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2018.08.19

ライフ

ソーシャルな別荘暮らし──熱海で見つけた“第三のコミュニティ”


海の街<熱海編> Vol.9
多様なライフスタイルを愉しむための“サードプレイス”として人気が高い、海の街・熱海。週末移住や二拠点居住の候補地として検討するなら、別荘を購入するのも、大いにあり得る選択肢だ。では、どのような暮らしをエンジョイしているのだろう。サードプレイスに別荘を持つ意義を先達に聞いた。
「海の街<熱海編>」をはじめから読む

歴史ある別荘地ならではの、魅力ある“古別荘”に暮らす贅沢

今回、お邪魔したのは、ファッション系アプリの運営会社で取締役を務める袰岩さんの別荘。熱海の魅力に惹かれ、この地にやって来たのは、2年程前のことだという。

元々とある財閥の保養所だったというこの建物、袰岩さん自身がデザインしながらリノベーションを行ったという。シックな外観もさることながら、昭和レトロモダンを基調としながらも、決して“やりすぎ”を感じさせない、センスあふれる内装だ。


照明やサッシといったインテリアの大半は、袰岩さんがオークションサイトなどを通じ、全国から集めたとのこと。

高台にある別荘から望めるのは、初島が浮かぶ相模湾の絶景だ。ときには屋根に乗り出し、海風を受けて熱海ならではの風景を堪能することもあるというから、なんとも羨ましい限りである。
 

隠居の場からソーシャルへ。変わりゆく別荘のカタチ

「実は、山中湖にも別荘を持っているんです。家族と暮らす都内のマンションが手狭で、膨大な仕事の資料や趣味のコレクションを保管しておく場所がほしかったのが、そもそもの動機。すでに山中湖のほうは、ほぼ倉庫状態になってしまっていて(笑)」(袰岩さん、以下同)。
そこからさらに、熱海の地に2軒目の別荘を構える選択をしたのは、増加するコレクションの収蔵問題だけでなく、袰岩さんが実際に直面した「別荘の在り様」が大きな影響を与えたのだという。

「“別荘”っていうと、なんだか”人生の上がりの場”みたいなイメージがあるじゃないですか。実際、熱海以外で検討した別荘地の多くでは、所有者は地元から隔絶した状態だったし、期間を空けずに行く人も少ないから、横のつながりも希薄だったんですよね。ひっそりと隠居的な生活を過ごしたいのなら、それでも構わないんでしょうが、僕にはちょっと向いてない感じで」。

その点、熱海の別荘事情……というよりも熱海のユニークさには、かなり心惹かれるものがあったという。

「そもそも、熱海という土地が他の別荘地に比べ“都会”だってことも大きいんですが、何よりも、今まさに変化の途上にある“再生が始まった街”だったところがイイナって思ったんですよ。都会的という点で言えば、学生時代に大好きだった鎌倉や逗子あたりも同様だけど、あの辺はすでにコミュニティやカルチャーも確立していて、熱海だったら僕がここにいることで、自分自身がこの街の未来を少し変えていけるかもなって」。

この地に本格的に移住してきた人たちも口を揃えるように、熱海が持つ最大の魅力は、地元の人たちと外部の人たちとが一体となり、熱海の“再生”を目指しているところ。特に袰岩さんは、若い世代がつくるコミュニティが生まれている点に注目しているそうだ。
「アートやクラフトワークなどのカルチャー以外にも、自然との関わりやユニークな小商いなどによって、熱海の街を盛り上げようとする若者たちがたくさんいて、彼らの自由なスタイルに大きく共感しているんです。僕らは、そうしたコミュニティを一緒に作りながら、大人として彼らの生き方を後押ししてあげることに、ある種の責務を感じていて(笑)。例えばこの別荘は、僕がいないときでも熱海の人だけのイベントにも活用してもらえるように開放しているんですよ」。


いわば社会性をもった“ソーシャルな別荘”といったところか。確かにリビングやキッチンは、まるでカフェのような人が集う設計となっている。また、外に広がる自然豊かな広い敷地も、近隣住民や農と寄り添う若い世代が畑や野草採取などに利用しており、古風な家屋と庭の草木がおりなす美しい景色は、熱海駅の近隣とは思えない贅沢な空間だ。



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