家たち。不要なルールは無視して、とにかく美味いこと最優先。その結果、日本酒の世界はここ10年で格段に進化した。そんな造り手たちが放つPUNKな日本酒をレコメンド。
日本酒党じゃなくても、「ホリエモンのロケットの燃料に日本酒が使われた」というニュースを目にした記憶はないだろうか? その日本酒は、和歌山県の平和酒造が生み出した「紀土」(きっど)。あらゆるコンペティションで受賞歴を誇る超実力派だが、ここに至るまで紆余曲折があったという。
多くの人を虜にしながら何かと話題にも事欠かない紀土。そこには類まれなるチャレンジ精神を持つ平和酒造の四代目当主、山本典正さん(41歳)の存在があった。いまや「酒造界の大谷翔平」と言っても過言ではない当主を訪ね、紀土の出生の秘密に迫った。
ファーストクラスでも味わえるスパークリング日本酒
──飛ぶ鳥を落とす勢いの「紀土」ですが、全ラインナップのなかで今いちばんのオススメはどれですか?今年、ANAのファーストクラスに搭載された「紀土スパークリング」ですね。これは瓶内二次発酵で造った発泡のお酒で、フルーティでありながらドライな味わいです。米の甘みは感じますが、甘すぎることはないので、食事にも合うようになっています。
ひと口飲んでいただければ、きっと「日本酒ってこんな側面もあるんだな」と思っていただけるんじゃないでしょうか。
──泡の日本酒とは意外。てっきり純米大吟醸とかかと。「紀土スパークリング」はまだデビューして3年くらいなんですけど、やはり世界のお酒市場では“泡もの”ってウケがいいですよね。僕も好きですし。これまで日本酒業界にはスパークリングっていう発想はなかったのですが、せっかくなのでトライしてみようと思って造ったんです。
──日本酒業界からの反発はなかったんですか?もちろんありましたよ。でも、批判されることよりも、自分たちが何もしないことで日本酒業界が変わらないことの方が困るんです。
実際に、うちは特殊な動きをしています。紀土が堀江貴文さんのロケットの燃料で使われたり、うちで造っている梅酒「鶴梅」が中田英寿さんプロデュースでチョコになったり。従来の日本酒蔵の枠に当てはまらない、日本酒業界でいちばんチャレンジングで、エネルギッシュな酒蔵でありたいと思っています。
2/4