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2018.11.28

ライフ

平山祐介の推薦図書⑧買い物の仕方で幸福度も変わる『僕のマーチン君』

オーシャンズゆかりのモデルたちはどんな余暇を過ごしてる? 彼らの普段見えない部分を取材する企画の一人目は、俳優としても引っ張りだこの平山祐介さん。“本の虫”としても知られる彼に聞いた、オーシャンズ読者が絶対にハマる推薦図書とは?
実は平山祐介さん、その洗練された外見からは想像がつかないが、この時代には珍しいほどのアナログ人間。ネットショッピングはほとんどせず、大量の本もすべて店頭で購入したものだとか。
そんなユースケさんが「買い物の仕方に共感する」として紹介したのは、田村十七男(となお)のノンフィクション作品『僕のマーチン君』。この本で綴られている作者の赤裸々な思いは、オーシャンズ世代ならきっと共感できるはずだ。

『僕のマーチン君』
田村十七男・著/枻出版社
憧れのギター“マーチン”を手に入れるため40歳の男が奮起するノンフィクション。米国のマーチン本社を見学するなど、内容盛りだくさん。心温まる、爆笑必至のドタバタ顛末記。
──筆者の田村十七男さん、執筆時は40代でまさにオーシャンズ世代ですね。
平山「作者の十七男さんはギターが好きで、最高峰の“マーチン”っていう憧れのギターを買うまでの話が主軸になっているんですけど、その肉付けとして、自分自身の生き方や考え方、音楽観が書かれています。
不器用な性格だから、自分なんかがマーチンを買ってもいいものかと悩んでいて、その気持ちを如実に表している表現があります。(本をめくって)『好きな女は抱けても憧れの人には手を出せない。憧れの人が目の前で裸になっても「服を着てお願い!」と叫んじゃう感じ、分かりますか?』っていう。面白い(笑)」。
──なんかわかる気がします(笑)。
平山「お金を出せばマーチンなんて買えるじゃん、って話じゃないんですよ。ずっと楽器屋の奥にある存在なんだけど、ある日、友達が『ギターを買いたいからついてきて』っていうので同行したら、その友達はマーチンの10万単位の安いラインをぽんっと買っちゃうんですね」。
──おぉっ……(笑)。
平山「まずそれで、十七男さんのマーチンへの壁が壊れるんですが、その後、さらに重要な分岐点に直面する。それがお父さんの“死”です。長くは書かれていませんが、そのときの思いを『ここまで打ちのめされるとは思わなかった』と綴り、『背骨を鷲づかみにされた挙句に木に縛り付けられて、その場からどこにも動けなくなる感じ』だと表現しています。
そして、父の死でもっとも深刻に考えたのが『人生の残り時間』だったと。彼のお父さんは70代で亡くなられるんだけど、そのとき自分はすでに40歳になっていて、人生の折り返し地点を回ってることに気付く。そこで考えたんだそうです。『欲しい欲しい』っていつまでもマーチンに憧れてても、あっという間に死んじまうぞって」。
──オーシャンズ世代ならよくわかる感覚ですね。
平山「そうですね。自分と親との関係を改めて考えさせてくれました。僕の両親は健在ですけど。昔、会社員からモデルになろうとしたとき、進路にあたって父親と喧嘩になって家を出たことがありました。
今、自分が尊敬する人は誰かと聞かれたら迷わず自分の両親だと答えられるんだけど、当時は
良くも悪くも世間が見えていなかったというか、自分の世界だけで精一杯だったんですよね。まぁ、20代ですから(笑)。でも、十七男さんという身近な人が親御さんを亡くして、その赤裸々な悲しみを本に綴った。これを読んで、僕も親のありがたみや大切さを再認識させられた気がします」。


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