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2018.10.21

あそぶ

幻のコーヒー・トラジャの相棒は……。キーコーヒーに見るブレンドの極意

連載「レジ横コーヒーのおいしいヒミツ」Vol.3
お目当てのドリンクをレジで注文、カウンターで受け取る。コーヒーショップのよくある光景。でもちょっと待った。せっかくなら、レジ横に鎮座している豆にも目を向けてみよう。そこにあるのは、各ショップが考えた“ベストなコーヒー豆”へのアプローチなのだから。
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多彩なコーヒー豆をカウンター販売する「キーコーヒー」の直営ショップ。カフェスペースでのんびり過ごすのもひとつだが、せっかくなら博識なコーヒーアドバイザーの力を借りて、好みの豆を探してみよう。キーコーヒーを、なんとなく“ツウのお店”と考えて敬遠している人もいるかもしれないが、そんなことはない。
話を伺ったのは、キーコーヒーの中島聡太さん。今回は、ブレンドの奥深さをこれでもかと詰め込んだ、中島さんおすすめのオリジナル豆をご紹介。

 

コーヒー観を覆すフルーティーな酸味。「トラジャブレンド」


最初に紹介してくれたのは、キーコーヒーの看板ブレンド「トラジャブレンド マイルド」。インドネシアのスラウェシ島で収穫される「トアルコトラジャ」をベースとし、根強いファンがいるとか。
「トアルコトラジャは、フルーティーな酸味を強く感じられる豆です。さらには深い苦みとコク、ほのかな甘みも兼ね備えており、コーヒーの“奥行き”を存分に楽しめます。その重厚なハーモニーには、『コーヒー観を覆された』という人もいるほど。香りもじつに芳醇で、フルボディのワインを好まれる方にもお気に召していただけます」。
 
古くは「幻のコーヒー」とも謳われたトラジャコーヒー。太平洋戦争時に農園が荒れ果て、一度は市場から姿を消している。それを現地の人々と協力し、見事に再生させたのがキーコーヒーだ。現在も直営のパダマラン農園のほか、周辺の協力生産農家とともに栽培を続けている。2018年にトアルコトラジャは40周年を迎えた。

「ブレンドの相手に選んでいるのは『メキシコ』。強い甘みとおだやかな酸味が特徴の豆です。トアルコトラジャという“主役”を引き立てながら、まろやかな甘みも与えてくれるパートナーとしてブレンドしています」。
家族や友人と語らいながら飲むのもいいが、おすすめは「ひとりの時間にじっくり飲むこと」だと中島さん。お気に入りの音楽、あるいは本をお供に、複雑な風味を堪能したい。
 

特殊な製法で雑味を払拭。「氷温熟成珈琲 オリジナルブレンド」


お次は「氷温熟成珈琲 オリジナルブレンド」。氷温熟成という特殊な製法を採用し、洗練された味わいに仕上げている。
「氷温熟成とは、凍るか凍らないかギリギリの温度で生豆を熟成させる製法。すると生豆は『凍るまい』と反応して、繊維の組成に変化を起こします。水分の細胞が綺麗に並び、均一な繊維になるのです。これにより焙煎時にも均一に火が通り、豆本来の風味をストレートに引き出したコーヒーになります」。
なるほど。では、お味の特徴は?
「雑味の少ない、すっきりとした味わいです。シルキーな舌触りの『マンデリン』をベースに氷温熟成をすることで、いっそうマイルドな口当たりを実現しました。その特徴を邪魔しないよう、ブレンドの相手はバランスのいい味わいの『ブラジル』。食べ合わせには、ケーキやクリーム系のお菓子がおすすめです。口の中の油分をコーヒーが洗い流してくれるため、もったりとしたスイーツも最後まで美味しく食べられます」。
妻や息子の買い込んだ甘いお菓子をつまみつつ、まろやかなコーヒーとのコントラストを楽しむ。そんな休日のコーヒーブレイクも悪くない。
 

ホットとアイスの二刀流。ビターな深煎り「スイートダーク」


3番手は「スイートダーク」。深煎り特有のビターな味わいと、「エチオピア・モカ」をベースにした華やかな酸味を味わえる。
「エチオピア・モカの特徴は、ベリー系のフルーティーな酸味と、フローラルな香りを楽しめること。ただし、こちらのスイートダークでは、そこに飲みごたえのあるコロンビアとマンデリンをブレンドし、深いコクも表現しています」。
また、こちらは“二刀流”のブレンドで、ホットだけでなくアイスにしても美味しい。
「深煎りの豆ですが、アイスコーヒー用のフレンチローストやイタリアンローストよりは浅煎りのため、アイスとホットどちらのコーヒーにもおすすめです。ホットだと苦みを感じやすく、アイスだと酸味を感じやすいのが人間の舌の仕組み。濃密さを活かしてカフェオレにしてもおいしいし、さまざまな飲み方を楽しめるのではないでしょうか」。
 
アイスコーヒーの作り方は、ホットの半分の量のお湯でコーヒーをいれ、きちんと冷却するまで氷を溶かすだけ。簡単なアレンジなので、ぜひ挑戦してみたい。


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