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2018.12.23

あそぶ

一杯がまるで交響曲。85年愛される丸福珈琲店のレジ横ブレンド

連載「レジ横コーヒーのおいしいヒミツ」Vol.6
お目当てのドリンクをレジで注文、カウンターで受け取る。コーヒーショップのよくある光景。でもちょっと待った。せっかくなら、レジ横に鎮座している豆にも目を向けてみよう。そこにあるのは、各ショップが考えた“ベストなコーヒー豆”へのアプローチなのだから。
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関西のコーヒー文化のルーツとも言われる、老舗の喫茶店を知っているだろうか。創業85年の歴史を誇る「丸福珈琲店」だ。創業者の生み出した独自の味を守り続け、なかには親子3代にわたって足繁く通う客もいる。今回は、そんな丸福珈琲店銀座喫茶室の荒川さんに、時代を超えて愛されてきたレジ横ブレンド豆を紹介してもらった。

濃淡と強弱をつけ、奥深い一杯に。独自の焙煎方法の奏でるハーモニー
丸福珈琲店の豆の特徴は、深煎りによる重厚な味わい。しかし、ただの深煎りとはひと味違う。コーヒーにコクと深みを与える、独自の焙煎方法を採用している。
「私たちのブレンドは、さまざまな豆をまとめて焙煎するのではなく、いくつかのチームに分けて焙煎します。たとえば7種類の豆をブレンドするとしたら、複数のチームをつくり、Aチームは5種類の豆、Bチームは6種類の豆を焙煎する。各チームは豆の種類だけでなく分量、焙煎度合いなども微妙に変えて、それらを最終的にひとつのブレンドとして配合します。こうして味わいに濃淡や強弱をつけ、ハーモニーを生み出しています」。
工程をいくつにも切り分けることで、グラデーションのある一杯に仕上げる。それはまるで、さまざまな奏者の集まる「オーケストラのようなコーヒー」だと荒川さんは言う。
それだけではない。こだわりの焙煎の裏には、職人の貢献も光る。
「豆の焙煎は、職人が一粒ずつ目視で確認しながら行います。釜に張り付き、火の爆ぜるパチパチという音さえも頼りにしながら、絶妙な瞬間に豆を引き出す。私たちの豆はチョコレートのように真っ黒になるため、焼き加減を見極めるのは簡単ではありません。機械にはできない、職人の勘と経験のなせる技です」。
こうした独自の焙煎方法は、コーヒーに関する資料もノウハウもなかった85年以上前、創業者自ら開発したもの。丸福珈琲店は、その歴史を今もなお守り続けている。


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