パパは家事も育児も一生懸命やっているつもり、ママにも最大限気を使っているつもりなのに、なぜかママがいつもイラっとしている。そんな夫婦間のギャップの原因を、ママ目線から解説するこの連載。ママがイラっとする原因のひとつとして、ママの困りごとや家庭のピンチに対する夫婦間の温度差というものがあげられます。今回は、子供同士のトラブルが起こった際の、ママへの接し方について、育児・教育ジャーナリストであり、自身も2人の子供のパパであるおおたとしまささんに教えてもらいました。
「自己評価の高いパパ」と「いつも何かが不満なママ」を最初から読む子供同士のトラブルは、子供同士で解決させるのが基本
「子供同士のトラブルは、大きく分けると『怪我をさせた』『ケンカをした』『いじめ』の3種類があります。子供同士の場合、どんな子でも、被害者、加害者の両方になりうる可能性があるわけです」(おおたさん、以下同)。
おおたさんいわく、子供同士のトラブルは子供同士で解決させるのが基本、とのこと。
「大人が入るほど解決は遅くなるので、子供だけで対処ができない状況になった場合のみ、大人が介入してサポートすると考えましょう。そのときに大切になってくるのが、『子供同士がまた仲良く遊べる状況にするにはどうしたらいいか』というコンセンサスを互いの保護者が持つこと。大人同士がチームとなって考えることが理想的です。間違えても、親vs親の争いになるのは避けましょう」。
こういったトラブルが起こった場合、親は学校からの連絡で知ることが多いそうです。
「小学校で起こった場合は、先生が両方の親に連絡をし、それによって親がトラブルを知ることが多いと思います。相手の様子を確認したうえで、『相手は今こんな様子なので、一度連絡を入れてみてください』というようなことを具体的に先生から言われる場合もあるようです」。
このときにふと頭をよぎるのは、万が一我が子が加害者だったとしても、簡単に謝ってはいけないのではないか、ということですが、その点はどうでしょう?
「子供同士のトラブルの場合、どちらかが一方的に悪いわけではないことも多いもの。でも、初期対応として、とりあえず謝ることで向こうの興奮が収まるなら、そのほうがいいと思います。ただし、この場合、真面目な人ほど、謝ることに強い抵抗を感じる、ということがあります。そんなときは、まずは気持ちを込めなくてもいいので、申し訳ございませんでした、と発音してしまうことです。気持ちはあとからついてきます」。
状況の悪化を避けるため、まずは相手の気を鎮め、子供の盾になる気持ちで“したたかに”謝ればいいとのこと。確かに、大人同士でもそうですが、ひと言謝ることで、物事が好転することは多いものですよね。「自分の子供を守らなきゃ」という気持ちが強く出すぎると、親vs親の争いになってしまい、炎上してしまうこともあるそうなので、気をつけたいところです。
ママからの相談を上から目線で対応するのは、絶対避けるべし子供のトラブルで学校から報告を最初に受けるのは、ママのケースが多いと言います。後から相談を受けたパパが、上から目線で「俺だったらこうする」「なんでこうしなかったの?」などと、上司と部下のようなモードで話をするのは絶対避けましょう。「ものすごく感じ悪かった!」というママの怒りを耳にすることも少なくありません。ではこういうケースでは、パパはどう対応するのが正しいのでしょうか?
「学校からのトラブルの連絡は、急に来るものですから、パニックになるのは当然です。そのため、まずはママが辛い役を引き受けていることに共感して『それは大変だったね。対応してくれてありがとう』と、労いと感謝の気持ちを伝えます」。
「また、『こちらばかり悪いことにされて、でもうちの子にも言い分がある』など、悔しい思いを持っていることもあるので、それを受け止めてあげましょう。途中でなるべく口を挟まずに、最後までママの本音を聞くことが大切です。そのとき、たくさん相槌を打つ、ときどきママの言ったことをオウム返しする、いたわりとねぎらいの言葉をかける、の3点を意識するのが上手な話の聞き方です」。
途中で「何を言っているのかわからない」とか「それってお前も悪くない?」などと思っても、この段階ではそれはいったん飲み込んで、ひたすらママの言い分を聞くことが大切だそう。話をすべて聞くだけで、気持ちが落ち着き、何をすべきかが自ずと見えてくるといいます。
「この段階では、ママに冷静さを取り戻させることが優先。評価とかアドバイスはしないで、ひたすらママの話を聞きましょう。すべて話し終わったら、状況を整理しながら、どこを目指して解決していくのかをしっかり話し合ってください。勝ち負けではなく子供同士がまた遊べるようにするには、先生にどう援助してもらうのか、また、先方の親への対応方法、子供の話をどっちが聞くかといった作戦を夫婦で立てて行きましょう」。
確かに、怒っていたり、困っていたりするとき、考えがまとまらないまま人に話してしまうことはありますが、話をしているうちに考えが整理されたという経験は、特に女性の場合、よくあることだと私も感じます。「女性の話は長い」などと男性はよく言いますが、まずはママの話をしっかり聞くことが、問題の解決を早めるようです。
次回は、子供のトラブル解決にパパが具体的に介入する際の注意点を、引き続きおおたとしまささんにお聞きします。
【プロフィール】
おおたとしまさ
育児・教育ジャーナリスト。リクルートで雑誌編集に携わり、2005年に独立。心理カウンセラーの資格、中高の教員免許を持ち、パパのための相談サイト「パパの悩み相談横丁」を運営。著書に『ルポ 父親たちの葛藤』(PHP研究所)、『ルポ 塾歴社会』(幻冬舎)、『ルポ 東大女子』(幻冬舎)などがある。 取材・文=相馬由子
編集者、ライター。合同会社ディライトフル代表。子育てをテーマにした雑誌、ウェブ、書籍などの企画・編集・執筆を手掛ける。2017年より某育児・教育系ウェブメディアの編集長を務めている。再来年に娘の小学校入学を控え、学童に入れるのかが目下の悩み。イラスト=佐野さくら