37.5歳の人生スナップ Vol.55
2019.04.30
LIFE STYLE

住宅リノベーター・原直樹(48)が体現する、自然体で仕事を楽しむ生き方【後編】

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中目黒にあるリノベーション専門の建築会社「フィールドガレージ」。代表を務める原直樹さん(48歳)は、不動産、設計、施工、オーダー家具製作、DIYスタジオなど、事業を複数展開しつつも自分のペースを崩さない働き方を実現している。

原直樹

原さんの仕事への姿勢は、まさに自然体だ。口コミで事業を拡大し、独立しても自分のペースを保って働き続けている。その根底にはものづくりへの揺るぎない自信が感じられた。

「最初は何のツテもないから、新規のお客さんを開拓するためにホームページだけは急いで作りました。まずは実績と思って、来る仕事は小さいことでもなんでもやって、とにかく目の前の仕事に一生懸命に。今、物件探しも設計も家具も……ってやってるのも、もともとはお客さんから頼まれたことを広げていっただけなんです」。

フィールドガレージ
フィールドガレージは中目黒駅から徒歩3分ほど、商店街から少し入った住宅街の一角にある小さな設計事務所だ。

2004年、33歳での独立以来、リノベーションを軸に事業を拡大。そのなかでリノベーション前提に物件購入を検討しているが、どんな家を買えばいいかわからないと物件探しの相談をされるようになり、2013年から不動産仲介業も請け負うようになった。事業拡大なんて案外そんな日々の仕事の先に転がっているのかもしれない。

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面倒くさい仕事だから、夢中になれる

そうやって、流れのままに独立してはや15年。40代に入って、仕事にも生活にもぐっと、ゆとりが持てるようになったという。

原直樹

「最初思い描いていた働き方にどんどん近づいている感覚はあります。理想の住まいづくりを提案するっていうのは設計や工事だけには留まらないので、お客さんとの関わり方も増えていくのが楽しいですね」。

住む人の思いが詰まった自由度の高い家づくりを目指し、原さんは一つひとつの仕事と丁寧に向き合っている。家づくりの際は、お客さんが納得いくまでじっくりヒアリングを重ね、主体的に参加してもらう。手をかければかけるほど家に愛着がわくと原さんは考える。

「家って、ただ寝て、食事するだけの場所じゃない。ライフスタイルの根幹になるものじゃないですか。だから家を自由にデザインすることは生き方にも繋がることだと思っています」。

自身の住まいも、自由に手を加えたリノベーションハウスだ。

原さんのご自宅
原さんの自宅のリビング。

「昔、賃貸に住んでいて自由に家をいじれないことがすごくストレスだったんですよ。とにかくいじり倒したくて(笑)。今、やっているDIYスタジオの貸し出しも含めて、そもそも出発点はすべて自分がやりたいことをやっているだけなんですよね」。

そんな原さんの仕事は効率性とは無縁だという。同じようなものを作っていけば量産はできるが、原さんの目指す生き方は効率や生産性とは別のところにあるようだ。

「最初からラクなほうを……なんて考えてないですね。だいたい気づいたら大変なほうを選んでいる(笑)。でももう答えが決まってるパズルで遊んでも、自分が面白くないじゃないですか。面倒で複雑だから、夢中になるわけで。DIYだって、既製品を買ったほうがラクだけど、時間をかけて作った家具が生活のなかにあるほうが面白いって思う」。

40代に突入してもモチベーションを保ち続けられる秘訣は、ラクなほうに流されないから。面倒くささを楽しめるからこそ、今でも原さんは目の前の仕事に夢中になっている。

「好きなことだからできているだけですよ。嫌なことからは逃げ続けてますから。ただ、仕事は好きだけど縛られたくはないですね。1日6時間労働にできたら一番いいんですけど……ヨガも行きたいし(笑)」。

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住まいに人の評価なんていらない

そもそも、住まいに他人からの評価なんていらない。そう原さんは考えている。画一的な住まいが多い日本だが、今後、原さんのような個性を尊重した家づくりが新たな潮流を作っていくのかもしれない。

「住んでて面白いと思える家に帰りたいじゃないですか。家を建てる場所や広さを気にするならデザインだって、もっとこだわってもいいはず。極端に言えばどれだけ小さい家でも、住んでて心地良くて自分らしくいられる空間であれば僕はいいと思うんですよね」。

そのアイデアのひとつが、【前編】の冒頭で紹介した「タイニーアパートメントプロジェクト」だ。ありきたりな6畳ワンルームは原さんの手によって、まるでおしゃれな海外のアパートのように様変わり。原さんの愛情を感じられる空間だ。

「家が完成しただけでは暮らしって豊かにならないんですよ。どんな立派な家や設備でも使う時間や愛情がなければ、意味ないでしょう。だから僕は時間をかけても、住む人の理想の生活に根ざした愛情の持てる家づくりをしていきたいんです」。

「ライフスタイル・リノベーション」。無理せず自然体な、その生き方は、まさにライフスタイルを豊かにしていくという会社のコンセプトそのものだった。

藤野ゆり=取材・文 山田裕之=写真

# 37.5歳の人生スナップ# リノベーター# 住宅
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