Camp Gear Note Vol.15
2019.10.08
LIFE STYLE

ペグハンマーと焚き火台。「muraco」の技術が光る、革新的な2つのギアを徹底解析

連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。

焚き火台

1974年創業の金属加工会社「シンワ」は、2016年に新事業としてアウトドアブランド「muraco(ムラコ)」を立ち上げた。金属への深い知識と経験に基づくギアを生み出し、瞬く間にキャンパーから支持される存在となった。

特に話題となったのが独特のスタイルを実現したペグハンマーと焚き火台。2モデルの開発背景や特徴、メンテナンス法などを同社の森 玲音さんに聞いた。

高い技術あってこその群を抜く機能美

ペグハンマー
CARAJAS(TM) ペグハンマー 3900円

——ブランド初期にリリースされた黒くスタイリッシュなタープポールやテントにも驚かされましたが、このペグハンマーはより強いインパクトをシーンに与えましたね。

T字ヘッドが一般的ですから、ストレートタイプは新鮮に映ったはずです。しかし、斬新なのは見た目だけではないんです。軽さもポイント。おそらく、現時点で金属製としては最軽量のペグハンマーではないでしょうか。スムーズなシルエットと相まって、非常に携帯しやすくなっています。私たちのイメージ的にはバイクや自転車で移動する人にぴったりかなと。

使用方法
ハンマーのフックや穴を利用すれば、ペグのタイプに関わらず簡単に抜ける。

——ペグ抜きも兼ねているそうで。

ヘッド部分の形状を利用して引っ掛けたり、すきまに差し入れてねじったりするとラクにペグが抜けます。栓抜きとしても使えるんですよ。

——独特なヘッド形状なのはそのためなんですね!

いろいろと試行錯誤しましたが、「軽くて収納しやすい」というコンセプトと、自分たちができることを追求した結果なんです。私たちは金属加工のなかでも切削が得意。塊から円柱形状に削り出したり、そこに面を作ったり、穴を開けたり……。もっとも長けている技術を活かすと削り出しのストレート形状のヘッドに行き着き、自然とこのスタイルに。

アルミとステンレスの一体化で今までにない使いやすさを

ペグハンマー
誤差が出やすい異素材同士のコンビを、知識と経験によって結びつけた。「金属への知識が私たちのアドバンテージです」。

——軽いハンドルと重量のあるヘッド、接合は難しいのではないですか?

ジョイント部はかなり気を使っています。硬くて重いステンレス製ヘッドに対し、ハンドルは軽いアルミ。比重が異なるので、先端方向に重心があり、振りやすくなっています。

——なるほど。

そして、私たちには長年培った金属に対する知識があります。ヘッドとハンドルの嵌め合い部分は約0.02〜0.03mmしか隙間がなく、アルミ製リベット(部材同士を接合するモノ)で固定。さらに内部に仕込んだゴムのOリングがグラつきを抑制します。自社の技術と知識があったからこそ、鍛造ハンマーとのコンセプトの違いを生み出せたのだと思います。

使用方法
手からすっぽぬけないようループに手を通して使用すること。

——注意点や特別なメンテナス方法はありますか?

ヘッドが負けてしまうため、硬度が高い鍛造ペグには使えません。アルミペグ専用ですのでご注意を。また、濡れていると滑りやすく危険です。使用時は必ずハンドルについているループに手を通してください。

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0.1mm単位の修正を繰り返して誕生した焚き火台

サテライトファイヤーベース
サテライトファイヤーベース 1万7000円

——今春リリースの焚き火台も好評ですよね。

携帯性とセッティングのしやすさ、重い薪に対応する頑丈さを追及し、従来品とは違うアプローチで基礎設計を行いました。軽くて持ち運びやすくてもセッティングが面倒だったり安定感がなかったり、しっかりしているけど収納性が悪かったりといったことがないよう、バランス良く仕上げています。

設計
アームとレッグが収まる設計のキモは、削り出しによって実現したソケット部。ほかの加工技術では難しいとか。

——特にこだわったポイントはどこでしょう?

本体の円筒部、両端のボルトを緩めるとアームとレッグが出せる構造なのですが、このアルミ製ソケットを削り出し加工しています。設計上、板金や鋳造では困難なんです。見た目のシャープさも削り出しならではといえるでしょう。火床となるマイクロメッシュは、耐熱性と収納時のしなやかさを重視して選びました。

メンテナンス
使用するたびに動かすボルト、ソケット部は硬さの異なる金属を使用しているので、磨耗が避けられない。油を差してケアするのが望ましい。

——使用やケアで気をつける点はありますか?

レッグは板状のステンレスのため、どれかのレッグに極端な負荷がかかると曲がってしまいます。4本均等にウェイトが分散するよう、安定した場所で使ってください。また、本体両端のボルト・ソケット部分は、磨耗するとキーキーと異音の出る場合が。適宜、油を差してもらえれば問題ありません。

ひとつにまとまるからパーツ紛失の心配なし

収納
メッシュと本体は付属のケースに収納可能。合計1760gなので持ち運びの負担はかなり少ない。

——ペグハンマーと焚き火台、2モデルとも「ムラコ」独自のアイデアが詰まっていますね!

新事業の計画段階では、切削加工によって作ったインテリア雑貨を展開することも検討していました。しかし、アウトドア用品のほうが切削技術をより活かせると判断し、アウトドアブランドであるムラコをスタートさせました。

新事業のスタートは大きなチャレンジでしたが、得意なことから手をつけることで成長し、自分たちだけの個性も生み出せました。今後も精進し、みなさんに驚きと満足を感じてもらえるアイテムを送り出したいと思います。

Hiroyuki Yamada=写真 金井幸男=取材・文

# Camp Gear Note# MURACO# アウトドア
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