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2019.05.20

ライフ

【前編】Amazonを辞めて始めたのは“どう考えても成り立たないビジネス”だった

>連載「37.5歳の人生スナップ」を読む
「実店舗でカセットテープを売る。誰がどう考えても成り立たないビジネスだと思いませんか」。
角田太朗さん
穏やかな声音で角田太朗さん(49歳)はそう言った。
中目黒からのんびり歩くこと10分程だろうか。閑静な住宅街のなかに「Waltz(ワルツ)」はある。倉庫のような広い間口。その扉を開けると店内にはカセットテープがぎっしりと、丁寧に整然と、並べられていた。
カセットテープ
オーナーである角田さんはここ中目黒の一角で、おそらく世界にひとつだけのカセットテープ専門店を営んでいる。店内には、早朝ということもあり柔らかな光が差し込み、カセットひとつひとつにつけられた角田さんお手製のPOPを輝かせていた。膨大な数のカセットに囲まれながらも、まったく窮屈さを感じない開放的な空間だ。
角田太朗さん
「店内にあるカセットテープは6000本くらい。ストックはその何倍もあって、倉庫に収納してあります」(角田さん、以下同)。
グッチにインスピレーションを与えた場所「グッチ プレイス」として日本初の認定を受けたワルツ。アナログを愛する人々の聖地としてグッチとの限定アイテムも誕生するなど、その存在感を高めている。
「グッチ プレイスに選ばれているのは歴史的建造物ばかり。本当にうちでいいのかな?って(笑)。中目黒の片隅でやってるような店を見つけたグッチさんの嗅覚にも驚きました」。
2015年8月にオープンしたワルツ。角田さんの前職はなんと、ネットショップ最大手のAmazon(アマゾン)だ。
「辞めるときはもったいないとか、信じられないとか、いろいろ言われましたね。今の時代にこんなバカなことを始めようとする人はいないですから」。
そう言いながらも、角田さんの表情には余裕が浮かぶ。アマゾンを辞めて、“成り立たないビジネス”を成り立たせるまでのストーリーを追った。


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