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2018.05.11

たべる

下北沢「アンジャリ」のカレー。曽我部恵一の選ぶ人生最後の晩餐

アーティストたちに「人生最後に食べたい一品」を教えてもらう本企画。
1回目はサニーデイ・サービスのギターボーカル、曽我部恵一さん。自他とも認める“シモキタ番長”でもある曽我部さんが選んだメニューは、下北沢駅から徒歩3分ほどにあるカレー専門店「ANJALI(アンジャリ)」のカレーだ。
ライスの上に盛り合わせたパパド(ひよこ豆から作られるインドのせんべい)や、にんじんアチャール(インドの漬物)も自家製。期待が高まる。
もともとカレー好きな曽我部さんが「アンジャリ」を友人から教えてもらったのは3年ほど前。以来、月1のペースで通っている。ときには、「ふらりと訪れたら定休日で、頭と口の中に広がった“アンジャリ気分”をどうにもできず悶々としたこともある」と言うから、実際はそれ以上の頻度で通っていることになる。
同店のメニューはシンプルで、チキンカレー、エビカレー、マトンキーマ、本日のカレーの4種(日によって変更あり)。曽我部さんのお決まりはふたつのカレーを選べる「カレー2種セット」だ。理由は「ひとつに決められないだけ(笑)」。そして、「たられば最後の晩餐」として、エビカレーとマトンキーマをチョイス。ライスは大盛りでさっそくオーダー。
曽我部さんが人生最後にどうしても食べたいと選んだ「エビカレーとマトンキーマの2種セット」1300円。ライス大盛り。別椀のエビカレーには、エビの出汁も使われていて風味たっぷり。
運ばれてきたセットがこちら。別椀に入っているのがエビカレーで、リーフ型の皿にはマトンキーマが。ポテト、にんじん、きゅうり&豆のアチャールで彩りも美しい。
曽我部さん、まずはマトンキーマをひと口。思わず「美味い!」と声がもれる。次は添えられたアチャールと一緒にもぐもぐ。先ほどとは違う味わいに「うん!」と唸る。

そのあと、別椀に入ったエビカレーをライスにかけ、再びぱくり。その後はふたつを交互に……と、本当に美味しそうに食べる曽我部さん。

みるみるうちに大盛りライスの山が崩れていく。途中でライスに乗っていたパパドも割り、カレーとともに食していく。
ちなみに曽我部さん、食に対するウンチクはまったく興味がない。むしろ必要なのはハート。事実、食べている最中も、ひと口目の「美味い!」に続いて「ここのカレーにはハートがある」とつぶやき、そして「この味を言葉にするなら“感謝”ですね」「ハートがなくても美味しいものはあるけど、それじゃダメなんだよね」と、矢継ぎ早に“味のある言葉”を放つ。
そもそも「アンジャリ」のカレーは、他店のカレーと何が違うのか? ベースはインドカレーだが、オーナーの市原さんは専門店での修行経験はなく、独学で作り方を学んだ。それゆえ、スパイスを何種類も入れるとか、2日間煮込むとか、“原理主義”的な作り方は一切していない。素材が活きるスパイスのみを使い、仕込みも2時間ほど。「シンプルで洗練されたものを作りたい」という哲学が込められた一杯は、インドカレーらしくないインドカレーとして唯一無二なのだ。
曽我部恵一(そかべけいいち)●ミュージシャン。サニーデイ・ サービスだけでなく多様な名義で作品をリリースし、 その総数は120タイトルにも及ぶ。自身のレーベル「ROSE RECORDS」主宰。3人の子を持つ父親でもあり、 先日は全員を引き連れて映画『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』を観賞、「 サイコーだった!」とか。サニーデイ・ サービスのニューアルバム『the CITY』発売中。www.sokabekeiichi.com
音楽のこと、最近観た映画のことなどを曽我部さんと話しながら、「エビカレーとマトンキーマの2種セット」をペロリと完食。食べ終わった曽我部さんに、“最後の晩餐”でこの一品を選んだ理由を教えてもらった。
「食事って、家族でいて、お腹が空いて、獣を仕留めて、そこからエネルギーを奪って生きる糧にしてきた、人間の営みだと思うんです。生きるためのエネルギーをもらうわけだから、それに感謝しなければいけない。だから、満足できる食事に出会えると“俺もいいことしないとなぁ”って思う。そんな原点を教えてくれる食事が好き。『アンジャリ』のカレーはまさにそれ。“最後の晩餐”にぴったりですよね」。
“最後の晩餐”のはずが、生きるためのエネルギーと言わしめた「アンジャリ」のカレー。確かにそれほどに美味い。でも、そのウンチクはあえて……割愛します。

 
 
 
 
 
ANJALI(アンジャリ)
03-5787-6622

住所:東京都世田谷区北沢2-15-11 センヤビル B1
定休日:水曜
営業時間:12:00~15:00、18:00~22:00(火曜はランチ営業のみ。土・日曜、祝日は12:00〜16:00、18:00〜22:00)
 
取材・文
ジョー横溝(じょーよこみぞ)●音楽から社会ネタ、落語に都市伝説まで。興味の守備範囲が幅広く、職業もラジオDJ、構成作家、物書き、インタビュアーetc.と超多彩な50歳。ラジオのレギュラー番組として「The Dave Fromm Show」(interFM897)、著書に『FREE TOKYO〜フリー(無料)で楽しむ東京ガイド100 』など多数。


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