連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。
叩く抜くが一本で可能な軽量で収納性の高いペグハンマー、ブラックのテントなど、ヒット作を連発するアウトドアブランド「muraco(ムラコ)」。
はじまりは埼玉県狭山市の小さな金属加工工場だった。新鋭ながら早くもアウトドアフリークが憧れるブランドの一角となった稀有な存在だが、どういった経緯で現在のスタンスに至ったのか? 同社の設計室に勤める森 玲音さんに伺った。
長年培ってきた金属加工のノウハウをギアに反映
——「ムラコ」は比較的新しいブランドだと思いますが、正確にはいつ創設を?ブランド自体は2016年に設立したので、今年で3年目。アウトドア業界ではかなりの若手ですが、母体である株式会社シンワは1974年から金属加工業を営んでいました。
——なるほど。下地は十分ですね。新事業の「ムラコ」をスタートさせたきっかけは2代目代表取締役、村上卓也の就任。切削加工を活かした商品開発で勝負できるだろうと思い、アウトドアブランドへの挑戦がはじまりました。
安定した経営基盤のために、下請けからメーカーへ
——BtoBだけでなくBtoCも追加されたわけですね。かなり急なミッションだったのでは?アウトドア業界に可能性を感じていた村上は、自社の技術で既存の商品を超えられるプロダクトを生み出せるのではと思ったそうです。円形パイプやジョイント部分の精度の高い加工も、弊社が得意とする切削技術を駆使すれば実現可能だったんです。
——それが見事にハマったと。ニッチな商品ですが、最初に発表したタープ用のアルミポールは、金属加工の工場が造るポールとして、説得力を持って受け入れられたと思います。発売前のテントへの注目度も高かったので、相乗効果もあったと感じています。
——今までと違う民間用製品を作るうえで気をつけたことはありますか?アウトドアということで、かなりエクストリームでトリッキーな使われ方をされる可能性がありますからね、耐久性や安全面はもちろんですが、ユーザビリティの部分も気を使ったデザインを心掛けています。それに、アウトドアギア業界は、インテリアやアパレルなどの他業界と比べるとまだまだ発展途上。最近になってブランドが増え、ユーザーの選択肢も豊かになりましたが、デザインにはまだまだ成長の余地があると思います。
——それは確かに言えるかもしれません。使いやすくて長く付き合えるギアの提案を心がけています。決して自分たちのエゴを押し付けず、ユーザーのみなさんが納得して選んでいただけるブランドでいたいですね。
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