Running Up-date Vol.78
2021.07.10
LEISURE

「ランニングが苦手」と言うトライアスリートが語る、走り続けるコツとは?

菊池朋明
「Running Up-Date」とは……

ランニングを始めて、腕試しにと大会に出場し、手応えのある結果を出す。じゃあ次は? となったときに、トライアスロンへと興味が向く人も多い。

そりゃあマラソンよりお金も時間もかかるし、費やすべき労力もハンパないけれど、達成感たるや段違いなはず。また、トライアスリートには、管理職や自営業など、多忙ながらも自分で時間を組み立て、パワフルに働く人が多いポジティブなイメージもある。

今回お話を聞いた菊池朋明さんもそんな職種のひとり。職業はフリーランスのWEBデザイナーだ。しかもアイアンマン世界選手権への出場経験もある、ツワモノ中のツワモノだ。

いったい、どんなランニングライフを送っているのだろう。

アプリ開発のスタートアップを経て、トライアスロンにハマる

菊池さんがエンデュランススポーツにハマったのは2013年の頃。なんと、直接のきっかけはダイエットだった。

学生時代は陸上競技部で、通っていた高校までそれなりに距離があり、その道を毎日自転車で通学していたこともあって、大学ではトライアスロンサークルに所属していた。

そのときはそこまで熱心に取り組んでいなかったのだが、社会人になってお腹に肉を溜め込んでしまい、ダイエットの必要性を感じて大学時代の友人たちとリレートライアスロンに参加することに。担当はスイムだった。

菊池朋明

それにしても、今やプロ顔負けのリザルトを残すアマチュアトップのトライアスリートが肥満体だったとは、意外といえば意外。どうしてぜい肉を溜めこむハメになったかを聞いてみると、それは走る理由も微妙に関係している。

「大学生の頃に、友人たちとアプリ開発のビジネスを手掛けていたことがありました。新規でアプリを開発するのは手間も時間もかかるので、その友人たちと一緒に物件を借りて、住み込みの共同生活をすることになったんです。

そこではよくあるように、公私の境目も昼夜の区別もあいまいで、大学を途中で辞めざるをえないほど忙しく、精神的にもタフな日々でした。自然と体もナマってくる。そこでまずはフィジカルを整えるために、リレートライアスロンへの参加を決め、スポーツジムに通って泳ぐことにしたんです」。

すると、猪突猛進型だったトキワ荘的な生活にも自然と区切りが生まれていく。さしずめ、サードプレイスとしてのジムといったところか。

「ジムで体を動かすことによって、体だけでなくメンタル面でも“最悪”を脱することができ、生活に良いリズムが生まれました。そこからですね、意識的に泳いだり走ったりするようになったのは」。

菊池朋明

さらにもう一歩先に進み、競技としてのトライアスリートにハマったきっかけは、世界一過酷な競技とも言われているアイアンマンのゴールシーンをYouTubeで目にしたからだそう。

「ゴール前の沿道に、まるでトンネルのような人だかりができていて、その中を年配の男性が這うようにゴールへと向かっていました。その場の全員が大盛り上がりで彼を励まし、ゴールを称えていて、『いいな、こんなレースに挑んでみたいな』と」。

蛇足ながら説明させていただくと、アイアンマンとはスイム3.8km、バイク180km、ラン42.195kmの順にこなす、超ロングディスタンスのトライアスロン競技。

菊池朋明

「いざアイアンマンに出てみると、思いのほか良い結果が出ました。あとひとつ順位が高ければ、コナ大会のスロット(出場権)が獲得できていたんですよ。もう少し真面目に頑張れば手が届くかもしれないと、ハマりました」。

アイアンマン発祥の地に近いハワイ島コナにて開かれる大会は、世界各地で開かれているアイアンマンの姉妹大会で上位入賞を果たさないと出場が叶わない、いわば夢の大会だ。

トライアスロンにハマり、心を燃やした菊池さんは、なんと既にコナへの参加経験があるため、2021年の10月には2度目のコナを駆け抜ける予定だという。お見事!

