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2018.04.30

ライフ

人生の自由度を広げたい。「兼業主夫」の道を選んだ男のストーリー

連載「37.5歳の人生スナップ」
人生の折り返し地点、自分なりに踠いて生き抜いてきた。しかし、このままでいいのかと立ち止まりたくなることもある。この連載は、ユニークなライフスタイルを選んだ、男たちを描くルポルタージュ。鬱屈した思いを抱えているなら、彼らの生活・考えを覗いてみてほしい。生き方のヒントが見つかるはずだ。
主婦とは、家庭内で家事と育児を担う女性のこと。しかし、近年は少数ながらも、この役割を担う男性も現れ始めた。つまり「主夫」だ。少しずつ広がりを見せるなか、彼らの生き方も多様そのもの。連載の手始めとして、主夫という生き方を選んだ男たちの考えや生活を3回にわたって紹介することにしよう。
 

「主体的に家事・育児をする夫=主夫」という生き方


勝間直行さん(39歳)の朝は、今年5歳と3歳になる子供たちを起こすことから始まる。ふたりともやんちゃ盛りの男の子だ。
まず6時ごろにひとりで起きて、シャワーや歯磨きなどを手早く済ませ、パンとコーヒーといったメニューの朝食をとる。7時になると、子供たちを起こす。元気があり余る子供たちを寝かしつけるのは大変で、朝はなかなか目を覚ましてくれない。だから、ときには布団の上で寝間着を脱がせ、そのまま着替えさせてしまうこともある。
勝間さんは「主夫」だ。ただし、専業の主夫ではない。かつては医薬品を扱う企業のMR(営業)だったが、子供たちとの時間を増やすために、以前より拘束時間が比較的短い会社に転職した。
いまや共働き世帯は多数派となり、「夫は外で働き,妻は家庭を守るべき」という価値観は古くなりつつある。とはいえ、家計を支える夫が「主」で、子育てや家事を担う妻が「従」という考え方の家庭もまだあるかもしれない。
しかし、勝間さんと結婚6年目になる同い年の妻のあいだには、こうした「主」「従」の概念はない。勝間さんはいくつもの選択肢の中から、自ら進んで「主体的に家事・育児をする夫=主夫」という生き方を選んだのだ。
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主夫を選んだ理由は「将来への投資」と「子供との時間」

勝間さんは、主夫を仕方なくやっているわけでも、やらされているわけでもない。勝間さんのブログには、子供たちとの日常が綴られている。それを読むと、勝間さんが楽しんで子育てしていることがよくわかるのだ。
しかし、結婚当初は少し違った。勝間さんいわく、当時は「良いところをするだけの“エセ”イクメンだった」という。

「結婚の翌年にすぐ長男が生まれたのですが、当初は子育てや家事はほとんど妻がやっていました。僕が子育てに関わるのは、おむつを替えたり、たまに夕食を作ったり、土日にベビーカーを押して公園に行ったりする程度でした」(勝間さん、以下同)。
後から勝間さんが妻に聞いたところでは、初めての育児だったこともあり、当時はそんな夫に不満だったという。
「あなたは本当に大変なことを全然やってくれない、育児も家事も結局、全部私じゃない?と。僕もたまに夜中にミルクを作ってあげていたんですが、妻にすれば『私はあなたの3倍起きている』という感じだったようです」。
妻のイラ立ちの背景にあったのは、産休からの復職後に直面した会社での現実だ。当時の妻の勤務先はICT系の大手企業。もともと夫妻は、同姓の評論家・勝間和代さんが主宰するセミナーで知り合った。
ところが、復職すると、時短だったために任されるのは雑務ばかりで、高いモチベーションで取り組めるような仕事はアサインされない。時短でもきちんと仕事している自負があったが、評価は低い。思い描いていた理想のキャリアと現実とのギャップに思い悩むこととなった。
「妻にはフルタイムに戻りたい気持ちがありました。でも、夫婦がともにフルタイムで働くなら、時間を効率的に使うようにしようと。そこで妻と話し合い、子育てや家事をこういうふうにやっていこうと決めました」
勝間さんが育児・家事に積極的に取り組み始めたのはそれからだ。そのときに、勤務先ももう少し時間の融通がきく会社に変えた。
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