「ありそうでなかったことに、ドキドキしてほしい」
以前はJリーグ・川崎フロンターレで名物企画マンとして名を馳せた天野さんが、組織委員会に参画したのは2017年春のこと。以来、大会を盛り上げるための「イノベーション」に取り組んでいるという。
「そもそも、組織委員会の中には11の“局”と呼ばれる大きな部門と、その下に52のFA(ファンクショナルエリア)呼ばれる課のようなチームがあり、大会の成功に向けてそれぞれの役割を果たしています」(天野さん 以下カッコ内はすべて)。
天野さんが所属するイノベーション推進室は「これら細分化された組織内の部署に横串を刺し、連携して面白いことを産み出すべく誕生した、事務総長の直轄部隊」とのこと。
「イノベーションは広い概念で、捉え方はメンバー次第。こういうことがイノベーションにつながるんじゃないかと考えて実行していくという、11の局とはちょっと毛色の違う部署です」。
実際に、イノベーションという言葉からのイメージからは意外な取り組みも手掛けている。
そのひとつが「東京2020算数ドリル」。これは、子供たちがオリンピック・パラリンピックの魅力を感じながら算数を学ぶことができるよう、東京2020大会の全55競技を取り入れた問題とアスリートの写真で構成されているもの。
「今年は東京全域の全公立小学校の6年生・約10万人に配布展開しました。東京以外の学校でも自治体単位での使用希望があれば、印刷製本費の負担をご了承いただいたうえでデータ提供しています。現在、静岡県全域、鹿児島県指宿市、山形県村山市、千葉県市川市、三重県鈴鹿市など、東京以外で5つの自治体で採用さていて、このほかにもいくつかの自治体から問い合わせを受けています。
競技の観戦チケットがなかなか手に入らない状況で、多くの人が大会を“体験”できないか、観戦できなくても記憶に残る何かができるかという狙いです。特に子供たちはこれからの日本を作っていくので、子供たちの記憶に残るかどうかを考えています」。
「僕は、イノベーションの定義は、あっと言わせること・ありそうでなかったこと・ワクワクドキドキすることだと思っています。
最先端技術に限ったことではなく、例えば算数ドリルはアナログのものですけど、スポーツと教育を掛け合わせることで、オリンピック・パラリンピックの認知も進むし、算数も楽しめて、勉強も進むという、ありそうでなかったスポーツの新たな活用方法として捉えています。
東京2020大会の全55競技が何なのか大人の僕らでも把握するのは大変ですよね。このドリルは全55競技が算数の問題と掛け合わせた形で必ず1競技1ページずつ登場する工夫をしたので、ドリルを使用していれば自然に知らなかった競技とも触れ合えるようになっています」。
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