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2019.03.06

ライフ

「ボルコム」が何よりも重要視する、 “SSS” という生き方とは?

1991年にカリフォルニアで産声を上げたボルコムは、スケートボード、スノーボード、サーフィンという“SSS(スリーエス)”カルチャーをサポートし続けているブランドだ。
もちろん“SSS”は単なる題目ではない。何せ役員を務めるこの男自ら、“SSS”を体現しているのだから。
ボルコムとは?
1991年、米カリフォルニア州ニューポートビーチにて、リチャード・ウールコットとタッカー・ホールの2人により設立。ブランドのコンセプトは“TRUE TO THIS(=真剣に打ち込むこと)”。サーファー、スケーター、スノーボーダーのほか、ミュージシャンやアーティストといったクリエイターたちをサポートし、メンズ、レディス、キッズのアパレルをトータルでラインナップする。現在では世界115カ国で商品を展開する企業として大きな成長を遂げている。

「スケート、スノーボード、サーフィンは“生き方”だ」

「ボルコム」チーフ・マーケティング・オフィサー ライアン・イメガート
チーフ・マーケティング・オフィサー ライアン・イメガート 氏 1976年、米カリフォルニア州生まれ。元プロスノーボーダー。’94年にボルコムに入社し、レコードレーベル「ボルコムエンターテインメント」を設立。その後25年にわたりマーケティング部門を率いて業績の向上に尽力。2018年より現職。ボルコムでデザイナーを務める妻と5人の子供を持つ父親であり、自身のロックバンド「theLINE」ではボーカル/ギターを担当。休日にはサーフィン、スケートボードも楽しむという、まさに“SSS”を実践する人物だ。
ボルコムのマーケティング部門を率いるライアン・イメガート氏は、元プロスノーボーダーである。
「ボルコムが最初にスポンサードしたスノーボーダーは、実は私です。でもそのずっと前、14歳のときに、創業者であるリチャード・ウールコットとタッカー・ホールに出会っていました」。
創業者の2人がボルコムをスタートする直前、1990年のことである。
「彼らはクリエイティブで、楽しくて、ワイルドで、謙虚で……そう、驚くべき人たちでした。ティーンだった私は2人が持つスピリットに、すっかり夢中になってしまったんです」。
湾岸戦争が勃発し、アメリカ社会に不安と混乱が生じ始めていた’91年。「体制に反抗する若者たち」を象徴するスケートボード、スノーボード、サーフィンという“SSS(スリーエス)”のカルチャーに根差したファッションブランド、ボルコムが誕生した。
「“SSS”は単なるスポーツ以上のものだと思っています」と、イメガート氏は力強く語る。「それは生き方であり、ライダーたちは自身の全存在を捧げます。上達するには、憑かれたようにひとつの技を何度も繰り返さなければなりません。たった一度、恍惚的なライドを経験するためだけに」。
ボルコムが会社としてスタートしてからも、“SSS”を楽しむマインドは業務以上に優先された。
「創業者のリチャードとタッカーは、とにかく楽しむことに貪欲でした。いい波が来たとか、山に新雪が積もったと聞くと、すべてを放り出して一緒に行こうと社員を誘いました。そんな彼らの個人的信念や生き方がそのまま、ボルコムという会社のカルチャーになっているのです」。
当初は服作りの知識がゼロだったため、商品はTシャツとハットだけ。初年度の売り上げはわずか2600ドルだった。だが「僕らの世代が変革を起こすときがきた」というボルコムの信念に共感した若者たちの間で、一躍話題に。服作りに情熱を注ぐデザイナーや優秀なセールススタッフが加わると、徐々に人気が高まっていった。
「新しいアイテムが続々と増え、’96年には『ウインターコート』というスノーボードウェアのコレクションをリリース。もちろん私たち社員は皆それを着て雪山を楽しみました。実際に着用して課題を見つけては、クリアしていく作業を進めていったのです」。
2003年には、パンツとつなげて雪の浸入を防ぐ「ジップテック」システムを搭載したスノーボード用ジャケットを開発。翌年「ジップテック」は特許を取得し、今日最も人気のある製品のひとつになっている。そしてもうひとつのボルコムの柱であるサーフィンのためのギアとしては、’08年にサポートチーム用のウエットスーツを製作している。
「その後、’16年の秋に日本だけで一般向けに発売。そして昨年から、日本以外の国でも販売を開始しています」。
今やワールドワイドなブランドへと成長を遂げたボルコム。だが根底にあるモノ作りの哲学は、カリフォルニアの小さな街でTシャツやステッカーを作っていた創業当時と何も変わらない。
「世界中のチームライダーやアンバサダーたちの協力と、責任感ある従業員の努力のもと、より良いプロダクトを作り続けていきたい。そして服作りはもちろん、競技大会、音楽やアートイベントにも積極的に取り組んでいきます。“SSS”をひたむきに愛する、すべての人たちのために」。
 
稲垣 收=インタビュー・文 加瀬友重=編集


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