カラダ笑う薬膳 Vol.3
2019.09.08
HEALTH

疲れ目、老眼、冷えを感じたら「ししとうのきんぴら」薬膳アレンジを

カラダ笑う薬膳●まだまだ老けちゃいないけど、若くもない。37.5歳ってそういう年齢。昔と同じように食って飲んで遊んだ朝は、昔と同じようには起きられない。いろんな曲がり角で悩める37.5歳は、中医薬膳をマスターする“薬膳ママ”の店に今日も行く。

都内某所。飾り気はないが、温かみのある風情。一杯ひっかけるにはちょうどいいおばんざい屋がある。あるのは、5人ほどが掛けられるカウンターのみ。旨いってのは当たり前なのだが、ここの女将がまたヒネリが効いていていい。

人呼んで“薬膳ママ”。

この歳にもなれば起きる体のちょっとした不調を、会話で引き出した情報から、料理で和らげてくれる。今夜もまた常連の男が、目元に生気のない風情で暖簾をくぐる。おっと、いきなり扉に頭をぶつけているようだが……大丈夫か?

目の疲れから老眼まで。食って良くする一品料理を求めて

ママ いらっしゃい。って、いきなり頭ぶつけて大丈夫?

 おっとっと。このところ疲れが溜まっちゃっててさぁ。

ママ いつもの瓶ビールでいい?

 うん。

ママ この夏、休み取れなかったの?

 大量の納品に追い込まれてさ、お盆返上だよ。我が社の働き方改革どうなってんだ!ってね。

ママ ストレスも溜まるわね。もう若くないんだから無理は厳禁よ。

 今年も夏は暑かったからさ、若いの連れて、キンキンに冷えたビールだけが楽しみだったわ。

ママ あら、付き合ってくれるようになったのね。こないだアナタ「若い子は仕事できるけど飲みニケーションができない」ってグチってなかった?

 そうそう、あれね。まぁ話してみるもんだよな。麻雀が趣味ってのが一人いて意気投合だよ。

ママ よかったじゃない。

 でもね、こないだ思い切って一緒に雀荘行かない? って誘ったら、「自分、ネット麻雀派なんで」って断られて(笑)。

ママ ひと筋縄にはいかなね。あ、冷房どう? 冷えすぎてない?

 大丈夫、気遣い助かるよ。最近、外は暑いけど、室内の冷房キツいってこと多いからね。カラダの調整難しいよ。

ママ 私なんか、最近はカーディガンが手放せないもの。さて、最初の一品は「ししとうのきんぴら」でどうかしら?

 いいねぇ。野菜不足だし、ちょうどいいよ。あ、そうそう結局、若手の「麻雀くん」とはゲーセンで打ったんだよ。

ママ へぇ、そんなのが今はあるのね。

 インターネットに繋がってて、違うゲーセンでプレーしている客とネットを通じて打つんだけど、牌の文字が見づらくて、見間違えて切ったら役満振り込み……。

ママ あらあら。はい「ししとうのきんぴら」。

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食材すべてに意味がある「ししとうのきんぴら」薬膳Ver.

 ありがとう。

ママ やっぱりアナタ。目に相当疲れが来てるみたいね。店に入るときに頭ぶつけたの、かすみ目でしょ。仕事でも目を使うものね。

 さすが、お見通し。しかし、このきんぴら美味いね。すった黒ごまとじゃこが絶妙に絡んでて。おまけに菊の花なんかちらしちゃって、見た目もいいし。

ママ うれしいじゃない。

 で、なんでししとうなの?

ママ ひとつは、ししとうは目に効くから。薬膳の世界では「明目(めいもく)」って呼ぶんだけど。ししとうにもその効能があるわけ。ついでに言うと、きんぴらに添えた菊の花もその役割があるのよ。

<今晩の薬膳用語①>
明目(めいもく)=薬膳においては、かすみ目や眼精疲労、視力低下など、目の機能低下を改善する働きのこと。目を酷使する現代社会で注目されるべき効能。

 

 へぇ、なるほどね。こないだ目を酷使してたら白目が真っ赤になったんだけど、関係ある?

ママ なくはないわね。目が弱ってる場合は、中医学でいうと「肝(かん)」「腎(じん)」の弱まりが大きな原因だから、そこを補ってあげることが必要なの。

<今晩の薬膳用語②>
肝(かん)=中医薬膳の考え方の1つとなる「蔵象学説」における「五臓六腑」の「五臓」のひとつ。「肝」の主な働きは、気の疏泄作用(発散させたり、スムーズに流したりする)と、血の蔵血作用(血液を貯蔵したり、血液量を調整したりする)。また、目の働きに強く関わるとされている。ストレスと関わりが強く、この属性が弱っているときはストレスを抱えている証拠。
<今晩の薬膳用語③>
腎(じん)=こちらも、肝などと並ぶ「五臓」のひとつ。いちばんの働きは「蔵精(元気のもと)」で、発育や老化に関係が深い。「腎」を養生することで老化や美容などの予防につながる。体の部位としては、耳、骨、脳、歯などの働きとの関わりが深い。

 

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万能食材ししとうを支えるオールスターズ

 それ全部をししとうで補えるの?

ママ それだけじゃ足りないから、いろいろと和えているのよ。

 黒ごまや、じゃこにもウンチク入ってる?

ママ 当たり前じゃない! 黒ごまが「肝」じゃこが「腎」に効くのね。じゃこはイワシの赤ちゃんでしょ。イワシは「腎」に効く代表的な食材なの。で、黒ごまには「滋陰」といって、身体の中から潤す働きもあるし。

 本当に恐れ入るよ。最近気になってきた老眼にも効くのかな?

ママ 老化を防ぐには「腎」に働きかける食材が必要。じゃこが入ってるから効果アリね。

 やったー。

ママ ちなみにししとうは万能で、血の巡りをよくする「活血(かっけつ)」と呼ばれる働きもあるの。つまり、体の冷えを抑えてくれるのよ。ししとうって唐辛子の仲間だから、イメージしやすいでしょう?

<今晩の薬膳用語④>
活血(かっけつ)=血流が悪いときに、血の巡りを促進する働き。

 

 おお、冷えすぎの話までフォローしてくれてる? だから来たくなるんだよ、この店! 気分よくなってきたわ。ママ、ビールおかわり! 今度はキンキンの生中ジョッキで。

ママ ちょっと、私の話、理解してるの? ビールで冷えちゃうわよ。

 だってまた、ししとうのきんぴら食べればいいんでしょ!

ママ 何事もバランスなのよ。食べ過ぎないでね!

 

■薬膳ママ 小池美枝
アール・ド・ヴィーヴル代表。国際中医薬膳師。中医薬膳茶師。中医薬膳の講師や執筆のほか、ブランドコンサルティングやPR業務も手掛ける。かつて、某スイス時計ブランドのPRを長年務めた経歴もあり、年に一度のバーゼル ワールドでは「小池さんの手作りおにぎり」が、取材者たちの間で名物になった過去も持つ。

※なお、おばんざい屋は架空のお店です。本当にこんな店があったらなぁ。

山本 大=写真 髙村将司=文

# ししとう# じゃこ# 薬膳ママ# 黒ごま
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