OCEANS

SHARE

2017.09.30

ライフ

Cardboard Surfer 〜路上のアートが蒔いた種、その一粒の開花〜


ただくつろぐだけでも気持ち良い時間を過ごせ、サーフィンをした瞬間に人生は大きく変わってしまう。ひとつのシーンからそんな海の魅力を発見していくコラム 。
SEAWARD TRIP!
「SEAWARD TRIP」を最初から読む

今回は「Cardboard Surfer」


置きたい場所に筆を置き、引きたいように線を引く。絵のうまい下手は運動神経が関係するのではないか。そんな仮説を立てるのはアーティストのTAO。感性に多くを委ね、学びより実践で画力を獲得する路上のアーティストの作品を見ると、特にそう感じるらしい。
一方で彼は、デッサン力を東京藝術大学時代に磨いていった。アカデミックな世界で身に付けた画力に、サーファーとしての感性をミックスさせた作品が写真の「ダンボールサーファー」だ。
学びで力を得た絵と実践で得たそれとでは趣は異なるが、彼は両者を行き来しようとしている点が面白い。いわば、美術界の大家の作品を片手に、その逆の手で路上のアートを持つようなもの。実際、学生時代には構内でスケートボードをプッシュし、守衛に怒られていたというのだから、新しい時代の息吹を感じる。
長らくサブカルチャーとして語られてきたサーフィンの立ち位置も変わっていきそうな予兆を感じるのである。
1990年代に台頭した、サーファーのバリー・マッギーのようなストリート界のアーティストに加え、コミックやアニメにも強い影響を受けたTAO。その彼が手掛ける作品「ダンボールサーファー」は、まず全体の下絵を描き、その次にサーファーが海面を疾走して飛び散る波しぶきを描く。ダンボールを濡らし、ふやけた頃合いを見計らって剥がして、イメージどおりに剥がせたら、端正にデッサンされたサーファーとサーフボードに色を入れ、完成となる。
 
三浦安間=写真
小山内 隆=文・写真セレクト


SHARE

次の記事を読み込んでいます。