いいモノとのいい出合いが待つ店はどこにある? ググれば数万の検索結果が出てくるが、「選べないし時間もないし」というのが大人の本音。で、頼りになるのはやっぱり生の声。ファッションのプロに聞きました。「あなたの好きな店ってどこですか?」。
アンティークの雑貨や家具において、ガラクタとオタカラは表裏一体。同じように“古いもの”を置いていても、人気の店とそうでない店があるのは、店主の審美眼によるところだ。
ファッションでは古着からスーツまでを網羅し、気鋭のダウンブランドのPRなどを手掛ける宮本哲明さんには「一度入ると2時間は出てこれない」という贔屓のアンティークショップがあるという。それは東京・立川にある「GADGET MODE(ガジェットモード)」。
ガラクタとオタカラの違いって何? それを探るべく本人に取材をしてもらったら、この日は4時間も出てこられなかった。
行った人宮本哲明●1983年生まれ。ユナイテッドアローズにて販売とPR業務を11年務め、現在はファッションやライフスタイル全般を扱う「ボールドマン」でPRディレクターとして活動。ボールドマンが手掛ける
週末のみオープンする「ブツヨク ストア」では販売も行う。
この店、信用できる!と思ったある出来事
ガジェットモード店主、波多野保さんとの出会いは今から数年前。昔からアンティークやヴィンテージが好きで、新たな店を開拓していたときに見つけたのだが、初めて行ったときの感動を今でも覚えている。商品ラインナップはもちろん、別の観点で感動した出来事がひとつ。
そのとき、気になった商品が2つあった。1つはアメリカ製の黄色いフレームのフォールディングテーブル。もうひとつは、プリムスのバーナー。
ともに欲しいけど金額面で購入を検討していたときに波多野さんがひと言。
「今度アンティークイベントがあるんだけど、そこに出店する知り合いの店ならもう少し安く販売されるかも。聞いてみましょうか?」。
一瞬「え?」と戸惑いながらも、「お願いします」と返答。
結局、プリムスはその日に購入。フォールディングテーブルは後日開催されたイベントで無事手に入れられた。目の前に同じ商品があるのに、検討中の客のニーズに寄り添った提案をしてくれるなんて!
その接客に感動し、それ以降、ガジェットモードと波多野さんのファンに。ただ“古いモノ”の目利きであるだけでなく、店主の魅力もあって人は集まるのだ。
店に入ると、ワクワクはニヤニヤに変わる
趣きのある古い建物の一角にガジェットモードはある。見た瞬間「ここだ!」とわかる外観。ショーウィンドウに並んだアイテムを見ているだけでワクワクは加速する。ちなみにワクワクは、家を出発したときから始まるので、この時点ではかなりの大きさに成長している(笑)。
たまらず店内に入るや“ガジェット”の量と色に圧倒される。この時点でワクワクはニヤニヤに変わり、脳内はアドレナリン放出状態。
それでは、ガジェットモードを構成するキーワードごとに物色を始めよう。
■アウトドア現行品にはない味わいを楽しめる1940〜80年代のアウトドアグッズの数々。テーブル、チェア、ランタン、キッチンウェアにテントまで。もちろん、どれも今も現役。
中央のバーラーのクッカーストーブはデッドストックも。アウトドアシーンのみならず自宅でも使える。
食器類も豊富に揃う。中央の棚はキャンプキッチン。黄色と黒の配色がいい。
■ヴィンテージ・タッパーウェア1946年、アメリカで世界初のプラスティック製密容器として考案され、今も世界中で使用されているタッパーウェア社の保存容器はすべてデッドストック! 現行品にはない色やデザイン、日本未入荷品など多彩なラインナップ。どれも欲しくて絶対に悩む。ちなみに、日本で初めてヴィンテージ・タッパーウェアを紹介したのは波多野さんである。
■UKスタイルアンティークとまではいかない、1940〜70年代までのイギリスのインテリアや生活雑貨。アメリカとは少し違う、小粋でおしゃれな家具や現在でも十分に使用することが出来る日常雑貨が所狭しと並ぶ。
■ライトバルブ・マニアガジェットモード・オリジナルのエジソン型LEDバルブ。職人によって吹きガラスで作られたそれらはまるで100年前の電球と見間違えるほどのクオリティ。これがLEDだなんて信じられない!
形もさまざま。LEDで寿命も長く電気代の節約にも。なによりデザインとあたたかみある明かりがいい。
これらが、宮本さんご贔屓の散財ジャンクショップの正体。次回は、この日実際にゲットしたアイテムと、気になったものをズラッと紹介していこう。
宮本哲明=取材・文