2019.07.13
LIFE STYLE

汚れを“味”に変えるプロの技。ワークブーツの基本メンテとキズ対処法

連載「愛する靴の愛し方」
お気に入りを履き潰しては買い替えて……なんてもったいない! 愛する一足を守る術をフットウェア・ラバーたちに教えてもらった。

履き続けることで足に馴染み、風合いの変化も楽しめるブーツ。自分だけの一足に“育てる”感覚が強いことから、数あるファッションアイテムのなかでも、とくに男心をくすぐるアイテムだ。

それゆえ、ケアにもついつい力が入りがち。オイルを入れすぎてクタクタにしてしまったり、大切に寝かせておいてカビさせてしまったりと、ブーツのメンテナンスには悩みも尽きない。

そこで、基本のメンテナンスとキズの対処法について、靴修理の専門店「BRASS(ブラス)」代表の松浦稔さん(42歳)に教えてもらった。

松浦さん

目指すスタイルによってメンテナンス方法は大きく異なる

「そもそもブーツにとって『キズ=悪』というわけではありません。例えば新品を100点の状態だとすると、履き込むほどにシワや色の濃淡が深まり、120点、200点と点数が上がっていく感覚が醍醐味。キズを活かすのか、キレイに整えるのか。何をかっこいいと捉えるかで、メンテナンスの方法は変わるんです」。

革のエイジングを楽しむためにも、勿論、履き方や頻度にもよるが、日常的にブラッシングをしっかりやる事を基本として、しっかりとしたケアは1〜3カ月に一度を目安と考えて良いのだとか。

靴用クリーム

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ブーツにおける基本のメンテナンス方法とは?

メンテナンスグッズ

奥深いメンテナンスの世界。まずは基本のメンテナンスをしっかり押さえておこう。用意するものは以下のとおり。ちなみに写真はすべてブーツケア用品専業ブランド「The Mail’s Shoe Care Co.」のアイテムだ。

<ケアで使用するアイテム>
・クリーナー
・クリーム
・ワックス
・白馬毛のブラシ
・ヤギ毛のブラシ

ここでアレッ? と思った人はいないだろうか。そう、ブーツケアの定番と言われる「オイル」が存在しないのである。

「オイルは、浸透性がとても高いアイテム。革を柔らかくするには有効なので、革が硬いと感じたら塗ってあげますが、レギュラーのメンテナンスでは必要ないと思います。塗りすぎたり、頻繁に使うと革が柔らかくなりすぎて、型崩れを起こすことがあるんです。塗っても、半年に1度のペースで十分ですよ」。

これは意外な盲点だろう。さて、それではメンテナンス方法を解説していこう。


シューツリーを入れて、硬めの馬毛でブラッシング

シューツリーを入れる
まずはシューレースを外し、シューツリーを入れる。
ブラッシング
ブラシで汚れを取るようにブラッシング。

作業がしやすいようにシューレースを外し、シューツリーを入れる。コシのある馬毛でブーツ全体をブラッシングし、汚れを落としてゆく。ヴァンプ(つま先)のシワやタン、ウェルトも念入りに行うこと。

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クリーナーで汚れ落としを。オイルを入れるならこのタイミング

クリーナー
手にウエスを巻き、クリーナーを染み込ませる。
クリーナー
丹念にクリーナーで拭いていく。

「次に、Tシャツなどの古布にクリーナーを少量取り、汚れを落とします。クリーナーは一度にたくさん取らずに、少量を数回に分けて、全体に伸ばしましょう」。

一般的な靴用クリーナーは強い溶剤を使ったものが多く、やりすぎるとレザーが乾燥してしまう場合があるので注意が必要だという。

「もしオイルを入れるなら、クリーナーで汚れを落としたタイミングがベストです。このあとクリームを塗布するのですが、含有しているワックスが膜を作り、オイルが浸透しにくくなってしまいます」。


あえて別の色で味を出すのも◎。色付きクリームを入れる

色付きクリーム
色付きクリームを指先に付け、塗り込んでいく。
ブラッシング
そして、馴染ませるようにブラッシング。

「クリーナーには革を乾燥させてしまう副作用があります。革を保湿するために、クリームを塗りましょう。これも少量を数回に分けて、シワに沿ってまんべんなく塗り込んでください。その後、クリームを馴染ませるため、白馬毛でブラッシング。ここまででもアッパーにツヤが出てきます!」。

なお、ブーツと色味を合わせてブラックのクリームを使用したが、色味を深めるためには、あえて異なる色のクリームを用いるなど、色を合わせない方法もある。

本体より薄い色を使うのが基本だが、より遊びを入れたいなら、本体よりも濃い色のクリームを使うのもいい。ただし、シミを防ぐために素早くささっと塗り込むのがポイント。

右はブラウンのレザーに対してブラックのクリームを塗りこんだもの。左の新品と比べて、深い味わいが出ている。


最後にワックス仕上げ。柔らかいブラシで磨けば完成!

