2021.06.12
LEISURE

元実業団ランナーも参加する噂のランニング集会“健ちゃん練”を知っているか?

健ちゃん練
「Running Up-Date」とは……

ランニング界隈で話題の集まりがある。

そこは単なる市民ランナーが主催するプライベートな練習会にもかかわらず、箱根駅伝で優勝テープを切ったスピードランナーや元実業団選手、ときには五輪レベルの現役マラソンランナーまでが顔を出すという。

しかも参加メンバーの中にはインフルエンサーも所属しているから、情報が断片的に伝わることで、「何コレ、めちゃくちゃ豪華じゃん」とアンテナ鋭いランナーの間でちょっとした話題になっているのだ。

面白いのは、練習会の名称にシリアスな雰囲気がまるでなく、参加する面々が小洒落たウェアに身を包んでいること。それによってハードな練習内とのギャップがこれまたナゾを呼び、興味を惹きつけている。

その名も「健ちゃん練」。主宰の“健ちゃん”こと松永健士さんは陸上経験のない一般人で、アパレル関係の企業で本部長職に就くビジネスマンランナーだ。

 

走れる自分を取り戻すために始めた練習会

「健ちゃん練を始める前は、しばらく走ることから距離を置いていたんです」と言う松永さん。

ランニングとの出合いは10年以上前にさかのぼる。東京マラソンがスタートした年に当時の職場の先輩に誘われて走り始め、しばらくはダラダラと走っていた。

そのうち、トライアスリートという“人種”に、経営者をはじめパワフルで活きいきとした大人が多いことに気がつき、憧れもあってトライアスロンに傾倒。そうなると、ランだけでなくスイム、バイクと3種目をこなさなければならない。

健ちゃん練

「ビジネスアスリート仲間で集まって、それなりに真剣に競技へと打ち込んでいました。ただ、不整脈の一種である発作性心房細動を患ってしまい、走るのがどうにもしんどくなってしまいました。

このことがきっかけで運動することを辞めてしまい、アルコールとタバコが手放せない自堕落な毎日を送るようになりました」。

そんな中、取引先のアパレルブランドから声を掛けられたことで転機が訪れた。そのブランドの社内ランニングチームを発足させるにあたり、トライアスリートとしての松永さんを知るそのチームからコーチ役を依頼されたのだ。

健ちゃん練
©MITOYA

「お受けするのであれば、自分がそれなりに走れるようにならないとコーチングに責任が持てませんよね。そこで、もう一度しっかり汗をかいて走れる自分を取り戻すべく、トライアスリート時代の仲間に声を掛けました」。

かくして、ランナーとしては隠居状態だった松永さんがマジメに走り込むための練習会、すなわち“健ちゃん練”が立ち上がった。2年半ほど前のことだ。

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本気でやるからこそ、エキサイトできる

健ちゃん練は主に週1回、平日の夜、陸上トラックなどに集まり、インターバル走など強度の高い練習を行っている。その内容は松永さんが目標とするレースから逆算して、その時期に必要としているメニューを実施するというもの。

「ゼーハーすることが好きかと言われれば、もちろんそんなことはありません。ランニングはあくまで“遊び”。でも、本気で遊ぶからこそ、心から楽しめるんです。

走るというスポーツはわかりやすく自分を追い込めますよね。30代後半になった今でもそれができているってことが、少なくともフルマラソンの距離なら『まだまだ速くなれる』という感覚を持てることにつながっていると思います」。

健ちゃん練
健ちゃん練のメンバーと、河川敷のランニングコースにて。

遊びと言い切りながら、いや遊びだからこそ、本気でランニングに打ち込む松永さんのまわりには、魅力的かつ個性的なランナーが自然と集まってくる。

「ランニングサイエンスラボというランニングジムに通っているのですが、そのスタッフである元実業団選手や、箱根駅伝のスター選手だったトレーナー陣が練習に来てくれるようになって、そこから陸上選手の人脈も広がりました。

メニューのアドバイスをもらったり、ペースメーカーをお願いしたりと、贅沢な環境ですよね」。

健ちゃん練

参加費が発生するような練習会ではないし、もちろん強制されるものでもないが、毎回15名前後のメンバーが参加するなど出席率、モチベーションともに高い。

「まず、走力の面で尊敬できるというのが前提ですが、それ以上にキャラクターを重視します。良い人かどうか、というより、波長が合うか、ですね。

仕事でなくプライベートでつながっている集団だからこそ、人間関係が大事。ただただ本気で遊びたいだけなので、チーム内で気を遣うのはイヤですよね(笑)。

健ちゃん練のメンバーはひとつのファミリーのような存在になっていますが、だからこそ、お互い負けたくない。なかには箱根ランナーだったメンバーもいますが、そんなヤツらと一緒に走れる場だからこそ、自分のスタンダードを引き上げられるんです」。

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「何があっても毎朝運動する」がマイルール

これまで本連載に登場してくれたランナーの中でも、屈指のアスリート志向を持つ松永さん。社会人デビューでここまでハマったワケを聞いてみた。

「やっぱりロジカルなところが面白いですよね。結果が良かったときも悪かったときも、必ず理由がある。トレーニングの量、質、休養など、多くの要因が複雑に絡まっていて、それらがうまく噛み合わないと、結果につながらない。そういう意味では、仕事に通じる部分もあると思います」。

健ちゃん練

もちろん、シンプルに体を動かすことが好き、というのもある。毎日平均して8kmくらい走り、それに加えて健ちゃん練や、ランニングサイエンスラボでの低酸素ランニングマシーン、およびウエイトトレーニングなどでメリハリをつけている。その中で決め事にしているのが、毎朝必ず体を動かすことだ。

「朝起きたら必ず近所をジョグするようにしています。あまりにも二日酔いがひどい場合は散歩です。

朝に外の空気を吸うだけで、初めの何十歩かはツラいんだけど、次第にいろんなことが頭を巡り始めて、フィジカルもメンタルも良い具合に転がり出してくれます。

例えば『昨日の自分はこうだったな』とか『あんな言い方しちゃったけど、いきすぎていたかな』とか、意識をポジティブに変換できるんです」。

健ちゃん練

そんな松永さん、今後の目標は?

「遠くないうちにフルマラソンでの2時間35分切りを達成したいと思っています。福岡国際マラソンという超トップレベルの大会があって、今年度末で惜しまれながら幕を閉じてしまうんですけど、その参加資格が2時間35分以内なんです。

今からだと実質エントリーには間に合いませんが、市民ランナーのひとつの指標なので、たとえ大会がなくなったとしても、この記録はクリアしておきたいですね」。

昔ながらの長距離ランナーのパブリックイメージとは一線を画す健ちゃん練&松永さん。

走力のレベルが高いだけでなく、走るときのコーディネイトやギア選びにも独自のスタイルを持っている。そのあたりの話は後編で。

健ちゃん練

RUNNER’S FILE 37
氏名:松永健士 
年齢:38歳(1983年生まれ)
仕事:アパレル関連 本部長
走る頻度:毎日。月間走行距離で300kmほど
記録:フルマラソン2時間46分(2021年、なにわ淀川マラソン)

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「Running Up-Date」
ランニングブームもひと昔まえ。体づくりのためと漫然と続けているランニングをアップデートすべく、ワンランク上のスタイルを持つ “人”と“モノ”をご紹介。街ランからロードレース、トレイルランまで、走ることは日常でできる冒険だ。 上に戻る

礒村真介(100miler)=取材・文 小澤達也=写真

# Running Up-Date# ランニング# 健ちゃん練# 松永健士
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