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2021.03.06

あそぶ

ファッションデザイナー小林 学さんにとって、真夜中のランニングが特別な理由

小林 学
「Running Up-Date」とは……
スロウガンとオーベルジュ。服好きから圧倒的な支持を集める両ブランドのデザイナーを務める小林 学さんは、実はランニング歴10年の先輩ランナーである。
といっても、レースに参加して記録の更新を狙うシリアスランナーではなく、気ままに走り続けての10年選手だ。
ただしひとつだけ、「走るのは主に深夜の駒沢公園」という点は特徴的かもしれない。
 

夜を駆けるオレゴンのランナーたちに背中を押されて

小林さんが走り始めたのはおよそ10年前。もともと体重の増減が激しく、ファッションの世界に身を置く者として体型維持には興味こそあれど、当時盛り上がっていたランニングブームとは精神的な距離を感じていた。
「最新のランニングウェアを着て、皇居や東京マラソンを走る、という選択肢が自分の中にありませんでした。ファッション畑の人間として、それはないよなって」。
転機となったのは雑誌「ブルータス」のランニング特集を目にしたことだった。
小林 学
「“世界で走ろう!”という特集の号で、アンダーカバーのジョニオ(高橋 盾)さんが登場していました。それから世界のさまざまな都市のランニングカルチャーも紹介されていたのですが、その中の一企画で、オレゴンのランナーたちが夜の街を走っている、というページがあったんです」。
オレゴンの野郎どもが、夜な夜なフィットネスな行為であるランニングをしている。街ではバーをはしごする人で賑わう時間帯だというのに、それってなんかパンクっぽいというか、アバンギャルドというか、なんだかとても面白そうだ。
小林 学
「そのアドレナリンの出し方が良いなと思ったんですよね。自分もそれを真似して、夜の東京を走ってみようじゃないかとインスパイアされました。
自宅のそばに駒沢公園があるという環境も良かったのかもしれません。夜の公園を走るシチュエーションにマッチする音楽を選んで、人気の少ない公園の中を突っ走る。健康のため、ヘルシーであるため、とは違うカウンターカルチャー寄りのスタンスと言いますか、世界中で同時多発的にそういうランナー連中が登場し始めていたようなんですよね。
もちろん、走ることで結果的に体調がすこぶる良くなり、体型も絞れるので、フィットネスとしても申し分なかったんですけど」。
ファッションとスポーツの距離感はなかなかに難しい。特に10年前なら尚更だ。
生粋の服好きとして業界からの信頼の厚い小林さんにとっても、前述のように、スタイリッシュなスポーツウェアに身を包んで流行りの場所で走るというのは、立ち位置的にしっくりときていなかった。
小林 学
「ファッションやカルチャーの世界に身を置く人間にとっては、実際に汗をかくようなアスレチックなものごとの周辺に居場所がなかったんですよね。でも、あえて夜の公園で走るという遊び方に気が付いたとき、居場所がポンッとできたような感覚がありました。
走るときには1990年前後のナイキのACGが好きでよく着ているのですが、これもスポーツシーンど真ん中のものではなく、日常生活に山やアウトドアを取り入れるというコンセプトがあったと記憶しています。自分にとって、ファッションとスポーツの距離感は常にそんな感じなんです」。
デザイナーが選ぶランニングギアも大いに気になるところだが、そこは後編で改めて聞いてみよう。


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