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トライアスリートにとってのランニングとは?

「実はトライアスロンの3種目の中で、ランニングがいちばん苦手なんです」。

と菊池さん。だからこそランニングが面白いと言う。

「3種目のうち最後にくる種目で、レース本番だと体力的にも限界が近いから、ひたすら耐える時間になります。だからこそ、走れていると楽しいですし、苦しいのは苦しいんですけど、そこをコントロールしてうまく乗り切ることができたら、いちばんうれしい種目でもあるんです。

ほかの日本人トライアスリートと比べると、自分にとってランは“弱点”なのですが、大柄な欧米人の中に混じるとそうでもない。そんなところもやりがいがありますね」。

菊池朋明

「ランニングはフォームが変わるだけで直にパフォーマンスに反映されるんですよ。良いフォームをキープできれば、それだけ楽に速く走れるようになる。そのダイナミズムが面白いですね。

ランニングのトレーナーさんについてもらって助言を受けたり、ランニングの動画をSNSにアップして、仲間からフィードバックをもらったり、いろいろと試行錯誤しています。苦手種目だからこそ伸びしろを感じられるし、レベルアップのための“やりこみ要素”が面白いんです」。

目下、狙っているのはアイアンマンでの9時間切り。日本人の著名トライアスリートやスポンサードアスリートでも容易なタイムではなく、一介のアマチュアとして達成すればかなりのものだ。偉業達成にはランでのパフォーマンスがカギを握っている。

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駒沢をトライアスリートのメッカに!?

仲間と寝食をともにし、奮闘したアプリ開発の経験を経て、今はフリーランスのWEBデザイナーとして活躍中の菊池さん。時間に融通が利くようになったメリットを最大限に活かすべく、2016年から駒沢近辺へと移り住んだそう。

「決め手はランナーのメッカである駒沢公園の存在です。今ではランニングが日常に溶け込んだライフスタイルを送ることができていますが、そうしやすいように駒沢に引っ越しました。いつ、どの時間でもストレスなく、継続して走れるようになりましたね」。

菊池朋明

走るのは主に夜。自宅で仕事をしているため、仕事を終えてから寝床につくまでの間に、ランニングをマインドセットの区切りとして挟むのだ。

ランニングを通じて多くの友人ができたため、駒沢公園を走っていれば誰かしら知り合いにも会える。事前に予定を合わせて一緒にトレーニングし、ビールで乾杯をして1日を終えることも。

ちなみに仕事でもランニング関係の案件が増えてきており、今話題のTWOLAPS TRACK CLUBのホームページに関わったりと、仕事とプライベートの垣根がない、シームレスな感じがまた楽しい。

「そんなこんなで駒沢周辺に同世代のトライアスリートが集まってきていて、楽しいコミュニティが生まれています。最近、駅前にティップネスができたのですが、そこは入浴施設に力を入れていて、バチバチに冷たい水風呂があって言うことナシなんです。駒沢、サイコー(笑)」。

菊池朋明

なぜ走ることにここまでハマれるのか?

「RPGゲームのように、コツコツとレベル上げをしていく感覚をつかむことがポイントかもしれません。自分の動作を撮影し、あーだこーだと考え、改善をして少し速くなる。この一連の作業を楽しめることで、いい感じに継続できているんだと思います。

走り始めたばかりの人であれば、なおさら伸びしろが大きいでしょうし、誰かと比べることなく、対自分の成長を実感できるのも魅力だと思います」。

おまけに体型も変化しますよ、とのこと。ちなみにスイムもすれば、上半身までたくましくなれるのでなお良し。菊池さんほどの超トップを目指すかはさておき、トライアスロン、やってみませんか?

菊池朋明

RUNNER’S FILE 39
氏名:菊池朋明
年齢:33歳(1988年生まれ)
仕事:フリーランス WEBデザイナー
走る頻度:週4~5回、10~15km程度
記録:フルマラソン3時間2秒(2018年、古河はなももマラソン)、アイアンマン・バンセン70.3km 総合7位

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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# トライアスロン# ランニング# 菊池朋明
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