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「負けは負け、ムダはムダ」。43歳芸人・山田ルイ53世の潔い生き方【後編】

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>連載「37.5歳の人生スナップ」を読む
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山田ルイ53世

「僕は引きこもっていた6年間を完全に無駄と思っているので、常に年齢から6を引いた歳だと心の中でサバ読んで生きています。つまり、いま37歳ってことで連載タイトルにピッタリあてはまる計算ですね(笑)」。

ひきこもっていた20歳までの6年間を山田ルイ53世はポジティブに捉えようとはせず、無駄だった、と言い切る。そこにはある種の諦観があった。

「あの6年間があったからこそ今の自分がある……とは思わない。ムダはムダ。負けは負け。それ以上でもそれ以下でもないし、それでいい。『人生に無駄なことなんてない!』という考え方は、裏を返せば無駄があってはいけないということ。そんな風潮自体がしんどいというか、人を追い詰めることもあると思う」。

そんな「無駄だった」ひきこもり期間。脱出できたきっかけはなんだったのか?

「テレビで成人式のニュースを見たときですね。それまでは『人生取り返せる、まだ大丈夫』と自分を誤魔化してた。でも同級生が “大人”になっていく一方で、自分の時間は14歳から止まったまま。さすがに焦りました」。

艶やかな晴れ着をまとった同級生たちの姿は、失った時間とこれからの未来という現実を突きつけた。一念発起した彼は、大検(高卒認定試験)を取得。さらにセンター試験を受け、地方の国立大学に入学を果たし、ひきこもりだった自分に別れを告げた。


大学入学後、お笑い芸人を目指して上京

人生が動き出すのは、いつもちょっとした勢いひとつだったりする。長年の悩みの種だった強迫神経症のような症状も彼は自力で治したという。

「別に何か読んだ訳でも教えてもらったわけでもないんだけど、自分が『やらなきゃやらなきゃ』と思っていたルーティーンたちを全部こう指でつくった輪っかの中に詰めて、それをフッと息で吹き飛ばすって言う……(笑)。人って書いて飲み込むみたいなものかな」。

独自の治療法によって長年縛られ続けていたルーティーンから解放され、大学にも入学した。さらに大学での出会いが、お笑い芸人への道を開くこととなる。

「大学で仲良くなった先輩に誘われて、伝手を頼って女子短大の学祭で漫才をやることになって……それがウケたことで勘違いしちゃった。正直、絶対に芸人として成功してやるという熱い思いで始めたわけではなくて人生でほかに特にやることがなかったんです。自分の理想の人生からはもうすでに遠く離れ過ぎていて、人生が余ってしまったな……という感覚がずっとあったので」。

芸人になるという決意も彼からすれば、手持ち無沙汰になってしまった人生の番外編。神童だった子供時代には、予想だにしない選択肢だった。

「もう自分にはそれぐらいしかないな、ただただ流されたという感じ」。

大学を中退し、東京のお笑い養成所に通うために上京したのは21歳の時だ。引きこもり終了からわずか1年……人生はめまぐるしく変化していたが、男爵自身の生活が向上したわけではなかった。

「上京して大塚の家賃1万5000円の四畳半アパートで一人暮らしをしていたんですけど、お金がなくて電車に乗れないから養成所のある、赤坂まで歩いて通っていて……往復4時間ぐらいだったかな? 大家さんが飼ってたザリガニを茹でて食べたりもした。毎日胸元に『ARMY』って書かれた同じTシャツを着てたから、養成所でのあだ名はアーミーでした(笑)」。

若者は大抵“自分だけはすぐ売れる”という幻想を抱き、お笑いの世界に入ってくる、と彼は言う。しかし現実は甘くない。彼自身も芸人としての芽が出ないまま300万円以上の借金を抱え、日払いのバイトで食いつなぐ生活を余儀なくされた。

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増田茂樹
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