「“なんもしない”が、自分にはいちばん向いていた」。
静かにそう呟いたのは、ツイッターを軸に活動する「
レンタルなんもしない人」35歳(以下、レンタルさん)。トレードマークの帽子を被り、話しかけると少し伏し目がちに淡々と回答する。
今の彼の生業は、“なんもしない”こと。詳しくは後述するが、本当に何もせずに、ただそこに居ることを仕事にしている。どれだけ変わった人物かと思いきや、レンタルさんは明るく穏やかで、受け答えの端々には優しさが滲んでいた。
ツイッターのフォロワーは現在17万人超え。当初はポツポツとこなしていた依頼も、今では断らざるをえないほど殺到している。
「毎日2、3件、多いときは4件ぐらいの依頼をこなしています。この1年で1000件以上は『なんもしなかった』ですね」。
おかしな話だが、レンタルさんの1日は「なんもしない予定」で埋まっているのだ。
「朝8時半ごろ家を出て、依頼者の指定する場所に行きます。日によって変動しますが、3つほどなんもしない依頼をこなして帰宅は10時前後。移動がやや大変だけど、基本的になんもしないし、仕事終わりに飲むビールの美味しさが初めてわかりました」。
なんもしない……けれど、充実している。
そして、なんもしないけれど、人々から必要とされている。
「なんもしない」とはどういうことなのか? また、「なんもしない」を職業にした彼は、何を思ってこの生き方を選んだのか。彼の心の裡に迫った。
2/2