Camp Gear Note Vol.87
2021.04.14
LEISURE

今も昔も、働く男には「スタンレー」が生んだ世界初のスチール製魔法瓶がよく似合う

スタンレー

「Camp Gear Note」とは……

「在宅ワーク」という言葉を耳にするようになって早1年が過ぎ、自宅で仕事をするスタイルにもすっかり慣れてきた。

家で過ごす時間の増加に比例して、コーヒー豆の消費量が圧倒的に増えた家庭も多いだろう。それに伴い、家でも出番が増えたアウトドアギアが魔法瓶である。

仕事中はいつでも温かいコーヒーや冷たいお茶が飲みたい。でも、何度も淹れに席を立つのは面倒くさい。こんな無精なリクエストを実現するこの便利な道具は、一体いつ、どのように生まれたのだろうか。

スチール製の魔法瓶は電気装置開発の副産物として生まれた

スタンレー
「スタンレー」の創業者ウィリアム・スタンレー・Jr。

今でこそ、スチールの魔法瓶は当たり前のように私たちの生活の中に溶け込んでいるが、この画期的な製品を開発したのが「スタンレー」の創業者、ウィリアム・スタンレー・Jrだということをご存知だろうか。

発明家でありエンジニアでもあった彼は、最初の実用的な変圧器(AC電源の開発を推し進めるきっかけになったもの)を開発した物理学者としてもその名が知られている。スチール製の魔法瓶は、その変圧器を作る過程から生まれた産物だったそうだ。

スタンレー
頑丈かつ高性能。スタンレーの魔法瓶は誕生からすでにアウトドアでの必要を満たしていた。

当初の真空断熱ボトルといえばガラス製で、保温力の問題はなかったが、ボトルが損傷するとガラスが粉々になってしまい、耐久性の面に問題がある代物だった。しかも当時は大変高価で、壊れてしまったボトルの交換費用は約150〜200ドルもした。

そこで、ウィリアム・スタンレー・Jr.は変圧器の開発中に学んだ理論を、より頑丈で一生使えるオールスチール製魔法瓶の開発に適用したのである。

スタンレー
性能と耐久性への絶対的な自信は、製品に付与された「永久保証制度」からも伺える。

スタンレーが開発した魔法瓶には、「Char-Vac™テクノロジー」(現在は使用を停止)と呼ばれる、2層のステンレス鋼の壁の間にチャコールパウダーを詰めて真空状態を作り出す技術が採用されていた。

この独自技術は重くてかさばるものの、より丈夫で壊れにくいボトルを作ることを可能にした画期的なアイディアだった。

現在の製品には、この構造をさらに進化させた新しい技術を採用している。チャコールパウダーを抜き取り、外側の鋼壁を厚くすることで、優れた保温・保冷性能を保ったまま大幅な軽量化を実現しているのである。

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レジャー人気の高まりが、スタンレーの地位を不動のものにした

スタンレー
アメリカには20世紀初頭からアウトドアを楽しむ文化があった。

米国議会図書館の資料によると、スタンレーが創業した20世紀初頭のアメリカの労働者は労働時間を減らし始め、土曜日に半日の休日を作り、レジャーとアウトドア活動のために多くの時間を使っていたと記録されている。

人々はパレードや地域イベントに参加したり、ビーチへピクニックに出かけるなどして豊かな週末を過ごすようになった。政府によって国立公園の整備が進み、アウトドアへの関心がより高まったのもこの時代である。

そんな需要の変化に、耐久性と頑丈さを誇るスタンレーの製品はぴたりとハマった。人々の生活に余裕が生まれ、余暇やスポーツに当てる時間が増え始めたことがスタンレーの人気に拍車をかけたのだ。

スタンレー
フィールドでの需要に伴い、キッチン関連ギアの展開も充実している。

日本に上陸したのは、それから1世紀近くあととなる10年前のこと。

日本では、まずブランドとしてのブレない姿勢と製品の高い性能が話題を呼び、アウトドアのフィールドから受け入れられた。続いて、スタンレーの理念に共鳴したブランドやアーティストとのコラボが更なる話題を呼び、ライフスタイルシーンにも広がりを見せていく。

認知拡大していく中でも、常にスタンレーはアウトドアブランドとしての軸がブレない。商品開発の軸をフィールドに置き続けていることが、コアなアウトドアファンに愛されている理由であろう。

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老舗だからこその佇まいと、老舗らしからぬフットワークの軽さ

スタンレー
クラシックだがどことなくスタイリッシュな佇まいは唯一無二。

100年前とは違い、現在はたくさんの保冷保温ボトルのブランドが市場に溢れている。その中でも、スタンレーが魅力的であり続ける理由は、性能はもちろん、ユニークなデザインと独特な雰囲気にある。

質実剛健を掲げつつも、どこかスマートさも併せ持つバランスの良さがストロングポイントだ。

スタンレー
まず消費者が何を求めているのかを念頭に、素材、機能、デザイン、美しさを考慮して製品開発が行われる。

例えば、ブランドの代名詞にもなっている「ハンマートーングリーン」。このカラーは、 スタンレーボトルが世に出始めた当時のアメリカでは、標準的な工業用カラーだった色である。

製品に導入され始めたのは、1950年代のこと。以降、このカラーは製品にスタンレーブランドの代名詞である「アウトドア」らしさを与えた。また、ミリタリーの用途にも適しており、実際に軍の装備品としても採用されている。

スタンレー
「マスターシリーズ」は、最先端技術を駆使して耐久性と軽量化を両立させた注目ラインだ。

また、100年以上経過した現在も新しいことにチャレンジし続ける姿勢も、スタンレー らしさのひとつ。

近年も、新たに同ブランドの技術の集大成「マスターシリーズ」やヴィンテージな趣のある「レガシーシリーズ」など、スタイリッシュかつ最新技術が詰まったらラインも登場している。

また、家時間の増加に対応すべく、マグやドリッパーなどのコーヒー関連ギアや、量り売りビールのテイクアウトに対応するビアグロウラーなどを手掛けるなど、フットワークが非常に軽い。

スタンレー
ドリッパーなどコーヒー関連ギアが拡充中。詳しくは後編にて。

ちなみに、創業者のウィリアム・スタンレー・Jrは研究開発に忙しく励む間、一日中温かいコーヒーを欲していたからこそ頑丈な魔法瓶が誕生したらしい。

まさに必要こそが発明の母。今も100年前も、アウトドアでも自宅でも、働く男には温かいコーヒーとスタンレーの魔法瓶がふさわしい。

[問い合わせ]
ビッグウイング
06-6167-3005
www.bigwing.co.jp

「Camp Gear Note」
90年代以上のブームといわれているアウトドア。次々に新しいギアも生まれ、ファンには堪らない状況になっている。でも、そんなギアに関してどれほど知っているだろうか? 人気ブランドの個性と歴史、看板モデルの扱い方まで、徹底的に掘り下げる。 上に戻る

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矢島慎一=写真 池田 圭=取材・文

# Camp Gear Note# キャンプ# スタンレー# 魔法瓶
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