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2017.12.14

たべる

新宿の穴場!47都道府県のカップ酒を揃える「てんてんてん」

カップ酒という名の愉悦 Vol.2
巷にカップ酒専門の居酒屋が増加中だ。「ワンカップ」という通称でも親しまれているが、これはカップ酒の始祖である大関株式会社(兵庫県西宮市)の登録商標。正確には「カップ酒」ということになる。いつでもどこでも手軽にクイっと飲めるカップ酒。当連載は、その知られざるカップ酒の魅力にほろ酔い気分で迫ろうというものだ。
カップ酒連載の第1回は、「ワンカップ」の生みの親である大関株式会社に誕生秘話を聞いた。2回目以降はカップ酒に力を入れている居酒屋やバーを訪れる。要するに、飲みたい。
向かったのは新宿。知人から「新宿三丁目に日本全国のカップ酒を揃えている飲み屋がある。女将のキャラもめっちゃいい」という情報を入手したのだ。
新宿通りは歩行者天国、これから向かうはカップ酒天国
伊勢丹本店のすぐ近く、路地の一角に目指す店「てんてんてん新宿店」を見つけた。月曜〜土曜は16時、日曜は15時にオープンする。
小ぎれいな外観
おお、47都道府県の純米カップ酒が飲めるのか
お邪魔します
店内はカウンター6席とテーブル2席。12人で満席になる。オーナー兼女将の布施有美子さん(40歳)が満面の笑みで迎えてくれた。
いらっしゃいませ〜
「外は寒いでしょう。熱いお茶をどうぞ」
こういう心遣いが地味に嬉しいのだ
「てんてんてん」という店名の由来を聞くと、「とくにないんですが、強いて言えば『……』というふわっとした余韻を表した感じです」(布施さん、以下同)。
全国から取り寄せたカップ酒メニュー
店には各都道府県から選抜した1本だけを置いている。しかも、「純米」に限る。お値段はオール780円(一部例外あり)。
「ちゃんとした美味しい日本酒がカップ酒でも飲めるんですよ、というお店をやりたかったんです。純米のカップ酒ってあまり多くないので集めるのに苦労しますが」
なるほど、それにしてもよく47都道府県をコンプリートしたものだ。
「いえ、じつはどうしても純米カップ酒がない県もあって、そこだけは泣く泣く別のお酒にしています」
左からラム(沖縄)、焼酎(長崎)、焼酎(鹿児島)
ところで、ご当地カップ酒にはブランド銘柄を詰めたもの、郷土の特産品をラベルにあしらったものが多いが、中には「人生フルスイング」などインパクト勝負の商品もある。
京都のカップ酒で文字は偉いお坊さんの筆によるもの
「1合、180mlはおひとりで飲むにはちょっと多いので、2、3人でいらっしゃった方には片口でお出ししてシェアすることをお勧めしています」
つまりは、こういうことだ
奥のテーブル席で盛り上がっている若者たちも、片口シェアスタイルで飲んでいた。
カンパーイ
聞けば、3人とも郡山出身で中学時代の同級生。たまたま休みが合ったので、明るいうちから忘年会を始めているそうだ。
さて、そろそろ僕も飲みたい。ひととおりメニューを眺めると、静岡の「にゃんかっぷラスタ」という梅酒が気になった。布施さんによれば、日本酒で漬け込んだ梅の実が入っていて、お燗で飲むと美味しいとのこと。それだ。
あれ、電子レンジじゃないのか
90度のお湯で温める燗酒セットだった。
しかも、好みの温度で
燗をつける間に食べ物もオーダーしよう。どれも美味しそうだが、「オススメ!!」と書いてある「豚の角煮」(580円)にした。
本格派のカップ酒には本格派の料理を
そして、こうなった
ほどよい熱さの梅酒をすすりながら、時々梅の実をかじる。そして布施さん、事件です。ほろっほろで味がしみ込んだ角煮が絶品すぎます。
角煮アップ
「あら、ありがとうございます! 8時間ぐらい煮込んでいるんですよ」
2セット目は郷里・岐阜のカップ酒「さるぼぼ」。「さるぼぼ」とは猿の赤ちゃんのことで、飛騨地方で昔から作られてきた郷土人形だ。
北海道昆布森産の「生かき」(480円)を添えて
岐阜か、今度の正月は帰ろうかな
感傷に浸っていると、隣席の男性が読んでいる本の表紙が目に入った。
「あ、これですか。小中学生向けに書かれた歴史書みたいです。この時間にお酒を飲みながらしんみりと本を読める店を探していたら、たまたまここを見つけて」
昨夜の忘年会で著者本人からもらったとのこと
カップ酒を飲みながら日本の未来に思いをはせるのもよい。日本酒がなかなか効いてきたため、布施さんに余計なことまで聞きたくなった。何か最近のお悩みとかありますか?
「えっ(笑)。そうですね、私、甲本ヒロトさんが好きなんですけど、7月にバイクで転倒して骨折したみたいで。いくらネット検索してもその後の情報が入ってこないので心配しています」
うむ、僕も好きなので早期の復活を祈ります。よし、ラスト1杯で締めよう。布施さんに人気の3本を教えてもらった。
左から「雪男」(新潟)、「加賀鳶」(石川)、「豊盃 APPLES&DOGS」(青森)
青リンゴのような香りがするという「豊盃 APPLES&DOGS」でフィニッシュ。大満足で布施さんに感謝の意を伝えると、「いえいえ、こちらこそありがとうございます。それにしても、ずいぶん自由な取材スタイルなんですね」と言われた。そうかもしれない。
なお、中野と初台にも同様のスタイルの系列店があるので、お近くの方はぜひ覗いてみてください。
 
取材・文/石原たきび
【取材協力】
てんてんてん新宿店
http://tententen.sakura.ne.jp/shinjuku/
 
連載「カップ酒という名の愉悦」過去記事一覧
第1回 64年の東京五輪に合わせて発売!「ワンカップ大関」の凄い歴史


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