FUN! the TOKYO 2020 Vol.31
2019.10.06
LEISURE

「眠れないようなワクワクを」東京2020組織委員会・天野さんが起こす五輪イノベーション

FUN! the TOKYO 2020
いよいよ来年に迫った東京オリンピック・パラリンピック。何かと “遊びざかり”な37.5歳は、 この一大イベントを思い切り楽しむべき。 競技を観るのもするのも、主な拠点となる東京を遊ぶのも、 存分に。2020年の東京を……Let’s have FUN!

誰もが楽しめる東京オリンピック・パラリンピックの成功を、ある意味誰よりも願い、日々努力を重ねている人たちがいる。「東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会」だ。

この組織委員会、当然ながら期間限定の組織。2020年に大会が終了すれば、残業務を処理したのち解散となる。所属する人のほとんどは次の仕事を探さないといけない。「それでも」と各業界から集まってきた人たちの熱量はとても高いのだ。

そしてその中でも、一風変わった肩書きと熱すぎる想いを持つという人物に、話を聞いてきた。

イノベーション推進室 エンゲージメント企画担当部長の天野春果さん。スポーツの大会では聞き慣れない肩書きだが、一体何を想い、どんな仕事をしているのか?

NEXT PAGE /

「ありそうでなかったことに、ドキドキしてほしい」

以前はJリーグ・川崎フロンターレで名物企画マンとして名を馳せた天野さんが、組織委員会に参画したのは2017年春のこと。以来、大会を盛り上げるための「イノベーション」に取り組んでいるという。

「そもそも、組織委員会の中には11の“局”と呼ばれる大きな部門と、その下に52のFA(ファンクショナルエリア)呼ばれる課のようなチームがあり、大会の成功に向けてそれぞれの役割を果たしています」(天野さん 以下カッコ内はすべて)。

天野さんが所属するイノベーション推進室は「これら細分化された組織内の部署に横串を刺し、連携して面白いことを産み出すべく誕生した、事務総長の直轄部隊」とのこと。

「イノベーションは広い概念で、捉え方はメンバー次第。こういうことがイノベーションにつながるんじゃないかと考えて実行していくという、11の局とはちょっと毛色の違う部署です」。

実際に、イノベーションという言葉からのイメージからは意外な取り組みも手掛けている。

ⒸTokyo 2020

そのひとつが「東京2020算数ドリル」。これは、子供たちがオリンピック・パラリンピックの魅力を感じながら算数を学ぶことができるよう、東京2020大会の全55競技を取り入れた問題とアスリートの写真で構成されているもの。

「今年は東京全域の全公立小学校の6年生・約10万人に配布展開しました。東京以外の学校でも自治体単位での使用希望があれば、印刷製本費の負担をご了承いただいたうえでデータ提供しています。現在、静岡県全域、鹿児島県指宿市、山形県村山市、千葉県市川市、三重県鈴鹿市など、東京以外で5つの自治体で採用さていて、このほかにもいくつかの自治体から問い合わせを受けています。

競技の観戦チケットがなかなか手に入らない状況で、多くの人が大会を“体験”できないか、観戦できなくても記憶に残る何かができるかという狙いです。特に子供たちはこれからの日本を作っていくので、子供たちの記憶に残るかどうかを考えています」。

「僕は、イノベーションの定義は、あっと言わせること・ありそうでなかったこと・ワクワクドキドキすることだと思っています。

最先端技術に限ったことではなく、例えば算数ドリルはアナログのものですけど、スポーツと教育を掛け合わせることで、オリンピック・パラリンピックの認知も進むし、算数も楽しめて、勉強も進むという、ありそうでなかったスポーツの新たな活用方法として捉えています。

ⒸTokyo 2020

東京2020大会の全55競技が何なのか大人の僕らでも把握するのは大変ですよね。このドリルは全55競技が算数の問題と掛け合わせた形で必ず1競技1ページずつ登場する工夫をしたので、ドリルを使用していれば自然に知らなかった競技とも触れ合えるようになっています」。

NEXT PAGE /

「寝れないくらいのワクワク、それがずっと続く感じ」

そんな天野さんは、前職・川崎フロンターレではスタジアムでのイベントや、試合以外の地域との密着を高める活動など、ファンサービスの企画職に従事していた。

川崎フロンターレ時代の天野さん。

「転身してから2年半が経ちましたが、間違いなくその経験が活きていると思います。川崎をどう豊かに、元気に、ワクワクさせていくかということをやっていましたから、今とやっていることは変わっていません」。

フロンターレには1997年(当時はJリーグ入りを目指すJFLのクラブだった)に入社した天野さん。以来サッカーの世界で生きてきたが、実は、さらに遡ると1996年には、アトランタオリンピック・パラリンピックのボランティアとして活動していたという。

「実はアメリカに留学していた学生時代、たまたまアトランタ大会でボランティアをする機会がありました。

ボランティアは開会式のリハーサルに招待されるんですよ。リハー サルからセリーヌ・ディオンが登場するなど、本番同様に開会式の演出を間近で観ることができて、それが一生の記憶に残るほどのインパクトでしたね。

一緒のボランティアグループの人たちはアセンズの街に住む学生や主婦の方、リタイアしたおじいちゃん・おばあちゃん。ボランティア活動がない日は皆で食事に行ったり、ビリヤードしたりで仲良くなったという。

会期中は、アトランタから車で1時間ほどの場所にあるアセンズという街で、サッカー競技会場の案内誘導ボランティアをしました。アセンズの街も、大会中はずーっとお祭りのようなソワソワ・ワクワクした空気で、経験したことのない高揚感でした。

