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震災で気づいた会社の“違和感”。「主夫」として人生を切り拓いた男

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連載「37.5歳の人生スナップ」
もうすぐ人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。

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「主夫」という生き方を選んだ男たち。今回は東日本大震災をきっかけに38歳で会社を辞めるという大きな決断をして、自宅で仕事をしながら子育てに家事と、充実した毎日を送る兼業主夫の登場だ。

娘が2歳になったとき、妻と話し合って仕事を辞めた

「まさか自分が主夫になるとは、思ってもいませんでした。今もその意識はそれほどありません。自分にとって生きやすい方法を探した結果、自然と『兼業主夫』という形に落ち着いたという感覚です」。

坪井博一さん(45歳)は、にこやかな笑顔を浮かべてそう語り始めた。ガッチリした体格に日焼けした浅黒い肌。外見だけ見ると、いわゆる「主夫」のイメージとはほど遠い男らしさだ。

そんな印象とは対照的に、「絵本の読み聞かせが好きなんです」と楽しそうに話す。坪井さんは仕事をしながら家事・育児を主体的に行う兼業主夫だ。家族は12年前に結婚した妻と、8歳と6歳になる娘2人。小学生になったことで、保育園の送り迎えがなくなり、「かなり朝が楽になりました」という。

「結婚したのは34歳のとき。妻と出会ったのは、趣味で通い始めたゴスペル教室でした。もう12年以上前の話です。当時、僕は法人向けカスタマーサービスの会社で派遣社員として働いていて、妻は建設会社の事務員。彼女は現在も同じ会社に勤務しています」(坪井さん、以下同)。

当時はまだ子供もなく、どこにでもいる共働き世帯だった。しかし、第一子が誕生したことで、坪井さんの中に変化が生じる。それまで以上にがむしゃらに働いたが、その生き方に疑問を感じ始めたのだ。

「最初こそ『子供も生まれたし、もっと仕事をがんばらないと』って思っていました。でも、仕事に追われて、子供と関わることができない。毎日残業で、終電で帰るのが当たり前。おまけに休日出勤まで命じられるようになった。それで子供が2歳になるころに嫁と話し合い、仕事を辞めたんです」。


東日本大震災で抱いた違和感。「家庭にいなくてもいい人にはなりたくない」

当時働いていた会社は、契約更新のたびに条件が悪くなっていくような労働環境だった。「もっと家族で過ごせる時間を増やしたい」。そう願う坪井さんは、妻を説得して仕事を辞め、自宅でパソコンを使って収入を得ることができるアフィリエイターへと転身した。

「一番大きかったのは東日本大震災です。あの日、なかなか家族と電話が繋がらなくて、心配だから帰りたいと会社に訴えたんです。ところが、上司は当たり前のように『終業まで待て』と、なかなか帰してくれなかった。会社は自分の家族よりも取引先の心配ばかりしていました。その光景を見て、強い違和感を覚えました。そして、我に返ったんです。この人たちは『家にいてもいなくてもいい人』になっている。自分はそうなりたくないと」。

家族よりも大切な仕事なんてあるのか? 強い疑問を感じた坪井さんは、震災から2カ月後に退職。そこからは一念発起して家族との時間を優先できる仕事を探した。そうしてたどり着いたのが自宅でできるアフィリエイトの仕事だ。

「妻には『半年だけ時間をくれ』と言いました。結果的に、新しい仕事が軌道に乗るまで1年かかってしまったのですが、それでも妻が僕を信じてくれたから、本気でがんばれたんだと思います。期間を区切ることで自分を奮い立たせました」。

朝、子供を保育園に送ると、ずっと自宅で作業する日々。夕食後もすぐにパソコンに向かって勉強した。失敗の連続で最初の2〜3カ月は、何をしても結果につながらなかったという。ちょうど半年くらいで芽が出始め、結果が伴ってきたのは1年後。ようやく派遣時代と同程度の収入を得られるようになった。

「挑戦といえるほどかっこいいものじゃない。満足できない現状から抜け出すために、死ぬ気でやるしかなかったんです」。

仕事を辞めたことへの後悔は微塵もない。坪井さんにとって、あのまま働き続けて、じわじわと「家庭にいなくてもいい人」になることのほうがよっぽど怖いことだったのだ。

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