ワックスの塗り込み
クリーム同様、ワックスも薄く広がるように塗り込んでいく。
ブラッシング
柔らかいブラシで仕上げが完成。

「最後は、ワックスで仕上げを。塗りすぎないよう、ワックスも全体に薄く伸ばしてください。そして、柔らかいヤギ毛のブラシで表面をなめらかに整えれば、基本のメンテナンスは終了です」。

ケア前、ケア後
メンテナンス前後のブーツを並べると、一目瞭然。右側は全体的にツヤが出て、色味が際立って見える。
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えぐれてしまったキズは、補色でカバーを

ブーツの傷

次は、悩めるキズ補修について。ブーツのつま先部分は、注意をしていてもキズつきがち。コンクリートにぶつけて完全にえぐれてしまったこんなキズは、どう対処したらいいのだろうか?

ブーツの傷補正
ブラックのクリームを塗りこんだ状態。

「ブラックのブーツの場合、小さなキズでも目立ちますよね。こういったキズは、ブーツと同じ色のクリームを塗り込んであげるだけで効果的。革らしさは残しつつ、キズが目立たなくなりますよ」。

ブーツの傷補正

ただし、キズでヘコミが酷いときには、クリームだけではどうにもならないこともある。そんなときはプロの技を……。ということで、ブラスの職人さんにお願いしたところ、ここまでキレイに!ヤスリで表面をならしてもらった結果である。キズの大きさや加工にもよるが、ブラスでは2000〜3000円で対応可能とのこと。これはお願いしたくなる。

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スエードの汚れは、ヤスリで削り落とす

準備したアイテムは、スエード手入れ用のブラシ、紙やすり、防水スプレー、そしてワックスだ。

最後にブーツの定番素材・スエードのメンテナンスを簡単に紹介しよう。毛足のあるスエードは汚れがつきやすく、自分でクリーニングをするには厄介な素材だ。ドレスシューズよりも汚れやすいので、十分注意が必要になる。

スエードの手入れ
まずはスエード用の金ブラシで毛足を起こして汚れを掻き出す。
紙やすり
続いて、紙やすりで細かい汚れをとっていく。

「しっかりとしたケアのタイミングは、毛足が潰れて黒ずんでいたり、素材が硬くなったら。まずはスエード用の金ブラシで寝てしまった毛足を起こします。80番手くらいの紙ヤスリで削ると、だいたいの汚れをキレイに落とすことができますよ」。

細かい目の紙ヤスリで削るとスエード特有の凹凸が失われてしまう場合があるため、必ず80番手を目安に粗いヤスリを使用すること。

なお、このブーツはシャフト(筒の部分)の革がやや固かったため、ブーツの内側からオイルを入れた。スウェードはスムースレザーと異なり、表面から浸透しにくいため、オイルを入れる方法は工夫する必要があることを覚えておこう。

防水スプレー

「最後に、防水スプレーを少し離した距離からまんべんなく吹きかける。乾いたら、白馬毛でブラッシングをして終了です」。

スエードは天候に関係なく、定期的に防水スプレーをかけて汚れの付着を防止することが長持ちの秘訣だという。

愛情を持って履きこんだブーツと、ただ型崩れしたブーツでは、まったく印象は異なる。基本のメンテナンス方法を知ることが、理想的なブーツへの近道。キズや色ムラも愛しつつ、自分だけの一足へと育てていきたい。

[お話を聞いた人]
松浦 稔
1977年生まれ。電気系のエンジニアを経て、靴修理の世界に足を踏み入れた異例の経歴を持つ。5年間の修行後、2007年に靴修理・カスタム店「ブラス」をオープン。2012年に発表したオリジナルブランド「CLINCH(クリンチ)」のプロデュースも手掛けている。

ブラス
住所:東京都世田谷区代田5-8-12
電話番号:03-6413-1290
営業時間:12:00〜20:00
定休日:水・木
www.brass-tokyo.co.jp

小島マサヒロ=撮影 長浜優奈(EditReal)=取材・文

# キス# ブーツ# ブラス# 愛する靴の愛し方# 補正
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