オーシャンズとレジャー 37.5歳から始める大人の趣味入門 Vol.109
2019.10.13
LEISURE

MTBと電動MTBを乗り比べ。フィールドで感じた圧倒的な“電気の力”

いよいよ今回はフィールドデビュー。前回教わったMTB(マウンテンバイク)の3つの基本を土台にしつつ、日本自転車競技連盟のナショナルチーム・コーチである小笠原さんの指導のもと駆け回ることに。

電動MTB(e-MTB)の実力を味わうために、ふつうのMTBとの乗り比べも行ってみた。


小笠原崇裕さん(39歳)●MTBのほか、オフロード版トライアスロン・エクステラをこなすプロ・マルチアスリート。MTB歴は30年。マウンテンバイクU-23全日本チャンピオンを獲得し、プロチームに所属して世界中でワールドカップなどに出場するなど転戦。現在はとくに後進の育成に力を注いでいる。 

 

MTBフィールドのコースとは?

――いよいよフィールドインですね。でも、どんなコースを走るんですか?

例えば、ここ(フォレストバイク)なら、山林の中を走る「トレイルコース」と、主にMTBでトリックなどを練習する「スキルパーク」があります。場所によって仕様は異なりますが、トレイルコースは初級〜上級向けまで揃えているところが多いですね。

コース解説
フォレストバイクの「スキルパーク」。左手には人工的なアップダウンが作られている。それ以外の鬱蒼とした森林部分に「トレイルコース」が配置。もっとも長いコースは約600mだ。

――上級って言葉、胸が高鳴りますね! 背伸びしてみても?

それは絶対にダメです。上級者コースには、高低差が5m位あるところを駆け下りたり、スピードをつけたジャンプが必要な箇所があったり、物理的に初心者では走れない部分があります。認可制にしているところがあるくらい。コースは気持ちのいい場所ですが、危険があることもお忘れなく。

e-MTBの操作はワンタッチ。重量バランスの心配も無用

車体
1972年創業の台湾の自転車メーカー・メリダ製の2台。左は2020年モデルの「BIG.NINE 5000」、右は「eBIG.SEVEN 600」(e-MTB)。

――e-MTBの操作はどうすれば?

操作はふつうの電動軽快車(いわゆる一般車)と変わりませんよ。ディスプレイにある電源スイッチを押すだけ。段階的にサポートのレベルを変えられるので、自分の好みに合わせてください。

――ちなみに、e-MTBって20kg近くありますよね。山道を走るなら、バランスがちょっと心配なのですが……。

基本の「マシンの重心」を意識していれば、大丈夫。ただ、たしかに重量はあるので車体に振られないように注意してください。乗る前はわからないかもしれませんが、意外にこの重量感で操作がしやすい、という人もいるくらいですね。それじゃ、行きましょうか!

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トレイルコース前のウォーミングアップ

――さて、どのようにコースを巡れば?

手始めに、スキルパークとその周辺を回ってみましょう。アップダウンもありませんし、山の中に入ったときに使えるテクニックを練習できる所がちょうどありますので。ついてきてください。

まずは肩慣らし。板材が置かれたり、ベニヤで作られた段差を踏み越えたりしていく。
凸凹
さらに高低差が約30〜50cmほどある連続したデコボコを走り抜けていく。

――(後ろをくっついて走る筆者)

やってみてどうですか? じつはこの連続した凸凹、トレイルコースにも設置してあったりするんです。しかも、上手く操作すると、一度も漕がずに進めるんですよ。

――一度も漕がずに?

コントロールのポイントは、腕の動きです。頭の高さを動かさないように凸凹を上るときは腕を引き上げて、下るときにハンドルを押し込む、この繰り返しです。自然と進行方向に慣性力が働いて、進んでくれるんです。

小笠原さんは事もなげに行なっていたが、漕がずに前進することができず……。

<MTB・e-MTB乗り比べレビュー①:平地>
MTBほぼ平坦なトリックコースでは、2台の違いはほとんど感じることはなかった。ただ、漕ぎ出しには大きな差があり、e-MTBだと快適な滑り出しに。一方で上記の小さな凸凹が連続する場面では、重量が災いして上りきれないことも(ペダルを漕がないようにするため、電気の力が働かない)。

 

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トレイルコースへ向かう急坂でe-MTBの実力を実感する

――そろそろ、土の上を走るのも慣れてきました。

じゃあ、少し上ったところからトレイルコースに入ってみましょうか。

――(上りに差し掛かって、e-MTBのモーター音が力強くなる)うおっ、これスゴいですね。

そうでしょう(ニヤリ)。いま上っているのは、15%くらいの斜度ですが、ふつうの自転車だとかなりの負荷がかかりますね。

登坂
左が小笠原さん、右が筆者。前傾する必要がないほどの余裕をもって上りきることができる。

――笑っちゃうくらい、力が要らないんですね(笑)。踏み込むだけで、自然と前進する力が加わってます。
そうなんです。もちろん、姿勢を保持するだけの力や、一定程度の力を加える必要はありますが、ほぼ歩くのと同じくらいの強度で、急斜面を上ることが可能ですよ。

