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2021.06.06

あそぶ

“ウルトラライト・スタイル”の伝道師が選ぶキャンプギア。その4大条件とは?

土屋智哉
「Camp Gear Note」とは……
「ウルトラライトハイキング(UL)」という言葉を耳にしたことはあるだろうか。
従来の重くてかさばる登山装備ではなく、軽くてコンパクトな装備を選び、より軽やかで自由に自然を楽しもうというアメリカ生まれのスタイルである。
東京都三鷹市でアウトドアショップ「ハイカーズデポ」を営む土屋智哉さんは、日本におけるULスタイルの伝道師的存在だ。
土屋智哉
ハイカーズデポ店主、土屋智哉さん。
そんな彼が、このたび遊び仲間たちと一緒に『“無人地帯の遊び方” 人力移動と野営術』(グラフィック社)なる書籍を上梓した。
道具選びのプロは、無人地帯という極限の環境下でどのようなギアを選ぶのだろうか。気になるセレクト基準を聞きに、ハイカーズデポへと向かった。
 

・軽量性 ・耐久性 ・防水性 ・汎用性。土屋さんの道具選びの基本目線

土屋智哉
土屋さんのタープ泊装備一式の一例。非常にコンパクト。
「そもそも、無人地帯の旅には6人の遊び仲間が関わっています。それぞれがアウトドアのプロなので、嗜好するスタイルも少しずつ異なります。
そのため、同じ無人地帯を旅するにしても使う道具はバラバラなんです。誰にでも当てはまる正解の道具はありません」と、土屋さんから早速の先制パンチ。
土屋智哉
『“無人地帯”の遊び方 人力移動と野営術』(グラフィック社刊) 。
それぞれが自分の基準で選ぶしかない、ってことですか?
「いえいえ。それぞれのセレクトを突き詰めていくと、全員に共通する道具選びで重要視すべき基本コンセプトがいくつか見えてきたんです」。
土屋智哉
ハイカーズデポの店頭に並ぶアルコールストーブの数々。ミニマムな道具たちは不思議と見た目も美しい。
まず、ひとつめは土屋さんが提言し続けてきた「軽量性」だ。
「衣食住のすべてを自力で背負うためには、道具は軽いに越したことはありません。同じ機能、効果が得られるならば少しでも軽く、コンパクトに収納できるものを選んだ方がいい。
もちろん、強度を犠牲にし過ぎないものが前提です」。
土屋智哉
岩場を越えたり、水の中を進んだり。無人地帯で使う道具にはさまざまな機能が必要だ。
続いて考慮すべきは、「耐久性」とリペアのしやすさ。
「キャンプ場や整備された山ではない場所では、ウェアや道具は岩や枝に擦ったりぶつけたりしながら、道なき道を突き進むこともあります。素材の強度が高く、構造がシンプルなバックパックやウェアが活躍します」。
構造がシンプルでパーツが少ない道具のほうが耐久性が高く、万が一壊れたときでも修理がしやすいそう。また、シンプルな構造は軽さにもつながる。
土屋智哉
こんな状況下でも装備を濡らさない防水性が求められる。
「防水性」も重視しているポイントのひとつ。沢や海沿いのワイルドな地域では、通常の登山以上に水への対策が重要になると言う。
「道具や衣類を濡らしてしまうと不快なだけでなく、重量増にもつながってしまいます。僕らはバックパック自体に高い防水性があるものを使って、徹底的に中身を濡らさないよう気を付けています。
ちなみに、行動中に身に着ける衣類や靴は濡れることを前提に考え、水切れが良く、乾きやすいものを選びます」。
土屋智哉
折り畳み式のボート(パックラフト)はときにベッドにもなる。パドルやタープの使い方にも注目。
もうひとつ挙げたのは、使い方の自由度が高い、「汎用性」に富んだ道具を選ぶことだ。
「単純な機能の道具ではなく、ひとつで複数の役を兼ねるような道具を選んでいます。例えば、行動時に杖のように使うトレッキングポールは、テントやタープのポールも兼ねたり、お皿として使うチタンカップは湯沸かし用の鍋を兼ねたり。
兼用にすることで持つべき道具が減り、軽量化につながり、荷物も把握しやすくなるんです」。
彼らが遊ぶ環境は密林のジャングルから干潟、岩場が連続する海岸線まで多岐に渡る。幅広い状況に対応できる汎用性の高い道具が求められるのだ。
土屋智哉
土屋さんはあえて鉄製の箸を愛用。炭をいじるためのトング代わりにもなるそうだ。


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