37.5歳の人生スナップ Vol.81
2019.09.09
LIFE STYLE

非日常を体験した2代目バチェラーの現在。オワコンにならないための決断【前編】

小柳津林太郎さん

「決断しても、また決め直すことはできる。そう思うと、瞬間瞬間で真剣に向き合っていれば、何を選ぶかはそこまで重要ではないのだと思います」。

Amazonプライム・ビデオで好評を博すリアリティ番組『バチェラー』。同番組は、容姿端麗、高学歴、高収入の超ハイスペックな独身男性1人(通称バチェラー)と、複数の一般女性が駆け引きやデートを繰り返しながら3カ月間、ともに日々を過ごすという究極のハーレム恋愛バラエティだ。

アメリカで大好評を博したシリーズの日本版で、2018年に2代目バチェラーとして選出されたのが、小柳津林太郎さん(37歳)だった。

医者の家系で育った帰国子女、PL学園から慶応大学に入学。卒業後はサイバーエージェント入社、バチェラー出演当時は同社の幹部を務め……と、そのスペックの高さは折り紙付き。

美女20人が自分を巡って争い合うというと、男なら誰もが羨むようなシチュエーションだが、小柳津さんは、ただ恋愛を楽しむためだけに参加したわけではなかった。

番組終了からおよそ1年。小柳津さんは出演時とは大きく異なる環境に身を置いている。それは、『バチェラー』出演、そして彼自身の“人生のテーマ”が密接に関係していた。

”超非日常”を体験した37歳の男の当時の想いと、その後を追った。

NEXT PAGE /

人生のテーマは「自己表現の追及」

京都に生まれ、家庭の都合により小・中学校をニューヨークで過ごした小柳津さん。帰国後はPL学園に入学。個性や自由を尊重するニューヨークの空気とは対照的な寮生活にカルチャーショックを受けたというが、大学で飛び込んだ演劇の世界ではのびのびと自分を表現できる感動があった。

小柳津林太郎さん

「英語演劇というジャンルをやっていたのですが、そこには個性的であれ、という世界が広がっていて夢中になりました。会社務めするかこのまま演劇の道に進むか、本気で悩んだ時期もありましたね」。

サイバーエージェント入社に至ったのは、代表である藤田 晋氏の「仕事を通じて組織や社会に自己表現すればいい」という言葉が響いたからだった。演劇の世界を離れたうえでも、生き方や働き方を通した「自己表現の追及」は、小柳津さんの人生のテーマとなった。

入社3年目で子会社の社長に任命されるなど会社からの信頼は厚く、小柳津さんが責任ある役職と多くの部下を抱えるまでに時間はかからなかった。

転機となったのは35歳のとき。友人から「バチェラーに出てみないか?」と声をかけられたのがキッカケだ。軽い気持ちでオーディションを受けたが、過去の恋愛の話、資産額、語学力と想像以上に審査は入念なものだった。それでもバチェラーの話を聞くうちに、徐々に湧き上がる好奇心は抑えられなくなった。

「じつは1stシーズンを観ていなかったし、最初は『僕が出るなんて……』とピンとこなかったんです。でも実際に話を聞いて番組も観てみると、僕の中の自分自身を表現していきたいという思いにも重なるし、恋愛や結婚というテーマについても真剣に考えるいいチャンスだと感じるようになりました」。

しかし、いざ出演となると問題があった。3カ月の撮影期間中、出社はもちろん、まったく仕事ができないという点だ。

「3カ月会社休めます?と聞かれてすごく悩みました。責任者だし、部下も大勢いるし……。でも、新卒から約144カ月のあいだ会社のために働いてきたわけで、そのなかの3カ月ぐらいならいいんじゃないか、と。なによりも迷っている時点でそれは『やりたい』ってことなんですよね(笑)。こんなチャンス、もう来ることはないと思いましたし」。

葛藤の末、小柳津さんは3カ月のバケーションをとるとともに、公開型婚活『バチェラー』に参戦することを決意した。

「下手に『仕事に活きるかもしれない』とかは考えず、ただただ自分のために出演することに決めました。とにかく、真剣に目の前の女性と向き合うことに一心不乱になることにしましたね」。

NEXT PAGE /

恋愛リアリティーショーの果てに

いざ撮影が始まるとその日々は、想像以上にハードだった。

「タイトなスケジュールでシンガポールや沖縄、さまざまなロケ地を回らなければいけないので体力的には結構しんどかったですね、撮影中はもうハイになってましたけど(笑)。毎回、複数の女性の中から残ってもらう女性を選んでいくのも、辛かった」。

毎回、番組の最後には「ローズセレモニー」なるものが行われ、小柳津さんが選んだ女性にはバラが渡される。バラをもらえなかった女性はその場で退場。別れの言葉とともに去っていく女性の背中は寂しく、残酷だ。

その攻防はぜひ『バチェラー』本編にて確認してほしいが、結論から言うと現在、小柳津さんは独身で交際している女性もいない。小柳津さんがバチェラー出演で得たものとはなんだったのか。

「ひとつのことに真剣に向き合う時間ですね。ぼく30歳のときに婚約者がいて、いろいろあって別れてしまったのですが、その後は女性と向き合うことをどこか避けていたんです。バチェラーでは自分の恋愛観を改めて見つめ直せたし、みんなでひとつのものを作り上げるという意味では、演劇のことしか考えていなかった頃のような熱狂も感じました」。

最後のひとりとなった女性に膝まずき、指輪を差し出す小柳津さんの姿によって『バチェラー2』は感動的なフィナーレを迎えた。番組終了から1年、現在は結婚についてどう感じているのだろうか。

「今でも結婚したいですよ。この歳になると結婚のデメリットを考えてしまう男性は多いと思うけど、やっぱり互いに支え合い、生活を共にできる人がいるのは幸せなことで、それに勝るメリットってあまりないんじゃないかと思います。昔から家庭を持ちたいという願望はあったのですが、バチェラーに出てその気持ちはいっそう強くなりましたね」。

もともと寂しがりやだという小柳津さん。現在の恋愛について尋ねると「旅の途中って感じでしょうか……(笑)」とはぐらかされてしまった。

どうやら、今は恋愛よりも熱くなるものがある様子。今年になってサイバーエージェントを退職した理由もその辺にありそうだが、その心の内は【後編】で。


澤田聖司=写真 藤野ゆり(清談社)=取材・文

# 37.5歳の人生スナップ# バチェラー
更に読み込む