ピカソも愛用したナイフ「オピネル」。その歴史と正しいメンテナンスを知る
連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。
フォールディング・ナイフ=折り畳みナイフのパイオニア的存在であり、使いやすさと高い安全性、見た目の良さで世界中のアウトドアマンから支持されている「OPINEL(オピネル)」。
2020年に130周年となる歴史とプロダクトの魅力について、日本での展開を担当している、株式会社ハイマウントの佐野さんに教えてもらった。
120年以上愛され続ける折り畳みナイフの代名詞

——「オピネル」の創設はいつ、どこでですか?
1890年にフランスのサヴォワ地方で誕生しました。当時は鍛治が盛んだったようで、創設者のジョセフ・オピネルは祖父と父親も刃物職人。彼が折り畳み式ナイフの原型を開発したことで「オピネル」はスタートしました。
——まさに折り畳みナイフのパイオニアですね。
1955年にはジョセフの息子マルセルが、使用中と折り畳み時のどちらの状態でも刃をしっかり固定するセーフティリング「ビロブロック」を開発。この画期的なギミックは非常に高く評価され、現在のモデルにも引き継がれています。
フランスでは日用品といえるほど普及

——世界中でさまざまな栄誉を得ているそうですね。
はい。ロンドンにあるヴィクトリア&アルバート美術館の“世界の美品100特選”に選ばれ、フランスを代表する百科事典、ラルース百科事典には“後世に残したい品”として掲載されています。ニューヨーク近代美術館の目録にも紹介が。
——日本での認識はアウトドア用ナイフですが、フランスでは違うとか?
キャンパーや登山家が愛用するブランドのイメージは変わりませんが、それ以上に総合ナイフメーカーとして一般的な存在のようです。アウトドア、キッチン、ガーデニング、それにキッズ。フランスではカテゴリー展開も豊富なんです。子供にナイフを贈り、使い方や文化を学ばせる習慣のあるので、“最初の一本はオピネル”と言われるほどメジャー。日本でいうなら肥後の守かもしれません。
優れたルックスと機能性で天才芸術家も愛用

——ピカソが愛用したと伝えられていますが?
鉛筆削りに使っていたと聞いています。また、一部の彫刻でも用いたとか。海外ではナイフが身近なんです。特に「オピネル」は手に入れやすいプライスと可愛らしいデザインで愛され、もはや日用品レベルのようです。

——日本のキャンプシーンに適しているモデルはなんでしょう?
錆びにくく切れ味バツグン、メンテナンスの手間が少ないステンレスナイフが良いでしょう。サイズはブレード長約85mmの#8が万能。刃物の扱いに慣れていない人にもオススメできます。
——愛用するうえで、注意点はありますか?
とても多くのお問い合せを頂く“油漬け”について。本来はヒンジ部分の可動を改善したり、木製の柄に防水性を持たせたりするためのカスタムなのですが、「オピネル」には不要です。むしろ、柄が膨張し、刃の出し入れを妨げる恐れ大。推奨できません。また、ふだんから無意味に持ち歩くのはNG。銃刀法や軽犯罪法に触れるので気をつけてくださいね。

——メンテナンスはどのように?
基本的にあまり気を使わなくて問題ないですが、保管は水気を取り、なるべくドライな場所で。乾いた後、刃とリングにオイルをさすのもポイントです。本国の担当者は食品に使用される油を推奨しています。丈夫なステンレスナイフとはいえ、経年変化は避けられません。刃が欠けたり、極端に切れ味が下がったりしたら買い替えのご検討を。
ステンレスナイフのメンテナンスのコツ
●ポイント1「あまり切れないと感じたらシャープナーで回復」

●ポイント2「刃が出にくくなったら、柄を軽く打ちつけて」

アウトドア文化が根付き、ナイフに抵抗の少ないアメリカとヨーロッパでは、生活必需品級に浸透している「オピネル」。日本でもキャンプ人口の増加により、グングン注目度を高めている。
ビギナーから玄人まで満足できること請け合いの折り畳みナイフ。さまざまなシーンで活躍するから、外遊び愛好家なら一本は持っていたいものだ。
【取材協力】
ハイマウント
03-3667-4545
Hiroyuki Yamada=写真 金井幸男=取材・文