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2019.12.03

ライフ

葉山の「プラごみゼロ宣言」が変える未来。渋谷出身の町長の挑戦

2012年から葉山町長を務める山梨崇仁さん。1977年に東京で生まれ、渋谷区で育った生粋のシティボーイでもある。
2012年から葉山町長を務める山梨崇仁さん。1977年に東京で生まれ、渋谷区で育った生粋のシティボーイでもある。
プラごみによる海洋汚染のニュースが多く流れる昨今。2018年の夏には、神奈川県・鎌倉市の由比ガ浜に打ち上げられたシロナガスクジラの赤ちゃんの胃の中からもプラごみが見つかった。県はこれを「クジラからのメッセージ」と捉え、「プラごみゼロ宣言」を発表。それに即座に賛同した自治体が葉山町である。町長として運動を牽引する山梨崇仁さんは何を考えるのか。
渋谷で生まれ育ち、ウインドサーフィンにのめり込んだ学生時代、今取り組む「はやまクリーンプログラム」について聞いた前回に続き、セカンドキャリアとして町議会の道を選んだ後編の始まりだ。
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プラスチックを多く廃棄してきた世代がすべきこと

——アテネ五輪では日本代表候補になるほどウインドサーフィンにのめり込んだ山梨さんが、なぜセカンドキャリアとして町議員の道へ?

都内のベンチャー企業を経て、2007年に出馬して葉山の町議員となりました。
出馬した理由のひとつに、ウインドサーファーの先輩が逗子で市議会議員を務めていたことがあります。またほかにも市長、のちに国会議員をされた方もいますが、そのような方々が身近にいたこと。そして私自身、ウインドサーフィンを通じて人生に前向きに挑む姿勢の大切さを知りました。海に身体も心も鍛えられ、選手時代にはスポンサーからのサポートもあり、何か恩返しをしたいなとずっと思っていたんです。
そんな話を先述した方を含めた先輩たちと何度もしていたところ、議員を勧められて。
——ウインドサーファーのキャリアが町政に役立っていることはありますか?
まずは自然の優しさや厳しさを、身をもって知っているということでしょうか。ただそれ以上に大切にしたいのは、私たち世代ならではの感覚です。私たちは常になんでもある便利な時代を生きてきて、ポケベルから携帯電話へ進化したような経済的な利便性を享受してきた世代です。
上の世代は豆腐をボウルで買っていたけれど、私たちはプラスチック製のパックに入ったものを買うようになっていった、いわばプラスチックを多く使い廃棄してきた世代。今、こうしたプラスチックが海を汚している。
次の世代の子供たちは水筒を当たり前のように持っていますから、彼らの親世代でもある私たちは最も責任感を抱いて変化していく必要があるだろうと思っています。
——「葉山の海はきれい」という印象がありますが。
水質もそうですが、西向きの海岸なため潮回りが良く、浮遊物は少ないですよね。でもそれは一般的な見方によるきれいさであって、マイクロプラスチックは漂着していますし、海中では磯焼けが進んでいます。藻がまったくないんです。
子供の頃に見ていたような美しいビーチではないですね。だから最近はダイバーとも協力して、海中の汚れを情報発信していこうという話をしています。
サンセットタイムの葉山・森戸海岸。奥には富士山が見える。
サンセットタイムの森戸海岸。奥には富士山が見える。
——海をきれいにしていくことで葉山には何が還元されるのでしょう?
海はグローバルなものですから、葉山という小さな町がどれだけ頑張ろうと、地球規模で見たら大したことはないのでしょう。ただ、そのような動きをするとほかの自治体が連動して動き、大きなムーブメントになる可能性があります。
葉山はその活動においてリーダーシップを取りたいと思っています。例えば昨年11月には、ロックフェラー財団の会長であるデイビッド・ロックフェラーJr.氏が設立した、海洋環境保全のための活動を行うNGO団体「セイラーズフォーザシー」と協定を結びました。
ロックフェラー財団との連携が、グローバルに慈善活動をする層の人たちの呼び水になる。そういうつながりを築くことができるというのは、環境問題に取り組むにあたりとても価値のあることだと思っています。
世界のスタンダードを、まず葉山に紹介する。そして日本の各自治体とつながっていく。そのような流れを作っていきたいと考えています。
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