37.5歳からの愉悦 Vol.34
2018.03.22
LIFE STYLE

中野の野球居酒屋で、野球愛を熱く語る看板娘を胴上げしたかった

看板娘という名の愉悦 Vol.7
好きな酒を置いている。食事がことごとく美味しい。雰囲気が良くて落ち着く。「行きつけの飲み屋」を決める理由はさまざま。しかし、なかには店で働く「看板娘」目当てに通い詰めるパターンもある。もともと、当連載は酒を通して人を探求するドキュメンタリー。店主のセンスも色濃く反映される「看板娘」は、探求対象としてピッタリかもしれない。

来たる3月30日、プロ野球シーズンが開幕する。常々、野球中継を観ながら飲むお酒が一番美味しいと思っている身としては、めくるめく季節の到来だ。

そんなことを考えながら向かったのは、中野駅北口の飲み屋街。

冷たい雨の降る夜
冷たい雨の降る夜

5分ほど歩くと目指す店に着いた。

少年野球指導教室
少年野球指導教室 中野塾

中で野球少年たちがミーティングをしているわけではない。ここは紛れもない居酒屋である。

夜な夜な集うのは大人の野球ファン
夜な夜な集うのは大人の野球ファン

しかも、今回の看板娘は生粋の野球ファンを盛り立てる本気の野球アイドル。

店頭には本日のコーチの名前を掲示
店頭には本日のコーチの名前を掲示

“コーチ”は曜日によって変わるが、彼女は紅一点だという。さて、お邪魔しますよ。

テレビはもちろんオープン戦
テレビはもちろんオープン戦

カウンター内に日本代表のユニフォームを着た女性がいる。看板娘だ。

野球アイドル・立花夢果(たちばなゆめか)さん

おすすめのお酒を注文したところ、上の『デッドボール』を持ってきてくれた。

「ハイボールはウイスキーをソーダで割りますが、デッドボールはウイスキーをサワーで割っています。つまり、お酒をお酒で割っているので結構ヤバいです」

たしかに、当たりどころによってはベンチが一触即発の状態になりそうな味だ。

メニューにはもっとヤバそうな『危険球退場』も
メニューにはもっとヤバそうな『危険球退場!』も

一塁に歩きながら聞いてみた。夢果さんはなぜ野球アイドルになったのだろうか。

「両親がプロ野球好きだったので、小さい頃から球場に連れていってもらってました。今の活動をするようになったきっかけは、2007年の田中幸雄さんの引退です」

おお、2000本安打を記録したにもかかわらず、一度もシーズン打率で3割を打ったことがない日ハムの名選手だ。

「引退するとわかって、彼のプレイから受け取ったメッセージを【『6』の軌跡】という曲にしたんです。ご本人にもCDを渡しました」

ライブ活動も精力的にこなす
ライブ活動も精力的にこなす

そのCDは『週刊ベースボール』誌上で「2008年度野球レコード大賞、最優秀新人賞」に選ばれた。このあたりから、野球アイドルとしての知名度は一気に上がったという。

オリジナルで製作した野球CD
オリジナルで製作した野球CD

彼女はステージを「試合」と呼ぶ。歌詞には野球用語が散りばめられているほか、サイン入りボールを投げたり、ウグイス嬢のアナウンスがあるなど、野球そのものの演出がなされている。

所有するユニフォームは120着以上

日本のプロ野球以外にも、台湾プロ野球や社会人野球チームのユニフォームも所有。本気の野球愛なのだ。その証拠にどのチームのファンなのかを尋ねると、「プロ野球ファンです」と答える。

深く感動しつつ『デッドボール』の残りをぐいっと飲み干す。店内を見渡すと、いたるところに野球関連のグッズが飾ってある。

山田哲人の横で静かに微笑む井口
山田哲人の横で静かに微笑む井口
中日ファンとしては嬉しい星野の胴上げ写真
中日ファンとしてはうれしい星野の胴上げ写真

僕の隣ではヤクルト・鵜久森のユニフォームを着た男性が終始無言でテレビを観ている。聞けば、「ここ一番では華がある選手なのに、なかなか一軍に上がれない。そういうところも応援したくなるんですよね」。

わざわざ三軒茶屋から通っているそうだ
わざわざ三軒茶屋から通っているそうだ

さて、夢果さん。お代わりをお願いします。「甘いの平気ですか?」と聞かれたので、ふだんは飲まないが「大好きです」と返した。看板娘が勧めるお酒を飲むという趣旨なのだ。

お待たせしました〜
お待たせしました〜

アマレットとライチリキュールにカルピス少々とパイナップルジュースで割ったものだそう。客の好みを聞いて即興で作る夢果コーチオリジナルのカクテル「ゆめカク」だ。色味的にはソフトバンクの球団カラーに近いだろうか。

こちらのアマレットとライチリキュールを使用

そのとき、「住人が全員同じ名前のシェアハウスなんて世界初でしょうね!」「郵便物が届いても誰のかわかんないし!」という大盛り上がりのトークが聞こえてきた。話を聞くと、彼らは3人とも中野雄介さん。

「知人のツテなどをたどって、2016年に『中野雄介会』を結成。中野で店名に『中野』がついている中野塾で月1回ほど定例会を開いていて、今日もそれです」

お揃いで作ったTシャツ
お揃いで作ったTシャツ
漢字も同じじゃないと入会できない
漢字も同じじゃないと入会できない

現在、会員数は7人。シェアハウス計画はまだ構想段階だが、「会員が100人以上いる『田中宏和会』をいつか超えられれば」と鼻息も荒い。

夢果さん、ここ、いろんな意味で人と人がつながる店ですねえ。

「贔屓のチームが違っても、みんなで仲よく観戦するスタイル。お客さんから教わることも多いので勉強になります。女将のコンドルさんもやさしくて、私のやりやすいようにやらせて下さるのも長く続けられている理由のひとつ。コンドルさんにはとてもお世話になっていて感謝しているんです!」

思わぬ言葉に泣き出す女将

ちなみに、女将は元・女子プロレスラーのコンドル斉藤である。その話も聞きたかったが、「私はいいから夢果ちゃんと話してあげて」と言われたのだった。

そこへ、「あっ、とのさんだ!」と夢果さん。「うちに64日間連続で来てくださったことがあるレジェンドです」。

これはこれは……
これはこれは……
4年前に33日間連続来店記録を打ち立てて表彰
33日間連続来店記録を打ち立てて表彰されたのち、記録を64まで伸ばした

奇しくも、プロ野球記録も1979年に広島の高橋慶彦が作った33試合連続安打。これを大幅に更新したことになる。

常連客だけで強力打線が組めそうだと感心しつつ、お勘定を。最後に夢果さんから直筆メッセージをもらった。

好きなプレーは「6-4-3のダブルプレー」だそうです
好きなプレーは「6-4-3のダブルプレー」だそうです

【取材協力】
少年野球指導教室 中野塾
☆立花夢果☆GO!GO!DREAMS♪

取材・文=石原たきび


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