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故郷の土で創るコーヒーカップで、手の込んだホワイトデーに

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愛で、創り、使う。セラミックアーツ入門 Vol.4
ストイックでお堅いイメージのある、陶芸。自作の食器に興味はあっても、地味なイメージは拭えない。なにより食卓に完成品を並べることをイメージするとオシャレ度にやや難あり。……と思っていたけれど、最先端の陶芸、もとい「セラミックアーツ」は驚くほどカッコいい。本連載ではアーティスト・中野拓氏に教えを乞い、進化した陶芸の魅力に迫る。さあ、愛で、創り、使う楽しみを味わい尽くそう。

「セラミックアーツ入門」を最初から読む

最先端の陶芸「セラミックアーツ」の醍醐味は、自分の想いやルーツを作品に込めること。故郷に由来した材料を使うも良し、誰かとの思い出をデザインに反映させて一生モノのプレゼントにするも良し。オンリーワンの器作りには、ただのものづくりを超えたロマンがある。

今回はそんなセラミックアーツを初体験。陶芸教室「彩泥窯」オーナー兼アーティスト・中野拓さんに教えを乞い、陶芸の魅力を体感する。

在りし日の思い出を、器として形に残す

「さて、どんな器を作りましょうか」と中野さん。まずはカウンセリングに時間を割くのが、中野さん流だ。

実は今回、筆者にはすでに作りたいモノがある。妻に向けたホワイトデーのプレゼントだ。いささか照れくさいが、世界にひとつだけの器を贈って日頃の感謝を伝えたい。

モーニングコーヒーを欠かさない妻には、コーヒーカップがいいと思う。材料も万端で、妻の実家にお邪魔して庭の土や草木を採らせてもらった。もちろんそれを知るのはご両親だけだ。

「いいアイデアですね。ちなみに、パートナーさんの故郷のお写真などはありますか?」

スマホで故郷の写真をペラペラと見せる。中野さんのお眼鏡にかなったのは……。

写真提供:相模原市観光協会

妻の実家近くにある「烏山用水」だ。相模川の水を引く農業用水路であり、1858年、新田開発のため地元農民・江成久兵衛を中心に28年かけて整備した。地元では小学校でも習う有名な歴史らしい。

だが、昨年の台風などの影響でいまは水がない状態なのだとか(2018年3月1日現在)。行政は復旧に向けて動いているというが、幼少期によく父と遊歩道を散歩した妻は、ずいぶん寂しがっていた。

「では、水の流れる烏山用水をモチーフにして、思い出を形に残すのはいかがでしょう」

それは名案! 中野さんのアイデアをもとに、さらにデザインを詰めていく。

・緑とブラウンを基調にし、烏山用水の木々と遊歩道を表現
・内側は青く染め、思い出の川に見立てる
・ブラウン部分は、採取した土から泥を作って塗る。釉薬でのコーティングをあえて控え、むき出しのまま焼き上げた土に触れられるようにする
・ソーサーも作り、庭から採取した葉の葉脈をかたどってみる

よし、完成像も固まったところで、ついに実作業のスタートだ。

泥を作り、土を練る。いざ、陶芸デビュー

作務衣に着替え、準備OK!

「まずは塗装用の泥を作りましょう」と中野さん。採取してきた土を使い、筆につけて塗装できる綺麗な泥を生成するという。

水に土を入れて混ぜ、網へと流し込む。これにより、土に含まれた雑草や砂利などの不純物を取り除き、純粋な泥水を作るのだ。

それを絞って水気を落とすと、こんな泥だけの状態になる。

泥をすり鉢へと移し、すりこぎで潰していく。絵の具のように滑らかになるから驚きだ。

さて、自家製の“塗料”を作ったら、次は材料となる粘土選び。完成時の色合いから逆算し、白土と赤土を用意してもらう。

これらをよく練る。全体の硬さを均一にすることで、粘土を扱いやすくするのだ。また、内側の空気をしっかり抜かないと、焼成時に破損の原因となってしまう。

回転させては練る、という動作を繰り返すが、難しい! 手首のスナップは思うように効かないし、粘土の硬さも想像以上。

均一に練ると、風車の羽のような見た目になる。中野さんの助けも得て、第一の難関をなんとかクリア。

陶芸の花形「ろくろ作り」。土と“対話”するフシギな時間

さあ、土練りを終えたら器の成型だ。さまざまな方法があるが、陶芸の花形「ろくろ作り」から教えてもらえるという。

まずはろくろに粘土をセットし、レバーを踏んで回転スタート。軽く水をつけた手で、粘土を包み込む。

粘土が手のなかで回転し、生き物のように姿を変えていく。伸ばしたり縮めたりして土を馴染ませる「土殺し」のあと、中央を凹ませて器を形作る。

しかし、縁をつまむ指がブレてしまい、器を突き破ってしまう一幕も。

「手の形をグッと固定し、逆の手で支えるのがコツ。指は下にゆっくりとスライドさせましょう」

おお、できた。一筋縄ではいかないが、だからこそ修正できるとうれしい。

徐々に力の入れ方も変えてみて、土の変化を確かめていく。「これくらい力を入れると、こう変化するのか」。さながら“対話”するような感覚だ。これは楽しい。

ベースの形ができたら回転を止め、絵柄をつける。泥を帯のように塗り、表面に線状の凹みも作った。再びこれを回すと、川に沿って続く遊歩道のようになるというが……。

仕上げは中野さんにバトンタッチ。器の縁をつまみ、その指を下にスライドさせていくと、斜めに伸びる遊歩道がみるみるうちに浮かび上がってきた!


そして成型完了。神業を見てしまった気がする。

自作の一品はやはり可愛く見えるもので、自分の分身のようにも思えてくる。焼成の作業は残っているが、まずは大満足のろくろデビューを飾ることができた。

さて、今回は「ろくろ作り」を体験したが、器の成型方法はひとつではない。次回はテーブル上で土をいじる「手びねり」、さらに焼き上げまでをレポートする。ぜひお楽しみに。

取材・文=佐藤宇紘
撮影=澤田聖司

【取材協力】
彩泥窯 表参道工房
住所:東京都渋谷区神宮前4-6-2-1F
電話番号:03-6447-1105
http://saideigama.com/


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