職場の20代がわからないVol.15
30代~40代のビジネスパーソンは「個を活かしつつ、組織を強くする」というマネジメント課題に直面している。ときに先輩から梯子を外され、ときに同期から出し抜かれ、ときに経営陣の方針に戸惑わされる。しかし、最も自分の力不足を感じるのは、「後輩の育成」ではないでしょうか。20代の会社の若造に「もう辞めます」「やる気がでません」「僕らの世代とは違うんで」と言われてしまったときに、あなたならどうしますか。ものわかりのいい上司になりたいのに、なれない。そんなジレンマを解消するために、人材と組織のプロフェッショナルである曽和利光氏から「40代が20代と付き合うときの心得」を教えてもらいます。
「職場の20代がわからない」を最初から読む 「メンタルが弱い若者」というイメージがあるが、実は20代のうつ病患者は少ない
今回のテーマは、「健康」――特にうつ病などに代表されるメンタルヘルス(精神的健康)です。職場でうつ病になる若手をよく見かけるようになってきたこともあってか、「最近の若者はメンタルが弱くなった」などと我々オッサン世代はすぐ言ってしまいがちです。ところが、統計数字を見る限り実はそんな傾向はありません。3年に一度実施されている厚生労働省の直近の「患者調査」(平成26年)によれば、うつ病等の気分障害の罹患者は111.6万人で、内訳をみると、年代では40歳台が約24万人と最多です。
一方、20歳台は約8万人で、未成年を除けば(20歳未満は2万人弱)最少です。この数字だけをみれば、20代のうつ病患者はむしろ少ないです。我々オッサン世代のほうが人口比を考えても多いです。それなのに何故、冒頭のように「メンタルが弱い若者」、「すぐうつ病になってしまう若者」というイメージが生じているのでしょうか。
気分障害患者数はここ20年で3倍に増えている事実はあるが……
確かに絶対数は増えています。例えば、上述の「患者調査」では、気分障害罹患者数は、90年代では40万人台でした。これとその約20年後の直近数字を比較すれば3倍程度と大幅に増加しています。それに比例して20代の罹患者も増えるわけですので、そこだけ見れば確かに「最近の若者」は「昔の若者」(つまり、今の我々オッサン世代)よりもうつ病にかかる人が多いと言えます。
しかし、オッサン世代のいう「若者はメンタルが弱い」は、何も「昔のオレ」と比べているのではなく、「今のオレ」と比べているのでしょうから、この分析は当たらないでしょう。さらに言えば、他にもメンタルの強さ(弱さ)につながる数字であると思われる数字、例えば自殺者数などを見ると、2016年の厚生労働省調査では、40代は約4000人、20代は約2000人と、やはり「今の若者」は「今のオッサン」よりも弱いとはけして言えないのです。
2/3