職場の20代がわからない Vol.26
2018.11.16
LIFE STYLE

職場の20代の「言葉遣い」が悪いと、取引先の偉い人に言われた

職場の20代がわからない Vol.26
30代~40代のビジネスパーソンは「個を活かしつつ、組織を強くする」というマネジメント課題に直面している。ときに先輩から梯子を外され、ときに同期から出し抜かれ、ときに経営陣の方針に戸惑わされる。しかし、最も自分の力不足を感じるのは、「後輩の育成」ではないでしょうか。20代の会社の若造に「もう辞めます」「やる気がでません」「僕らの世代とは違うんで」と言われてしまったときに、あなたならどうしますか。ものわかりのいい上司になりたいのに、なれない。そんなジレンマを解消するために、人材と組織のプロフェッショナルである曽和利光氏から「40代が20代と付き合うときの心得」を教えてもらいます。

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言葉は変わるもの

いろんな考え方の人がいると思いますが、私は、言葉は生き物であり、時代によってスタンダードはどんどん変わっていって良いと考えています。

誤って用いられた読み方や意味のほうが広く行き渡って、一般的になった言葉も多々ありますが、それを「言葉の劣化」とみるのではなく、「変化」と捉える。元々言葉はコミュニケーションの道具なわけで、そう考えると、多くの人に通じる言葉がその時代のスタンダード、と考えて良いのではないでしょうか。

極端な言い方ですが、一人称の多いことで有名な日本語は、時代によってどんどんそれが変化しています。昔は自分のことを「拙者」とか「小生」という人がいましたが、今では少数派でしょう。「私」と言う人を失礼だと思う人もいません。また、「さぼる」は日本語として定着していますが、元々はフランス語の「sabotage(サボタージュ)」から来ている言葉です。しかし、これも今では「若者言葉だ」「乱れている」と言う人はいません。

 

「悪い」のではなく「合っていない」

さて、このようなことを前提として主張したいのは、若手の言葉遣いを頭から「悪い」と決めつけないほうが良いのではないかということです。表題のように「言葉遣いが悪い」と偉い人から言われるのは、おそらくその偉い人に敬意を払った言葉遣いをしていないということなのでしょう。しかし、彼らは彼らの言語世界の中で、相手に対して敬意を払っているつもりかもしれません。

ただ、相手には通用していない、合っていない。通じなければ意味はないという考え方もありますが、コミュニケーションは発信側と受信側があり、どちらがどちらに合わせるべきかというのは、その時々によって違います。それを「あちらが正しくて、君たちは間違っている、悪い」としてしまっては、若者は納得いきません。「はい、わかりました」と一応返事だけはしても、最近の言葉の変化についていけない頭の固いオッサンの戯言と腹の中では思ったまま、溝は深まるばかりです。

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言葉を合わせろという傲慢さ

先日、某国の大統領が日本人記者の英語での質問に対して、「何を言っているのかわからない(I can’t understand you.)」と一笑に付して、「それは失礼ではないか」という声が多く上がりました。似たような議論ではないかと思います(逆に「英語力の低い記者のほうが問題だ」という意見もありましたが……)。

今や英語は世界語であり、英語を母語としない人も一生懸命勉強をして、英語を話そうとしています。それに対して英語が母語であるという圧倒的に優位な立場の人が歩み寄ることなく、「あなたの言葉はわからんな」と突き放す。なまっていようが、少々言葉遣いがおかしかろうが、表現方法よりもその内容が大事であり、注意深く聞けば意味がわかるなら、そうすれば良いのではないかということです。

我々オッサン世代は若い人よりは偉くなっていることも多い。そしてその立場から「俺たちの言葉に合わせろ」と言うのは少しばかり傲慢かもしれません。

 

言葉ではなく、メッセージを聞く

正直、オッサン世代である私も、若者言葉を聞いていて、つい腹が立つことはあります。ただ、後でよくよく考えてみると、敬語がない発言の意図は親近感の表れであったり、婉曲表現のないストレートなネガティブ発言は、怒らずに受け止めてくれるという信頼の証であったりという、別なメッセージ(伝えたい思い)が見えてきます。もし、表現方法だけで怒って注意をしていたら、それらのメッセージはどこかに消えてしまいます。

もちろん、メッセージ自体がダメなら注意すべきです。重要なのは、お世話になっている取引先の人を軽んじる思いを持っているのかどうかということです。「お客様に対して失礼な言葉遣いをしたらしいね」ではなく、「君はお客様に対してどんな風な思いを持っているのか」と聞くべきです。

そして、もしお客様を軽んじているなら、そのことを叱責すべきでしょう。もし、メッセージはおかしくなければ、そこはきちんと認めてあげて、ただ、相手に合わせた言葉遣いをしないと、せっかくの正しいメッセージが伝わらないよと諭してあげるべきでしょう。

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世界は単純化していくのだから

グローバル化が進展し、世の中がどんどん多様化する時代において、ハイコンテクストな社会、つまり多くの共通基盤を持った人で構成する社会や組織は徐々に少なくなります。ハイコンテクストな社会では、微細な言葉遣いや服装、振る舞いなどがメッセージを多分に含みます。例えば、ネクタイをして場に臨むことが「礼儀」を表すことになります。

しかし、ネクタイにそういう意味を感じる共通基盤のないローコンテクストな社会においては、暑い最中に汗をかきながらネクタイをしている姿を見て、「なぜ、あの人は暑いのに滑稽な姿をしているのだろう(バカだな)」と思うかもしれません。

そして、おそらく世界はどんどんそんなローコンテクストな世の中になっていきます。単純化していくのです。ファッションがどんどんドレスダウンしていくように、言葉においても細やかな表現よりも、ファクトとロジックと数字、言い方よりも中身だと、シンプル化していくのです。

この流れの中、いつまでもオッサン世代の言語コンテクストにこだわっていては、「瑣末(さまつ)なことにこだわり、本質を見ない人」という烙印を押されてしまうかもしれません。

曽和利光=文
株式会社 人材研究所(Talented People Laboratory Inc.)代表取締役社長
1995年 京都大学教育学部心理学科卒業後、株式会社リクルートに入社し人事部に配属。以後人事コンサルタント、人事部採用グループゼネラルマネジャーなどを経験。その後ライフネット生命保険株式会社、株式会社オープンハウスの人事部門責任者を経て、2011年に同社を設立。組織人事コンサルティング、採用アウトソーシング、人材紹介・ヘッドハンティング、組織開発など、採用を中核に企業全体の組織運営におけるコンサルティング業務を行っている。

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