2019.08.11
LIFE STYLE

“薬局での出会い”が始まりの世界的ブランド「コールマン」のランタンが信頼される理由

連載「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。

ブランドロゴであるランタンを筆頭に、クーラーボックスやテントなど、キャンプにマストなアイテムを幅広く手掛ける「Coleman(コールマン)」。

いまやキャンプシーンに欠かせないブランドだが、“なんとなくランタンに強い”というイメージで止まっている人がほとんどではあるまいか。しかし、そこには120年にもわたる歴史が横たわっている。彼らのランタンが信頼され続ける理由を、自身もランタンを多くコレクションしているコールマンの営業部・山中隆司さんと追った。

ロゴ

ランプのリース業から始まったコールマン

時は1899年まで遡る。タイプライターのセールスマンをしていたW・C・コールマンは、アラバマ州のドラッグストアで煌々と輝くランプに出会った。

エフィシェント・ランプ
ブランド創設者がアラバマ州ブロックトンで出会い、衝撃を受けたエフィシェント・ランプ。ここからコールマンの歴史が始まった。

「白熱電球が発明されたばかりの当時、一般のアメリカ人にとって照明といえば灯油ランプ。ところが、その薬局が使っていたのはガソリン燃料で、芯の代わりにマントルを使うタイプだったんです」(山中さん、以下同)。

友人に本を読んでもらう必要があるほどひどい弱視のコールマンだったが、この「エフィシェント・ランプ」の下なら薬瓶のラベルまで読めた。驚いた彼は製造元から直接購入、新たにランプのセールスマンとして活動し始める。

山中さん

「ところが全然売れず、ハイドロカーボン・ライト・カンパニーを設立。“機能しなければ支払い不要”と掲げてランプレンタル業に転換したそうです」。

すると、商品に対する絶対的自信が人々に伝わり、瞬く間に信頼を獲得。順調に事業は拡大し、本拠地のオクラホマ準州キングフォッシャーだけでなく、サンディエゴやラスベガスでも知られる存在に。

コールマン・アーク・ランプ
1903年に誕生した初のオリジナルとなるコールマン・アーク・ランプは、600キャンドルパワーの明るさを誇った。キャンドルパワー=ろうそく1本分の明るさというから、その光度がわかる。

1901年、カンザス州ウィチタに会社を移すと、「エフィシェント・ランプ」の専売特許権を取得。1903年には初のオリジナルモデル「コールマン・アーク・ランプ」も開発し、貸しランプの業績は右肩上がりであった。

「ですが、契約数とともにメンテナンスコストが増すのは当然。より効率的に収益を上げるため、販売にシフトするのが急務となりました」。

1905年、より信頼性の高い自社モデルの生産をスタートさせ、レンタル業から製造業へ進化。1909年、持ち運べるガソリンタンク付きテーブルランプをリリースすると、明かりを移動させたい農村家庭の需要にマッチし、急速に普及した。

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米軍に信頼されるほどのヒット作を連発

アーク・ランタン
アーク・ランタンはコールマン初の屋外用ランタン。「真夜中の太陽」とあだ名されるほど明るく、アメリカ軍にも信頼された。

販売業が軌道に乗った1913年、「ザ・コールマン・ランプ・カンパニー」に社名を変更。1914年に全天候型の屋外用ランタン「アーク・ランタン」を送り出した。

「真夜中の太陽」とも呼ばれたこのランタンは、家畜小屋の端まで照らし、2L弱のガソリンで25〜30時間点灯。倒れても燃料がこぼれず、火事を恐れる農家の強い味方となった。そして、アメリカ政府は第一次世界大戦中に「アーク・ランタン」を最重要物資に指定する。

軍需の追い風を受け、会社は大きく成長。’20年に海外進出を果たし、カナダのトロントに初の国外工場を建設。だが、世界恐慌が訪れると、ルーズベルト大統領は雇用創出のために発電ダムなど公共投資を拡大。これにより国内の電化が加速し、地方や農村にまで電力インフラが整うことになったのだ。

以降、ガソリンランタン市場は目に見えて縮小。ピンチを抜け出すために新たなジャンルの開拓が必要となった。着手したのは石油式の室内暖房器具と床下暖房システム。徹底して開発を進め、1930年代末には暖房関連の最大メーカーに君臨していた。

GIポケットストーブ
米軍の厳しい注文に応えたGIポケットストーブ。約1.5kgと軽量で、カップ1杯の燃料さえあれば2時間も燃焼した。

「第二次世界大戦になるとアメリカ軍の要請により『GIポケットストーブ」を開発します。軽量かつコンパクト、どんな燃料にも対応し、いかなる気温でも使用できる傑作です。これを機にコールマンは世界中で知られる存在となります」。

戦後、不安定な経済状況のもと、停電や非常時の備えとしてランタンやオイルヒーターを購入するという価値観が生まれることとなる。

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平和な時代に合わせて路線を変更

しかし、1960年代に入ると売り上げの30%近くを占めていた軍への納入がゼロに。会社は大きな変革が求められていた。

ペンギンクーラー
1954年に発売したペンギンクーラーは保冷力が高く、アイスクーラーとも呼ばれた。

カヌーガイドの経験があるほどのアウトドアマンであった、2代目社長のシェルダン・コールマン・シニアは、キャンピング市場への進出を図る。

「プラスチック製ライナーを応用した、キャンプ用クーラーとジャグを製品化。テントや寝袋もラインナップに組み込みました」。

売り上げのV字回復こそ叶わなかったが、危機を脱出するには十分の方向転換であり、その後の方針もこの時点で決まったといえる。

ワンマントルランタン286A
さまざまなランタンを送り出した経験は、ワンマントルランタン286Aなどに反映され、今も高く評価され続けている。

日本に本格進出したのは1976年。支社を開設し、本格的なアウトドアギアを紹介した。90年代には日本にもオートキャンプのブームが訪れ、一気に認知度がアップ。

以来、世界有数の総合アウトドアメーカーとして知られるようになり、コールマン製のランタンはキャンパーの定番でありシンボルとなった。

さて、ここまで読んでお分かりの通り、コールマンが信頼され続けるのは、長い歴史と時流を掴むセンスのおかげ。幅広い層から支持されるワールドワイドな名ブランドの逸品。ぜひ手に取ってほしいものだ。

次回はそんなコールマンの代表的なランタン「ワンマントルランタン286A」について、メンテナンスとより良い使い方について山中さんの解説の元、掘り下げていこう。


平安名栄一=撮影(インタビュー写真)※資料写真はコールマン提供 金井幸男=取材・文

# Camp Gear Note# アウトドア# ギア# コールマン# ランプ
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