働く男の夏対策 Vol.3
2019.07.27
LIFE STYLE

働く40代へ。汗ばむ”人生の正午”は、人間関係にも熱中症対策を

働く男の夏対策●働これからの季節、働く男にとって強敵なのが、毎日上昇していく不快指数。体のジメジメも、ときには人間関係のジメジメも御免被りたい貴方のために、夏の仕事をサラサラにするアレコレを紹介する。

もうキャリアも立場もある40代の会社員には、働き方や人間関係にも暑さ対策が重要である。

理解し合うのが難しい若手に、残り時間が見えてきた会社員生活、そしてそれぞれの道を行く同期や元同期たち。

40代が踏み外しやすい、仕事と人生のよくある落とし穴。その傾向と対策を、人と働き方のプロフェッショナルである曽和利光氏に伺った。

「人生の午後」にさしかかって

その昔、心理学者カール・グスタフ・ユングは40歳前後の時期を「人生の正午」と呼んだそうです。ひとりの人生を一日の太陽の運行になぞらえて、人生を「少年」「青年前期」「中年」「老年」という4つの特徴ある時期に分けました。

40代(私もです)はまさに「人生の正午」を過ぎて午後にさしかかった中年です。ユングは特にこの中年期を最大の危機を迎える時期と考えていました。

というのも、午前と午後では太陽が昇るのから沈むほうへ、正反対に向かう「人生大反転」の時期だからです。

「終わりの始まり」を予感する時期

40歳を越えると「いつまでもこれまでのようにはいかない」ことを感じるようになります。まず、身体的、精神的な衰えが生じてくることがひとつのきっかけでしょう。私も40歳を境にめっきり酒量が減りました。健康診断もオールAとはならなくなります。

もっとシリアスな話をすれば、年齢の近い人が亡くなることが珍しくなくなります。「人生は有限」「自分は死すべき存在」ということを肌身で実感します。

これからは人生を徐々に手仕舞いしなければいけないという「終わりの始まり」を予感する時期だとも言えましょう。

組織においても「午後感」がひしひしと

また、会社など自分が所属する組織においても「午後感」が出てきます。社会的成功を目指してさまざまな犠牲を払いながら邁進してきたのに、出世競争もある程度結果が見えてきて、焦りが出てきます。優雅なアフタヌーンティーの雰囲気ではなく、日が陰ってきて空がどんより曇り始め、ジメジメしてくる雰囲気です。

自分の人生の「午前中」に頑張ってきたことを意味あるものにしたい、逆に言えば、これまでの頑張りは無意味だったのではないかという焦燥感からの汗が湿り気を生じさせるのです。虚無感ほど人を苛むものはありません。さて、このような我々40代は一体どうすれば良いのでしょうか。

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対策その1
「人と比べることを止める」

焦燥感や虚無感の大抵の原因は他人との比較です。特に自分が捨ててきたものを実現している人を見ると「これで良かったのか」という想いが募ります。真面目に生きてきた人は遊び人に、独身貴族は所帯持ちに、仕事中毒の人は趣味人に。

その人たちに激しい怒りや嫉妬の感情すら覚えることでしょう。もちろんそれは不合理な感情ですから表現もできず、内に抱えたまま悶々と日々を過ごすことになります。こんな不健康なことはありません。まずはそういう人と自分を比べることをできるだけ止めてみる、見ないようにしてみてください。


対策その2
「捨てたものと向き合う」

そうは言っても、そういう人が職場の上司やお客様などであれば、顔を合わさないわけにもいきません。そこで次にお勧めするのは、どうせ見なければならないなら、ちゃんと対峙してみることです。

真面目一辺倒で暮らしてきた人なら遊び人に教えを乞うて、夜の街での遊びを体験してみる。別にはまる必要はありません。食わず嫌いをせず、今さらどうせと言わずに、一度やってみるだけでいいのです。

もともと持っていない人は持てる人に怒りや羨望を抱いても、自分からそれを捨てた人はそんな気持ちにはなりません。一度やってみて「なんだこんなものか」と思えたらしめたものです。再び元の自分に戻ったとしても、変な嫉妬に苛まれることはなく、徐々に気持ちは軽やかになるでしょう。


対策その3
「人を育てることに情熱を注いでみる」

それでも邪念が消えない方は、自然にかわいいと思える後輩や部下を見つけて、その人を育てることに一生懸命になってはどうでしょうか。アイデンティティの提唱者E.H.エリクソンによれば、我々世代における発達課題を“Generativity”(「世代性」「生殖性」と訳される造語)であるとしました。

要は、自分ばかりに目を向ける自意識過剰な状態から逃れ、もっと次の世代を育てていくことに関心を向けていくということです。自分だけが自分だと思っていれば、待っているのは死、終結だから焦るのです。

しかし、後進に目を向けてそこに自己同一化する(後進の喜びを自分の喜びとする)ことができれば、人は永遠の命を得るような気持ちにすらなれ、心は落ち着きを取り戻すのではないでしょうか。


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「彼らも苦しいのだ」とわかれば嫉妬は消える

「彼らも苦しいのだ」。こんな風に考えれば、出世競争に勝ち抜いて、自分より遥か先に見えていた彼や彼女の苦悩も見えてきませんか。理性の目を持ってすれば、どこまで登っても上には上がいて終わりがない競争であることがわかっていながら、半ば強迫的に「午前」の人たちと同じような感覚でいつまでも「自分、自分」で生きていくこともまた地獄であるということを。

結局、我々は最終的には同じ穴に入っていくのです。どこかで次の世代にバトンタッチをしていかなくてはならないのです。それを理解して、おおらかな気持ちになって、後進の若者たちに優しくなれると、自分自身が生きやすくなっていくのではないかと思います。

ギリギリまで煩悩にまみれて苦しみながら生きる

などと言いながら、私自身は残念ながら悟りを開けているわけではありません。むしろ煩悩から解脱するには程遠く、上述したことはまさに今取り組んでいる最中のことです。

40代というのはある意味中途半端で「午後になりきれない」から苦しいのでしょう。ですから、読者の皆様にも早く悟りを開いてほしいなどとは思っていませんし、言う資格もありません。むしろ、ギリギリまで苦しみながら頑張って、できるところまで行ってみませんかと思います。

ただ、真っ暗闇の中で頑張るのは苦しすぎるので、いざとなれば本稿で述べてきたような「前向きに降りる」道もあるのだと考えることが心のセーフティネットになればと願っています。やるだけやったら、ダメでも涼やかに生きられるのではないかと。

曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

# 40代# ビジネス# 上司# 人間関係# 部下
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