Running Up-date Vol.82
2021.08.07
LEISURE

「ランニングは『好き』とは言えない」男が13年も走り続けられるモチベーション術

鈴木武史

「Running Up-Date」とは……

「小さい頃は太っていたので持久走が苦手でしたし、今でも走り始めるまでは、毎回のように面倒だなと思っています」と、大手アパレルメーカー「パルグループ」にてEC部門を統括する鈴木武史さん。

13年超の走歴を誇り、「鈴木すず」名義でランニング関係のライターとしての顔も持つなど、ハタから見れば“走るの大好き”だが、実は普段のトレーニングランは嫌なのだという。

だからこそ気になるのは、それでもランニングを習慣にできたモチベーション維持の手法だ。

 

走るまで気が進まないけど、いざ走って後悔したことはゼロ

最初に走り始めたきっかけは体型維持のためだった。今でこそスラリと伸びた身長186cmの体躯だが、中学生頃まではいわゆる肥満体型で、それがコンプレックスだったと語る。

鈴木武史

「社会人になってからは、ファッションを生業にする者として服を綺麗に着られるようにと体型をキープしていたのですが、30歳を迎える頃、周りにいる同年代のお腹が出てくるのが目立つようになってきた。

自分自身、物心ついたころから肥満児で、中学3年生の夏には100kgの大台に乗りそうになった過去があります。そのトラウマから、もう肥満体には戻りたくはないと先手を打って走ることにしました」。

とはいえ、学生時代の校内マラソン大会やスポーツテストの持久走は大の苦手。そんなわけで、嫌々だった。

「正直、今でも普段のランニングは『好き』とは言えません。原宿のオフィスへ出社した日は三軒茶屋の自宅まで帰宅ランをするのですが、その途中で寄り道する夜の代々木公園などは気が進まないこと、この上なし(笑)。

そんな自分が10年以上も走り続けられているのだから、世の中の多くのランニング嫌いの人が感じるほど、嫌ではないのかもしれません」。

鈴木武史

走り始めてからは狙いどおり、体重はずっと変わらずキープできている。

「走り始めるまでは葛藤があるんですけど、走り出してしまえばやっぱり気持ちが良いですから。だからトータルでアリかナシかで言うと、アリ。走らないで後悔したことは何度もありますが、走って後悔したことは一度もないんです」。

そんなこんなで週に5〜6日は走っていると言うのだから、恐れ入る。

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東京マラソンで気が付いたランニングの楽しみ方

「そんな自分なので、ランニングを人にすすめることはまずありません。バスケットボールやサッカーなどのチームスポーツや球技はそのアクティビティ自体が楽しいですけど、ランニングはエンデュランスすることに面白さがある。だから万人に向いているとは思えないんですよね。

ただ、走りさえすれば間違いなくストレス解消になるんですよ。例えば、その日仕事でモヤモヤすることがあっても、走りさえすればすっきりリセットされる。10km程度の走行距離なら脚の疲労よりも心身の疲労が取れるほうが勝つと思います」。

鈴木武史

最初は何の変哲もないロックTシャツに、アディダスのスーパースターという格好で走っていた。幸運だったのは、東京マラソンに応募してみたことだという。

「なんやかやで3年ほどタラタラと走っていたのですが、ふと思い立って東京マラソンに応募してみることにしました。それまで東京マラソンの存在は知っていたのですが、自分がその大会に出るという発想がなくて。

でもある日『これってオレもその気になれば出られるんじゃん』と気が付いて、軽い気持ちで応募してみたら幸運にも当選しちゃったんです」。

なんともうらやましい話だが、初マラソンはわからないことだらけ。いろいろと情報収集していると、ランナーの間ではサブフォー(4時間切り)というタイムが、ひとつの勲章になっていることがわかった。

鈴木武史

「だからサブフォーを目指したいなと。このときは後半潰れて、4時間11分ほどで目標達成できなかったのですが、大会に出走して目標をクリアしていくうれしさや、楽しみ方があることに気が付きました。

去年はコロナ禍でフルマラソンは走れませんでしたが、それまでは毎年3〜4本はフルマラソンを走っていました。やっぱり走ることが性に合っていたんでしょうね」。

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トレイルランニングの自由なスタイルとの出合い

鈴木さんにとってもうひとつのランニングにおけるアップデートは、トレイルランニングと出合ったことだ。

鈴木武史

「3年前に知人に連れられてトレイルランをするようになって、また走り方が変わりましたね。ロードランオンリーだった頃は、ランニングの途中で止まるという概念が頭にありませんでした。赤信号に捕まりそうになったら曲がって、遠回りしてでも走り続けることが当たり前のスタイルで。

でも、トレイルランだと途中で立ち止まることは少しも珍しくありません。急な登りは走れませんし、山頂についたら達成感とともに一息つける。途中でご飯を食べたり、お茶屋さんに寄り道してビールを呑んだり、一見ハードに思えるけど、走りに対するゆとりが結構あるんです。

そんなトレイルランを経験してからは、普段のロードランの途中で立ち止まったりすることも気にならなくなりましたね。シンプルに、走ることを楽しめるようになったのかもしれません」。

なんだかんだ、やっぱりランニングが好きなのだ。

鈴木武史
昨年は初の100マイル(160km)カテゴリーのトレイルレースに挑戦。しかし「見事に打ちのめされて、131km地点でリタイアしてしまいました」。

「走り始めてから、仕事やプライベートにもポジティブな影響しかないですしね。一番の変化は残業が減ったこと。夜に走るので、遅い時間までダラダラ仕事することを避けるようになりました。

生活にメリハリをつけるために業務の効率を意識するようになったんです。あと、自分は走るときにイヤホンをしないので、考えごとをする良い時間にもなっていますね」。

ランニングそのものは、必ずしも好きじゃなくてもいい。ただ、走ることでメリットが生まれるから走る。そのために、意図せずともちょっとした工夫を重ねることでランニングをアップデートさせていく。

鈴木さんにとってはそれがトレイルランであり、レースに参加することだ。目下の目標はフルマラソンでの3時間10分切りと、100マイルのトレイルレースを完走し、『100マイラー』の称号を手に入れること。

そのために気分が乗るウェアに身を包み、今日も走るのだ。

鈴木武史

RUNNER’S FILE 41
氏名:鈴木武史 
年齢:43歳(1977年生まれ)
仕事:アパレルメーカー EC統括
走る頻度:週5〜6日、週間走行距離70km程度
記録:フルマラソン3時間17分(2019年 勝田全国マラソン)

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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# トレイルランニング# フルマラソン# ランニング
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