FUN! the TOKYO 2020 Vol.33
2019.10.20
LIFE STYLE

五輪メダリスト・朝原宣治が考案した筋トレ・マシンで誰でもアスリート体型?

いよいよ来年に迫った東京オリンピック・パラリンピック。何かと “遊びざかり”な37.5歳は、 この一大イベントを思い切り楽しむべき。競技を観るのもするのも、主な拠点となる東京を遊ぶのも、 存分に。2020年の東京を……Let’s have FUN!

東京オリンピックの日本代表選考が激化するなか、戦うアスリートの姿を見て「俺もトレーニングしようかな」と意欲を高めている人も多いのではないだろうか。そんなみなさんにお伝えしたいのが、ファンクショナルな動きを身に着けるトレーニング方法だ。

朝原宣治●1972年6月21日、兵庫県生まれ。短距離走を専門に100mでは3度日本記録を更新。2008年北京オリンピックでは4×100mリレーで銀メダルを獲得。
朝原宣治(あさはらのぶはる)●1972年6月21日、兵庫県生まれ。短距離走を専門に100mでは3度、日本記録を更新。2008年北京オリンピックでは4×100mリレーで銀メダルを獲得。同年引退。現在は陸上競技を指導するほか、スポーツ解説者としても活躍。

「理想は、パワーが中心から末端へとうまく伝わり、動きをスムーズに連動させることです」と語るのは、2008年の北京オリンピック・陸上男子4×100mリレーの銀メダリストであり、引退後は陸上競技の指導やスポーツ解説を行う朝原宣治さんだ。

通常の筋トレでは胸、腕、脚など、部位ごとに鍛えていく。だが、筋肉と動きは別物だ。いくら鍛えたところで動きが悪ければパフォーマンスアップにはつながらない。逆に、それぞれの筋肉がうまく連動すれば、筋肉以上のパワーを出せたり、スムーズな動きにもつながっていく。アスリートにとっては、パワーを機能的かつ効率的に出力するための動きをマスターしていくことが重要なのだ。なかでも朝原さんが重視するのが股関節。

「例えば、100m走のトップ選手は、足で地面を蹴っているように見えますが、実は股関節を強く伸展させて走っているんですね。逆に昔の日本人は足先だけで走っている選手が多かった。それだと20~30mは早く走れるんですが、動力を脚へと伝える股関節が動いていないので、そこから先は外国人の選手に差をつけられていた。

見た目は同じようなんですが、力の使い方が全然違うんです。サッカーやテニスでもトップ選手は必ず大きな筋肉を使って身体を動している。足先で動こうとするとめちゃくちゃ効率が悪いんですよ」。

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ダイエットも姿勢もヒップアップも「股関節」から!

でんでん太鼓をイメージすると分かりやすいだろう。持ち手を少し動かすだけでも、先端は大きく旋回する。つまり、軸の動きをうまく末端へと伝えられれば、スムーズでダイナミックな動きにつなげることができるのだ。

このことについて朝原さんは「アスリートだけの話ではない」と言う。身体を機能的に使えるようになると、スポーツのパフォーマンス向上だけでなく、さまざまな効果をもたらしてくれるとか。

「日本人は足先を使って歩く人が多いですが、股関節から歩けるようになれば、大きな筋肉を動かすことになるので、ダイエット効果がアップします。上半身がぶれなくなり、姿勢もよくなりますし、お尻が使えるようになるので、ヒップアップ効果もあります。力の伝わり方が整うことで、膝や足首への負担が減るので、市民ランナーの方などは怪我の予防にもなりますよ」。

ではどうしたら、ファンクショナルな動きを手に入れることができるのか。

「動きのクセをつけるためのトレーニングとして、股関節から動かすように大股で階段を登ったり、膝下を完全に固定して脚を前後に大きく振ったり、スクワットをするのもいいでしょう」。

だがこの方法、ただ動きをなぞるだけでは正しい動きをマスターしたとは言えない。身体の癖があるため、自分ひとりでマスターするのはなかなか難しいというのだ。

「股関節や膝、足首は可動域が広く、無駄な動きが入りやすいので、自分の動きやすい動作になってしまって、ターゲットにしたい筋肉とは別のところを使ってしまうことが多いんです。身体の動きに精通したトップアスリートならすぐにマスターできるのですが、一般の方に伝えるのは非常に難しい。