<MTB・e-MTB乗り比べレビュー②:急坂>
MTBでも坂を上ったところ、驚くほど負担に差がある。最も感動したポイントは、平坦な場所と同じく漕ぎ出しだ。MTBは一般の自転車より車体が軽いものの、立ち漕ぎでよじ登る感覚が大きい。

森林の中を走り抜ける格別な爽快さ

――(コースの入り口に到着)

私が先導しますので、ついてきてください。くっつきすぎると危ないですが、通った轍を踏むような感覚で。ただ、くれぐれもゆっくり、無理をしないで走るように。

――目線は安全なほうに向けて、ですね。

そうですね。危険なほうを向くと、その方向に進んでしまうので。今回通るコースに登坂はありませんが、先ほどの平坦で練習したような凸凹と、ヘアピンカーブがあるので、気をつけながら、進んでいきましょう。

トレイル
トレイルコースを走り始める。路面は主に砂利と土で構成されていた。小笠原さんの背中を見ながら、慎重に車体を進めていく。
凸凹
コース内にある連続した凸凹道。

――(途中で立ち止まって)思ったよりも、振動がないんですね。サスペンションがかなり利いている印象です。

このくらいのオフロードであれば、そこまで振動は感じないはずですよ。車体によってもサスペンションが違っています。後輪にもサスが付いているタイプだと、さらに振動が少なくなります。

<MTB・e-MTB乗り比べレビュー③:トレイルコース(下り)>
下りがベースとなるコースの場合、道中ではe-MTBの実力はそこまで発揮される余地はない。というのも、ペダルを踏み込むことがそこまで多くないからだ。逆に、不意な踏み込みにより、予想外の前進の力が働いてしまうため、やや慣れが必要な印象を抱いた。

急カーブ
コース終盤に登場した、ヘアピンカーブ。スピードがついていると、かなり怖いが、小笠原さんはグイグイと攻めていく。

――(ヘアピンカーブを曲がったあと)ハァハァ…。スリル満点ですね(笑)でも、山の中を走り回れるって、ドキドキします。

なかなかない体験ですよね。私はこれが楽しくて30年以上続けているんですが(笑)。ところで、カーブの練習の成果は出せました?

――それがなかなか……。一番難しかったのは、スピードの制御と目線の移動ですね。カーブの途中まで行ったら、コースの先を見るというのは、恐怖が勝ると下を向いてしまって。

そこは慣れかもしれませんね。ただ、練習でも言ったように、恐怖を感じると腰が引けてしまいます。だからこそ、最初はゆっくりと優しくブレーキをかけながら進んでいきましょう。

<MTB・e-MTB乗り比べレビュー④:トレイルコース(急カーブ)>
車体が重い分、e-MTBのほうがカーブしにくいと思いきや、そんなことがなかったのは意外。というのも、車体が軽いと逆にスピードが上がりすぎて制御が難しいことがあるからだ。重量があるからこそ、初心者はe-MTBのほうが扱いやすいのかもしれない。

相模湾
遠くに相模湾を望みながら、出発した「スキルパーク」近くまで戻ってきた。
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e-MTBの真価は、走行持久力の温存にあり!

小笠原さん

――いやぁ、爽快でした! 今のトレイルコースは1周10分もかからないですよね。

ええ、コースを変えながら、ぐるぐると周回するのがベースとなります。練習するときもひたすら走り回っています。

――e-MTBはとっても楽でした! ただ、ふつうのMTBも遜色なく楽しい。小笠原さんの考える一番のメリットは?

1周しただけだと、あまり感じないかもしれません。でも周回を重ねて遊んでいると、疲労度合いが全然違うんですよ。オフロードでは、漕ぎ出しと急坂の負荷は避けられません。

――たしかに、力がグッと必要ですよね。

そこで体力を奪われると、2周、3周するのが徐々に厳しくなってきて、景色を見るような余裕がなくなってしまうんです。もちろん、アスリート気質の人にとっては、それが快感なのかもしれませんが(笑)。でも、最初に味わってほしいのは、やはり屋外で走り抜けることの爽快感、自然との一体感です。

――ハイクやキャンプとは違う魅力ですね。

はい、まずは体験してみてほしいですね! MTBを街乗り用にしている人も多いと思いますが、ぜひ一度、トレイルコースにトライしてみてください!

―ありがとうございました!

【取材協力】
T-FORESTRY フォレストバイク
住所:神奈川県小田原市荻窪
電話:080-4430-4030
営業:10:00〜16:00/土・日・祝(予約制)
※利用する場合、初回講習の受講必須。レンタルバイク有り。
www.forestbike.jp

 

澤田聖司=写真 芋川 健=取材・文

# MTB# オーシャンズとレジャー
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