「Running Up-Date」とは……今でこそランニングは大いに市民権を得ているけれど、ひと昔前までは多くの人から「どっちかというと、イケてない」と思われていたようなフシがある。
アートディレクターとして広告関係のデザインで活躍する加藤芳宏さんも、以前はランニング、というよりランナーのノリに、勝手な苦手意識を抱いていたひとり。
それが今では、ランニングに関するフリーマガジンを準備するまでになっているのだから、面白い。
ブルックリンの街が先入観を壊してくれた
「2010年代から、デザイナーとしてランニング関係のアートディレクションの仕事をする機会が何度かあったのですが、はじめはランニングそのものとは距離を置いていたんです。先入観と言いますか、ランナーやランニングという行為に対して、何だか苦手なイメージを抱いていまして。
『ランニングね、それって元気が溢れている人がやるものなんでしょ』みたいな。振り返ってみれば、我ながら少し斜に構えていたなと思うんですけど」。
その先入観がガラガラと崩れたきっかけは、4年ほど前のニューヨークへの出張だ。
「これまた仕事の関係でブルックリン・ハーフマラソンを視察したのですが、街全体がランニングを通して、ポジティブなテンションで盛り上がっていることにカルチャーショックを受けました。
まずもってランナーたちがみんな“いい顔”していますし、ローカルの住民たちにも、ランナーに対する応援の気持ちやリスペクトが溢れていて、それが気持ちいいくらいに爽やかでした。
それまでの勝手な思い込みは完全にくつがえされましたね(笑)。そういうわけで、ランニングカルチャーのパワーや可能性にアテられて、帰ったら自分も走ろう、と」。
帰国後には早速、友人と一緒に走ることに。その友人というのが、以前この連載にも登場いただいた
小林修人さんだ。
「まず手始めに10kmを走ることに挑戦したんですが、いやぁ、楽しかったですね。自分にとってはスノーボードやサーフィンの習い始めと同じで『どういう道具があるのか』『どうやってやったらスマートに気持ちよく走れるのか』から、ランニングというアクティビィに手を出した感覚でしたね。
やればやるほど上達して、以前は出来なかったことができるようになる。最初は3kmも走れなかったんですよ。でも周りに格好良くて、かつ楽しそうに走るランナーのお手本がいたことも大きかったですね。
彼らを眺めていると、効率的でスマートな走り方というのがあると気がついて、それを自分なりにかみ砕いて実践していく面白さがありました。『ボードに乗れるようになった』『立てるようになった』というのと同じで、この歳になっても成長できるんだと虜になりましたね」。
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