前後に脚を大きく振ったり、スクワットをする動きなら、膝下が動かないように固定してもらうなど、誰かにサポートしてもらうと確実です。イメージはスキーブーツ。あれくらい膝下から足首が動かないように固定するのが理想です」。

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朝原宣治さん考案「ヒップアンカー」の画期性

トレーニングを正しく、手軽に行えるようにするにはどうしたら良いのかと考えた結果、朝原さんは膝下を固定した状態で、身体を動かすのが最良だという結論に至った。

「例えばスクワットだと、トレーニング初心者は股関節をうまく使うことができず、膝関節に頼ってしまう傾向にあります。それだと上半身がブレやすいし、太腿前面や足首ばかりを使いがちなんですね。そのような人には、膝下を挟み込んで固定させた方が膝や足首が動きすぎることを防げるので、ターゲットとする筋肉にアプローチしやすいし、安全性も高いのです」。

そこで朝原さんは、ひとりでもトレーニングできる膝下を固定するためのマシンを作れないかと考えた。だが、このアイデアを実現するまでには長い歳月がかかったという。

「アイデア自体はすごく以前からあって、それをいろいろな人に伝えたんですけど、やってみますと言われたまま音信不通になったりして(笑)、全然モノにならなかった。膝下を固定するマシンが自体重をすべて支えなきゃいけないというのがネックで、もう穴を掘って膝下を埋めるしかないと思っていたので(笑)、できたときは嬉しかったですよ」。

これが朝原さん考案の「ヒップアンカー」。一般販売(24万円)のほか、この取材を行ったトライリングス三軒茶屋などで実践できる。

朝原さんのアイデアを生かしたマシンは、前後にクッションがついたプレートで膝下をガッチリ挟み込んで固定、その状態でトレーニングを行うというもの。「ヒップアンカー」と名付けられた。

「実際に膝下を固定してスクワットをすると、何も考えなくても、腿裏から大臀筋までがしっかり使えていることがわかります。膝下を挟んだままなので、片脚のスクワット(ランジ動作)も膝に負担をかけることなく安全にできますし、T字バランスも支持脚がぐらつくことなくしっかり行えます。これを使って階段の昇り降り運動や、脚を前後に振るだけでも、身体がスムーズに動くようになるんです」。

実際に使わせてもらったが、数分行っただけで、脚が軽やかに動き、歩くことが楽になって驚いた。力の使い方を意識せずとも、自然と動き方が変わっているのだ。

「でも、1度やっただけではすぐに自分の癖に戻ってしまうので、継続的にトレーニングをすることが必要です」。

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五輪メダリストはどう、TOKYO 2020を楽しむか?

ところで、まもなく東京にオリンピックがやってくる。オリンピアンの朝原さんはどんなふうに東京を楽しむのか。

「まずは、代表争いが熾烈になってきていますから、年内はそれを楽しみたい。僕は空手やクライミングなど、新しくオリンピック競技に加わった種目に注目をしています。あと、本番で楽しく応援するためにも、選手個人のことをより知っておきたいですね」。

そして朝原さんの最大の関心は、やっぱり短距離走だ。

「短距離は誰が代表になるかわからないほどレベルが高くて、リレー選手たちは金メダルを取る!と言っていますし、とても楽しみにしています。そして、競技はもちろんですが、街全体がすごい盛り上がりになるのがオリンピックです。ロンドン五輪のときは街中の人が親切で、みんなで楽しもうという雰囲気がすごかった。ぜひそういう空気も楽しんでほしいですね」。

なるほど。それでは我々はオリンピックまで、選手たちの頑張りを見てモチベーションを上げつつ、効率的なトレーニングに励もうか。


【取材協力】
トライリングス三軒茶屋
住所:東京都世田谷区太子堂2-7-1 フェニシア三軒茶屋1F
電話番号:03-5779-3922
営業:10:00~21:00、土・日曜、祝日は20:00まで(14:00~16:00閉館)

林田順子=取材・文

# 朝原宣治# 筋トレ
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