スポーツの祭典でありながらも、世界最大のお祭りの中にエンタメがあったり、技術があったり。時間もわからなくなるし、高揚感から眠くなくなるし、寝るのがもったいないという感じになります」と振り返る天野さん。

東京2020大会での注目競技を聞いてみると、この点も当時の観戦の記憶が大きいようで「当時、現地で観て衝撃を受けたのが、視覚障がい者だけで行われるパラリンピックの柔道です」という。

「まるで時代劇の剣豪同士の決闘の世界といいますか……シーンと静まり返った会場の中で、ほんの少しのピクッとした動きや音に反応して一瞬でパーンと一本をとったりする。オリンピック競技では味わえない世界があります。あの凄みは、本当に多くの人に会場で観てもらいたいなと思います」。

アトランタでオリンピック・パラリンピックがもたらす圧倒的な高揚感を体感した天野さん。

「だから、東京も絶対そうなるためにできることをやりたいと思っています。競技が安心・安全に進むのはもちろん絶対のこととして、プラス、一生の記憶に残る、その人の人生が変わるような何かが残せたら、それこそ“イノベーション”ですね(笑)」。

NEXT PAGE /

「アムロとシャアに、宇宙からTOKYO2020を応援してほしい」

天野さんはさらに組織委員会内の「ONE TEAM PROJECT」というプロジェクトチームでも活動中。これは日本を代表するクリエイターやイノベーター協力のもと、東京2020大会を盛り上げるプロジェクト。

「以前にあった『宇宙から東京2020エール!』という企画が終わったあと、宇宙を活用したさらにアッと言わせる仕掛けをしたいと思いました。いろいろ調べてみると、オリンピックを応援するための人工衛星はまだ打ち上げられたことがないと分かって、それならば、史上初となる五輪応援衛星を開発して打ち上げようと。

ⒸTokyo 2020 Ⓒ創通・サンライズ

ただ、それだけでは少し遊び心がないなと思い、日本が世界に誇る文化のひとつ、アニメキャラクターのガンダムを衛星に搭載しようと考えました。僕もバリバリのファーストガンダム世代なので(笑)」。

こうして、「宇宙から東京2020エール!」企画第2弾として、「G-SATELLITE 宇宙へ」が始動。「機動戦士ガンダム」総監督の富野由悠季監督の協力も仰ぎ、衛星の開発を担当するのは小型衛星開発の権威、東京大学の中須賀真一教授のグループ。「実は中須賀先生もガンダムが大好きなんです(笑)」。

「G-SATELLITE 宇宙へ」で宇宙に飛び出すガンダムとシャアザク

ⒸTokyo 2020 Ⓒ創通・サンライズ

・サイズ
「衛星の小さな箱の中で、ガンダムを1機入れるか、小さくしてガンダムとシャアザクを入れるかは喧々諤々と議論しました。最終的に、オリンピックは平和の象徴なので、作品の中では戦っているのに一緒に協力するというのが良いのではと、1/200サイズの2機を両方入れることにしました」。

・素材
「通常使っている素材や塗料では宇宙空間では耐えきれないので、搭載するガンダム、シャアザクを開発する製作担当者が苦労に苦労を重ねて、宇宙空間に対応できる特殊素材・塗料で今も製作中です」。

・メッセージ
「衛星には7機カメラが設置されるので、ただ通常のガンプラがいるだけではつまならいので、何か工夫を入れたいなと思い、ガンダム、シャアザクの目がオリンピックカラーに五色に発光する仕掛けを搭載しています。また宇宙用の電光掲示板も取り付けてあるので『〇〇選手、金メダルおめでとう!』などと祝福メッセージを多言語で宇宙から送ることができるようになっています」。

企画の始動は2018年の7月。「衛星の開発というのは普通、最低でも2年かかるんです。でも2019年の10月までに完成させないといけない。10月末までにJAXAに納品し、2020年3月に補給船でISSまで運ぶ予定です」というタイトなスケジュールで進行中。

さらには「実はこれ以外にもまだ発表していない機能があり、それらは今年12月に開催する衛星完成発表会見でお披露目します」とのこと。

実際に衛生に載せられるガンダムとシャアザク。 ⒸTokyo 2020 Ⓒ創通・サンライズ

組織委員会での活動は「2020年の年末で終了、(会期直後の)2020年9月にほぼ解散になる」とのこと。「超・短期決戦です。企画を翌年に伸ばすようなことができないので、自分が考えたことを期間内に出し尽くすことが大事。持っている力をどこに注ぐかを考えて、動いていきます」と天野さん。

さらに「ガンダム衛星企画を進めるにあたり色んな部署から必要性や実施意義などを問われましたが、それはひと言で言えばずばり“ロマン”です。今の日本に必要なことってこういうことじゃないのかなと思います。東京2020、トラックや競技場以外に、ぜひ“宇宙”に注目してみてください!」。

アムロとシャアからのボイスメッセージが届く!
東京2020組織委員会は、2020年に宇宙にいるアムロとシャアから“あなた宛て”のボイスメッセージ動画を抽選で10名様に届ける「“ガンダムと一緒に東京2020エール”キャンペーン」を実施中。

「あたれぇ!」と思ったあなたは、コチラ↓をチェック!
https://participation.tokyo202 0.jp/jp/oneteam/08.html

市來孝人=取材・文

 

# TOKYO2020# イノベーション# オリンピック# パラリンピック# 組織委員会
更に読み込む