2018.10.27
LIFE STYLE

ジャーナリスト・佐々木俊尚「軽井沢を、第2の拠点に選んだ理由」

連載「実現可能か!? 俺の週末・軽井沢ライフ」
’80〜’90Sに青春を過ごした男にとって、軽井沢は特別な場所である。かつて避暑地として一世を風靡した、緑深くも都会的なその土地に、憧れを抱かずにいられない。そんな場所に、拠点がつくれるとしたら……! 多拠点生活先に軽井沢を選んだ、ジャーナリストの佐々木俊尚さんにインタビュー。この土地を選んだ、そのこだわりを教えてもらった。

>後編「ジャーナリスト・佐々木俊尚『軽井沢がくれたのは、“あり余る素敵な時間”』

IT・メディア関連を中心に、幅広い分野で執筆や講演活動を行うジャーナリスト・評論家の佐々木俊尚さん。現在彼は東京、福井、そして軽井沢の三拠点を行き来する生活を愉しんでいる。

多拠点生活を意識したきっかけは「生活のリスク分散」

「以前は、目黒に200平米のテラスハウスを借りて住んでいたんです。夫婦(妻はイラストレーターの松尾たいこさん)とスタンダードプードル1匹の住居としては過分ですが、仕事場を兼ねていたので、それくらいの広さが必要かなと思っていて」。

そんな佐々木さんが、多拠点生活を意識するようになった直接のきっかけは、2011年の東日本大震災だったという。

「首都直下型地震の可能性もあるなかで、生活の拠点がひとつしかないことに不安をおぼえたんです。リスク分散のため、生活の拠点を複数持つべきではないかと。ですから、拠点探しの第一歩は、なにより“安全な土地”であることでした」。

当初は、伊豆半島も候補にあがっていたが、地震の心配があるため断念。最終的に、自然災害のリスクが少ない軽井沢に拠点を構えた。

「当然、複数拠点での生活となれば拠点間の移動も重要な問題。たとえば北海道も魅力的だったのですが、移動手段がほぼ飛行機一択となると、犬を飼っているために難しいものがありました。当然、交通費もかさみますしね」。

その点、軽井沢は自動車でも鉄道でも約2時間で東京と行き来が可能。つまり、安全と距離のバランスを考えた結果、選ばれた土地だったというわけだ。

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東京並の食文化、そして余所者に対する寛容が軽井沢の魅力

緑に囲まれた、佐々木さんの軽井沢での住居。写真からも素晴らしい環境なのが伝わってくる。

もちろん、地理的な理由だけで軽井沢を選んだわけではない。生活の場としては、“暮らしやすさ”も重要な問題となる。

「“暮らしやすさ”の面で軽井沢が良かったのは、余所者に優しい土地であったこと。別荘地や観光地としての歴史がある場所ですから、田舎にありがちな排他的なチカラが、そもそも働きにくい傾向にあるんです」。

近年、二拠点生活の地として人気の熱海もそうだが、余所者慣れしている土地であることは、拠点選びの重要なポイントとなるようだ。さらに、軽井沢に関しては特に“食”の面で大きなメリットがあるとも。

「別荘地としての歴史が育んだのでしょうが、レストランをはじめ、パン屋や精肉店など、東京と同等以上のクオリティを持つお店が、数多くあるんです。広いエリアに点在する形ではありますが、時間をかけて、そうしたお店を巡るのも軽井沢ならではの愉しみといえるでしょう」。

ちなみに、ここで佐々木さんがいう軽井沢とは、主に拠点を構える中軽井沢エリアのこと。一般的に“軽井沢”としてイメージされている旧軽井沢エリアは「完全に観光地化されており、住民としてオススメできる店は少ない」のだとか。

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多拠点生活の地を選ぶポイントは、なによりも実体験

妻の仕事やご自身の取材活動の関係もあり、2013年からは福井に第3の拠点を持つことになった佐々木さん。それぞれの拠点での生活については、後編で紹介するとして、ここでは、多拠点生活の地を選ぶ際のポイントについてアドバイスしてもらった。

「多拠点生活を考えている人には、事前に肩慣らし的な体験をしておくことをオススメします。私の場合、試してみると、移動時間は大した問題ではありませんでした。東京から福井まで、車で片道6時間くらいですが、慣れれば平気なもの。東京近郊なら、横須賀や三浦半島あたりだと3万円くらいで借りられる一軒家があるので、試しに借りてみるのも、ひとつの手だと思いますよ」。

住居の選びかたについても、同様に“体験”がポイントになるという。

「実際に住んでみないとわからないことのほうが多いんですよね。たとえば軽井沢には古い別荘の空き物件が多く、最初はそのひとつに住んでいたんですが、いろいろあって1年で引っ越しをしました」。

良い物件を紹介してもらったこともあるが、引っ越しの決め手となったのは、軽井沢ならではの気候だった。

「極寒とまではいきませんが、それでも冬場は水道管が凍ってしまうほど。古い建物だと、東京に戻っている間は毎回業者を呼んで水道を止める必要があるなど、なにかと不便が多かったんです。今の家は新築で設備も最新なので、水道管が凍らないようになっているし、暖房も整っていますからね」。

冬の軽井沢。日本海側と比べて雪は少ないとはいえ、それなりの積雪があるし、冷える日も多い。

立地条件も大きなポイント。パッと見ただけでは予測できないこともたくさんある。

「一見静かな場所にみえても、実は観光客が利用する裏道に面していて車の行き来が激しかったり、夏場は気にならなかった坂が、冬になると凍結して上り下りが困難になったり。物件の購入を検討している人も、まずは賃貸などで様子をみたほうが良いと思いますよ」。

次回は軽井沢での過ごし方、そして多拠点生活者となったことで、佐々木さんに起きた変化について紹介しよう。

 

石井敏郎=取材・文

# 佐々木俊尚# 軽井沢
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