37.5歳の人生スナップ Vol.78
2019.08.20
LIFE STYLE

「固定観念を水に流したい」。うんこミュージアム・ディレクターが日々ほくそ笑む理由【後編】

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阿部さん

現在お台場で開催中の「うんこミュージアム」をはじめ、WEBから映像・イベントまで、さまざまな企画・制作を行ってきた、クリエイティブディレクターの阿部晶人さん(45歳)。

会場
「うんこミュージアム TOKYO」の会場を彩る、極彩色の電飾。

新卒で電通に入社し、国内外の広告賞を受賞。外資系代理店で活躍するなど華々しい経歴を持つが、40歳の節目に一度仕事を辞め、アルバイト生活を始めている。

キッカケは1970年から3年に1度開催されている世界剣道選手権だった。

「大学時代に剣道のホームページを作った縁で全日本剣道連盟の委員をしていたんですが、次の世界大会こそ日本で!と招致や企画のお手伝いをしていたんです」。

決まれば日本での開催は第1回大会以来、45年ぶりの快挙。阿部さんは仕事の合間に、招致のためのボランティア活動に精を出した。

「イタリアに行ってプレゼンをしたり、夜な夜な資料を作成したり。忙しかったけど充実感がありました」。

そして阿部さんの努力が見事に身を結び、開催地は東京に決定した。しかし招致に貢献したからこそ、ここで終わりにしたくないという想いが芽生えたという。

「次はいつ日本で開催されるかもわからないし、肝心の大会本番に関われなかったら、ぜったい後悔する。でもこれ以上、仕事と並行して活動するのは限界を感じたのでスパッと仕事を辞めました」。

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「面白いかどうか」が選択基準

長年務めた外資系代理店を退職。全日本剣道連盟でのアルバイト生活をスタートしたのだ。そこに迷いはなかったのだろうか。

阿部さん

「僕のなかでひとつ決めているのは、『迷ったら、面白いほうを選ぶ』ということ。選択する際にどうしてもお金や地位、どちらが大変かなど打算的な部分って産まれると思うんですけど、僕は余計なことを考えずに『どっちが面白いか』でいいと思うんです」。

その選択方法は、まるで子供のようにシンプルで直感的だ。阿部さんは人生で岐路に立ったとき、常に「面白いかどうか」に立ち返ってきたという。そして阿部さんの「面白い」を信じる感性によって、実際に世界剣道選手権は東京で大成功を収める。

「(漫画『バガボンド』の作者)井上雄彦先生にポスターを書いていただいたり、剣道界ではかなり盛り上がったと自負しています。そこでイベントの面白さを感じた。肌で感じる熱狂や人々の感動、それに自分が関わることの達成感……このライブ感をもっと味わいたいと思いました」。

世界剣道選手権という、ひとつの大イベントのディレクションを行ったことで、目の前の人を感動させることに興味がわいた。それが現在の職場である面白法人カヤックの入社にも繫がっているという。

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「まずは、面白がる」

『うんこミュージアム』を筆頭に、斬新なアイディアで数々のイベントやコンテンツを成功に導いている面白法人カヤック。会社全体の「まずは、自分たちが面白がろう。」というヴィジョンは、阿部さんの人生哲学と重なる部分がある。

「カヤックのいいところは、みんな本気で楽しんでいるところ。アイディアが形になって世に出る頃には丸く無難なものになっていることってよくあるけど、カヤックでは『それも通っちゃうの!?』ってぐらい、フィルターがなくて、自由なんです」。

とはいえ、アイディアが形になるまでは、当然苦しい時間も存在する。

「うんこミュージアムに関して言うと、『うんこ』っていうキーワードが入っていると面白いように感じてしまうんですが、いかに固定観念を水に流すかを突き詰めました。悩みすぎて巨大なうんこが立ちふさがる夢を、よく見てました(笑)」。

阿部さんはアイディアを生み出すとき、どんなことを心がけているのだろうか。

「あんまり気負いすぎないこと。音楽でいえばジャズのように。そのときのグルーヴ感を大事にしています」。

40代を迎え、自分の「面白い」を追及できる環境に身を置いた阿部さん。肩肘をはらず自分らしく仕事を楽しんでいるようにみえるが、年齢を重ねるごとに仕事のスタイルにも変化の兆しが見えているという。

「最近は自分よりも周りを活性化させたいと思いますね。昔はもっと自分が自分がって感じだったけど、チームメンバーの良さを引き出すには、どんな言葉をかけたらいいのかを考えるようになった。プレーヤー側もいいけど、いろいろ仕掛けて裏でほくそ笑むのも楽しいなと(笑)」。

今後はこれまでのノウハウを利用して、さらなる体験コンテンツを生み出したいという阿部さん。「面白い」を求めて、これからもそのほくそ笑みは続きそうだ。

藤野ゆり(清談社)=取材・文 小島マサヒロ=写真

# うんこミュージアム# クリエイティブディレクター# 面白法人カヤック
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